狙撃者
魔力の気配は、刹那さんが弾いた一つのみ。刹那さんをガードするために展開しようとした結界の発動を即座に停止し、展開先を新たに設定する。目標は、魔力が発射された地点。
《久遠、囲って!》
脳裏に響くアイリスの声に同意の意思を返しつつ、結界を発動する。
周囲の森のせいで相手の姿が正確につかめていないためだ。モンスターであればブチ倒せばいいが、万が一他の探索者の場合は下手に攻撃してケガさせるのもめんどくさい。
結界で相手の存在を感知してもいいがそれに反応して逃げられる前に捕まえたい。だから俺は対象の予測地点の周囲に少し大き目に結界を張る。……捉えた!
感じとしては人型だ。それが3体。自分達が結界につつまれたのに気づいていないようで、その中の一体が何かを構えて再びこちらに魔力を放った。が、それは結界に阻まれ弾かれる。
「結界で封じ込めた」
「ナイスぅ」
気が付けば砲を出現させていた真砂さんが、ぴゅうという口笛と共に咆哮を下げる……撃つ気だったのだろうか? まぁなんかいろいろ出来そうな感じではあるので、威嚇的な使い方をするつもりだったのかもしれない。
「対象は3。多分人型だと思うけどこっちに引っ張り出した方がいいかな?」
「他に潜伏している可能性もあるだろうし、そっちの方がいいと思う。……今は多分大丈夫だろうと思うけど」
そう口にする刹那さんは周囲を警戒しているのか、きょろきょろと見回している。
「探索者だとしても先に仕掛けたのは向こうだし雑に扱っていいでしょ、やっちゃって」
真砂さんからも同意が帰って来たので俺が中の連中毎結界を移動させようとしたら、るーが袖を引いてきた。
「くー。ここの中は空間安定してる、こんなかだったら私の力も使えるよ。転移させる?」
……ふむ。
結界そのまま移動すると途中にある木々をなぎ倒すし、トータルで見ると力の消費もそっちの方で考えれば少なくて済むか。
俺がこくりとるーに頷きを返すとるーが右手を差し出してきたので、左手でその手を握り返す。
……握った瞬間、即座に指を絡めるような握り方に切り替えて来やがった。別に普通に握るだけでいいんだけど……まぁいいか。イメージは、右手で持つロッドから左手の先に力を通す感じ。恐らくるーも同じことをしているハズ。
「……何してるの?」
俺達の行動を目にとめたらしい真砂さんが、そう聞いてい来る。まぁ突然俗に言う恋人握りをしだしたら何事かと思うよね。
「俺達の使うディバインアームズの力の元って同じなんで、こうすると力をリンクできるんですよ」
「合体魔法ってコト?」
「今回のはそこまでの事じゃないですけどね」
真砂さんの言う通り合体魔法的な使い方もできるけど、今回は単純な情報のリンクのようなものだ。
「るーの力で狙撃者達をここへ転移させます」
「OK。お願い」
「頼むわ、トワちゃん、ルーティエちゃん」
「ん、いく」
るーが力を行使する。それだけで、目の前の空間に結界とその中の存在が纏めて転移してくる。
これは……同業者じゃないか?
外見自体は人間ではある。角とかそういったものもない。服装はボディスーツのようなものの上に急所を隠すように金属製らしきパーツがついている。髪色は黒ではなく、多少違いはあるが青系だ。こっちの世界では自然には存在しないであろう髪色。無論染めている可能性はあるが……
……ここまで来ている以上、探索者であれば一級か準一級辺りの実力者のハズ。そのクラスの人間を全員覚えているわけではないけど、こんな特徴的な格好をしていればさすがに覚えてそうなんだよなー。
真砂さんと刹那さんにも視線を振ってみるが首を振られた。うん、であればやっぱり同業者ではない。
そんなやりとりをしている間に、突然周囲の景色が変わった事で恐らくは驚いて硬直をしていた三人組の内の一人が手に持っている何かでこちらに飛び掛かろうとした。だがそれは当然結界に弾かれ地面に転がる事になると、その体勢のままこちらを睨みつけ口を開き、
「─────!? ───!」
その口から発せられたのは、聞いた事もない言葉だった。




