霧島 真砂
その光は明らかに強い魔力を帯びたモノだったため、俺とるーは咄嗟に身構える。
だけど、刹那さんだけは違う反応を見せた。構えることはなく、眉をひそめて光が貫いた穴の方を見ている。
いや、反応をしていないのは刹那さんだけじゃない、アイリスもだった。あれだけの魔力を帯びた光が間近で放たれたというのに、アイリスからは一切警告がなかった。そして今もない……ということはあれは攻撃ではなかったし、続いての一撃はないということか?
「これは……」
「もしかして見覚えある力?」
「……ええ、恐らくね。それに彼女なら確かにこの辺りにいてもおかしくないし」
刹那さんの反応から聞いてみれば、彼女は頷いてそう口にしてきた。成程、ということは同業者か。俺が削ってきたように、あの魔術で土を削って道を作っていたんだろう。豪快な事この上ないことだけど、まぁ状況を考えるとやむなしだった可能性もあるしな。
そのまま穴の方の様子を伺っていると、やがて穴の向こう側から一つの人影が姿を現した。
現れたその姿は黒髪の純日本人風の外見……だが、こんなダンジョンの奥地にいるにはふさわしくない姿だった。その理由は、体のサイズだ。俺は元が男にしては小柄だし、るーは俺よりも小柄だけど、それよりも小さい。見た目だけならどうみてもせいぜい小学生高学年くらいにしか見えず、どう考えたってこんな場所にいるハズがない少女の姿。だが、俺は彼女がここにいて問題ない人材であると知っている。
「おー、刹那! 無事だったか!」
その少女はすぐにこちらに気付き、しゅばっと手を上げると空洞全体に響き渡る大声でこちら、というか刹那さんの名前を呼ぶ。
……いや、この状況下なんだから大声ヤバいとか考えないのか? と思ったけど、あんだけ派手な一撃で大丈夫だったんだから大丈夫か……
「真砂さん、すぐ近くにいたんですね」
駆け寄ってくる刹那さんが呼んだその名前が、俺の頭の中にある情報と一致する。
霧島 真砂。俺と同じ異世界からの帰還者で、一級の探索者の一人。
外見は見ての通りまだ幼い少女だが、その実年齢は26歳。俺や刹那さんよりも上の年齢だ。さすがにるーよりは下だけど。
彼女は能力もちの帰還者の中では俺と同種の人間だ。大魔導や勇者のように自身の努力で能力を身に着けたのではなく、異世界の神器のようなものによって力を身に着けた存在。そしてその神器のようなものによって成長が止まっているのも俺と同様だ。
彼女がその身に取り込んでいるのは、可変可能な巨大な砲だ。先ほどの光の奔流も、彼女のその武装から放たれたものだろう。今はなんらかの方法で収納しているようでその姿は見えないが。
ちなみに一級だけあって彼女も農狂や暴食のように通称がつけられている。その通称というのが大艦巨砲ロリである。多分一級につけられた通称の中では尤も酷いものではなかろうか。そもそも大艦はどこから出たんだよ、巨砲とロリはわかるけどさ……尚彼女はほぼぺったんこに近い、いやセクハラだなこれ。口には出してないからセーフか。
その大艦……じゃねぇや、霧島さんは刹那さんの前で立ち止まると一度刹那さんの全身を確認してからこちらへ視線を向けた。
「この子達は最近話題の魔法少女だよね。刹那の同行者?」
「はい、今回は三人で潜ってます」
どうやら俺達の事を知ってくれているらしい。まぁいろいろ話題になっている自覚はあるので、他の探索者に興味を示していないのでもない限りは耳にするだろうけど。
「トワです。こっちがルーティエ。よろしくお願いします、霧島さん」
「お、私の事も知ってくれてるんだ?」
「そりゃ霧島さん有名ですし」
何せこの外見に対して扱う武器はごつくて派手というギャップが戦っているような存在である。しかも彼女は配信も積極的なタイプなので、そりゃ人気もありますよねって話だ。
「あはは、どういう理由で有名なのは聞かないでおこうかな。 えっと、トワちゃんにルーティエちゃんって呼んでいいかな?」
「構いませんよ」
「私の事は真砂でいいよ。苗字で呼ばれるとなんかビジネス感をすごく感じちゃうんだよねー。あ、ところで一個聞いていいかな?」
そこまで口にして、真砂さんはるーの方へ視線を向けた。その視線の意図に俺はすぐに気づいたけど、一応言葉を返す。
「ええ、大丈夫ですよ」
「じゃあ……えっと、ルーティエちゃんテレポートが使えるのよね? ここから脱出できたりする?」
まぁるーの能力しっているなら、そこに期待するよねぇ。




