割といろいろ出来るんです
「コメントも流れなくなってたから、可能性は考えていたけど……」
「確かに……」
先程迄見ていたリスナーのコメントが、今は一切表示されなくなっていた。
「私の転移が使えないレベルで空間とマナが乱れてたら、通信は無理じゃないかな?」
るーの言う通り、か。
ダンジョン内での通信は通常の電波によるものではなく、マナを利用したものだ。何せ地下深くまでダンジョンは続くし、なんなら下層は空間的にこちらの世界とはある程度切りはなされている。だから通信は大魔導がこの世界にもたらした魔術を用いて行われている。
「助けは当面呼べないというわけね」
「……近くにある程度開けた空間見つけたので、そっちに移動しましょ」
嘆息する刹那さんに、そう言葉を掛ける。
「移動するって、どうやって?」
「結界をドリルみたいにして、そこまで道を作ってこうかなって」
ドリルといっても、昔のロボットについているようなアレじゃなくて、イメージはトンネルとかの工事につかうやつ……シールド工法って言うんだっけ? のアレだ。まぁ通った後をトンネルにする必要はないから掘った後を補強する必要はないし、削った土砂も後ろに回してしまえばいいかな。
とりあえず試しに、削る部分を作ってみる。そしてそれを回転させて……と。
……うん、削るのは行けるな。土砂は実際のシールドマシンだったら水と混ぜて排出してたと思うけど、さすがにそれは再現できないので自分達のいる結果に隙間を作りそれを通して後ろへ流す事にする。
細々とした操作が必要だし、それなりに消耗をしそうだけど……このまま結界を維持しているのだって力は使うし、何より酸素の問題もある。考えるまでもないだろう。
「……トワちゃんの結界、本当に何でもできるのね」
「まぁ物理的にいけることなら?」
《さすがに結界でトンネル工事をした子は過去に一人もいなかったわねぇ》
でしょうね。
というかやはりファーマントでも結界は護りの力の認識なので(実際にそうなんだけど)、俺みたいに率先して肉弾戦するようなタイプ自体は殆どいなかったらしい(ゼロではないらしいけど)。この辺りあれだよね、世の中に溢れかえっている数多の物語で小さい頃から大量の力の使い方を目にすることができる日本人ならではなのかもしれない。
とりあえずいけることは解ったので、まず近場に埋まっていたドローンを回収し、それから少しずつ掘り進んでいく。俺は結界の操作に集中し、二人も俺の邪魔にならないようにか口を閉じたので、静寂……いや、土を削る音が聞こえてるか。その音だけが周囲に響く。
そのままそこそこの時間を使いつつ掘削を続け数十m削ったところで、ドリルに掛かる力が弱くなった。そのまま進めば、ドリルにかかる力自体がなくなった。結界の中で刹那さんが生み出してくれていた空洞を照らす。
「とりあえず空洞に出たみたい」
ドリルと土砂を後ろに送る仕事をしていた結界を解除し、まず俺から空洞に出る。続いて二人も穴の中からゆっくりと空洞の方へ降りてきた。
「刹那さん、灯り強くしてもらっていい?」
「うん」
俺の言葉に応じて、刹那さんが生み出していた魔術の明かりの頭上の方に上げて、光度も強くしてくれる。それによって、空洞の全貌が把握できた。
高さはそれなりにあり7~8mくらいある。横と縦もそれぞれ数十m程度はあり……学校の体育館に近いサイズかもしれない。全般的に削られたり崩れた感じの場所はあまりないので、元から存在していた空洞だろう。一部だけ崩れた場所があるのは、そこが恐らく根が張り出していたところか。
「とりあえずこれだけの広さがあれば、酸素は心配ないし一息つけるか」
「そうね。それに他の所に繋がっているっぽい穴もあるし……」
「あ、手前側駄目だった。先の方で埋まってる」
さっきのスキャン時に手前の通路は完全に広範囲で崩落してしまっているのは確定している。
「くーのさっきのドリルで上の方に削っていけば脱出できないかな?」
「あー……厳しいんじゃないかな」
結構下の方まで下ってきているのが仇になってる。それにあの位置、上の辺り結構世界樹の根が固まってしまっているっぽいんだよな。そこを突破して地上まで結界を維持していけるかというと……可能性はないとは言わないが、ここまで来るだけでもそこそこカートリッジのマナを消費した辺り微妙な気がする。
確実な脱出方法はここを起点として地上への道を探すか、るーの転移が使える状況になるのを待つかじゃないかなぁ。
《状況がどれくらいで回復するかは世界樹次第よ、読めないわ》
マジか。となると地上への帰還ルートを探すべきか? ただ地上(下層のだけど)の状況自体もどうなってるのかわからないのがな……
「何をするのも情報が欲しいな」
「そだね」
「行動の指針が立てづらいのは確かね」
俺の呟きに、るーと刹那さんも同意してきたその時だった。
一瞬、体に振動を感じた。同時に魔力の高まりを感じ、まさかさっきみたいなことがまた起こるのかとそう身構えた時だった。
空洞の壁の一角をぶちぬいて、巨大な光が出現した。
今度は何事ぉ!?




