閉鎖された空間の中で
アイリスの言葉にやはり嘘はなかった。
暴れ回っていた世界樹の根はやがて少しずつ動きを緩めはじめ……やがて数十秒程立ったころにはある程度まとまった状態で収縮するような状態で土の中へ姿を消した。
後に残ったのは結界に包まれた俺達3人と、洞窟が崩壊した結果俺達を覆いかくすようにだ崩れてきた土だけである。
結界を張った時に反射的にドローンにも張ったからドローンも生き残っているはずだけど……完全に俺達と同じように土に埋もれてしまっている。
ダンジョンが狭いからとドローンに付属した機能で周囲を照らしていたから、周囲は大分暗くなっている。真っ暗になっていないのは、途中で結界の中に刹那さんが明かりを出してくれたからだ。それほど強い灯りではないので、うっすらと俺達の顔を照らす程度だけど……密着しすぎて顔の側に出すしかないから強い光を使ってないんだと思う。
「狭いから、少し結界を広げるね」
恐らくはそこにあった樹々の根が移動して消えたことにより崩壊した土の塊は、元のように固まった状態ではない。力を込めて結界に力を送れば、覆っている土を押しのけて結界は広がった。まぁここいらいったい全体的に脆くなっているだろうから下手に力を加えると又崩壊が発生する可能性があるけど、崩壊したところで対して状況かわらないだろう。
とりあえず3人が隙間を開けて立てそうなくらいの広さは確保できたので、俺達はそれぞれ身を離し──いや、刹那さんは離れたけど、るーは引っ付いたままだった。……まぁいいか。
刹那さんが離れると同時に魔術の明かりを強くしてくれたので、結界の中は普通の明るさになった。明るくなって改めて周囲を確認してみたけど……やっぱり周囲が完全に塞がってしまっている。
同じように周囲を確認した刹那さんはその光景に呆然としていた。普通なら絶望的ともいえる光景だからな。
刹那さんは数秒言葉を失っていたようだったが、ふとはっとした顔になるとるーの方へ視線を向ける。
「あ、でもルーティエちゃん……」
「今この辺りの空間が不安定みたいですぐには無理みたいです」
彼女が口にする言葉は解っていたので、俺の方から今の状況を話す。合わせて先ほどアイリスがくれた補足も話すと、刹那さんは一度目をつぶり、大きく息を吐いた。
「……一応聞くけど、いつ頃転移できるようになるかは今の時点ではわからないのよね?」
「ん」
今度の問いには、るーが一音だけで答えた。アイリスからも何も言ってこない辺り、今はまだ状況が見えないのだろう。
「そっか。……二人ともごめんね、こんな事に巻き込んじゃって」
「いや、仕方ないでしょこんなの。謝らないでよ」
俺が調べた感じでも、過去の再編の時にこんな事は起きていない。予測できた事態じゃないだろう。
というかこっちの世界に戻ってきてからの俺の引きが悪すぎて、俺のせいじゃないだろうなとか思ってしまう。さすがにそんなことはないと思いたいが。
「とりあえず、上に連絡入れよ? ここに救助にこれるかはわからないけど、何か提案はしてもらえるかも」
「そうね。私が連絡するわ」
俺の言葉に刹那さんが頷いて、インカムを操作し始める。それを横目に見ながら、俺は先ほどと同じ周囲をスキャンする結界を再度展開させた。
この程度の結界ならまだ当分持つけど、これだけしか空間的な広さがないと酸素が不安になる。さすがに俺の能力だと酸素を生み出すなんてことはできないし……るーの能力が使えるなら空間つなげて空気を補充できるけど、それができるくらいならそもそも避難できるしな。それに周囲が完全に土に囲まれた圧迫感は精神面でもよくないだろう。
もう少し広めの空間があれば、そこまで移動したい。先ほどのように進行方向だけではなく、今度は全方向に対して使用する。コストは重くなるが、うまく空間が見つかれば結界を維持しなくてもよくなるから悪くはないだろう。見つからなかった場合は……考えないでおくか。
今度は大きな空間があるかだけ認識できればいいので、精度はいらない。範囲を広げる分そっちで節約して……と。
ゆっくりと力を広げていく。周囲には、元々木の根が埋まっていたところだろうか? 小さな空洞はそこかしこになった。だけどサイズとしてはここと大差がないな……
「お?」
今の位置から横方向に向かったところに、それなりに大きな空洞があった。あまり崩れている感じがないので、元からあった空洞かもしれない。一時避難先としては悪くなさそうだ。ひとまずそこまで移動できれば酸素の心配はしばらくはなくなりそうだ。
その旨を二人に伝えようと意識を戻すと、刹那さんが眉をひそめてインカムから手を離していた。そういや、彼女が話す声、全然してなかったような……
「刹那さん、どうでした?」
俺の問いに、刹那さんは力なく首を振る。
「駄目。上と連絡が繋がらないわ」
マジかよ。




