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癒しの雫  作者: みつき
第1章 アルル・ベリファードと魔法学校

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第9話 埃よ、去れ!

 アルルが家に帰ると、ドリフィーは屋根裏部屋の掃除をしていた。

「ただいまあ」

 (あれ? おばあちゃんは?)


 屋根裏部屋へのハシゴがかかっている。

 アルルがハシゴを登り、屋根裏部屋へ行くと、ドリフィーが埃と蜘蛛の巣にまみれていた。


「何年も放置してたから、埃だらけだわ」

「掃除古代魔法あればいいのにね」


 アルルが『古代の魔法大全』を開いてみると、《埃取り魔法》なるものがあった。

 

『埃よ、去れ!』


 すると、一瞬のうちに部屋の表面にあった埃が全て払い除けられて綺麗になった。

 

「すごいじゃない! 私より魔法上手いわよ!」

 ドリフィーに褒められて、アルルは頬が赤くなった。


「おばあちゃん、古代魔法を使うと、魔王国に高く売られちゃうの?」

 アルルは、そう聞きながら、自動で閉まる宝箱に指を挟まれそうになった。


「古代の力、すなわち魔法は、失われた技術なんだけど、あまりに強大だったために、最後の古代人の王は技術を残すことを拒んだの。全て証拠は焼き払い、削除して伝承すらも許さなかった」

 

「古代の魔法って、《時》すら凌駕するの」

「凌駕って?」

「時間も自由にコントロールできるの」

「どういうこと?」

「例えば、昨日のアルルに会いにいくことだって出来るわ」

「えっ!! それなら、好き勝手出来るじゃん!」

「そうなのよ。ただし、好き勝手にした分、反動が出てくるの」

「反動?」

「そこはちょっと説明が難しいけれど、とにかく、禁忌魔法があるのよ」

「禁忌?」

「使ってはいけない魔法ね」

「……なるほど」


 アルルは、ドリフィーから古代魔法について話を聞くと、アルルなりに簡単には扱ってはいけない魔法なのだとわかった。


「古代魔法を使えるってことは、全く悪いことではないのよ。ただ、時代が悪いだけね」

 ドリフィーは、そう言って笑った。

 

「晩御飯食べましょ」

「はーい」


「あら、かっこいいチョーカーつけてるじゃない」

「あ、これ?」

 アルルはチョーカーの胞子鹿のツノを指でなぞる。

「チームのリュカが作ってくれたの。木工細工よく作るらしい」

「いい仲間を持ったわね」

 ドリフィーが優しく微笑む。アルルも微笑んだ。


 ◇

 

 今日の晩御飯は、ササリーフ卵オムレツと塩漬け鹿オニオンスープ、パンだった。

 アルルはまだ古代魔法について聞きたいことがたくさんあった。

「うちの家族みんな古代魔法が使えたの?」

「魔法の力を使える人だけだね。ミーナと私だけね」

「お母さんとおばあちゃんだけか……」

「忘れちゃいけない、あとアルルね」

 ドリフィーはクスッと笑う。

「まだまだ勉強足りないのに、古代魔法まで勉強とか出来るかな」

 アルルはスープを飲んだ。塩漬け鹿肉を見て思い出す。

「おばあちゃん、森に行った時に遺跡を見つけて入ってみたの」

「遺跡……?」


 アルルはドリフィーに、森の遺跡で古代ルーン語で書かれた石碑を見たことを説明した。


『我らは力を封じた。

 人がそれを望みすぎたからだ。

 もし開くならば――汝に望みの力を授けられん。

 ただし、その代償を支払う覚悟ある者のみが触れよ』


「それ各地にあるわ」

「なんだ」

 アルルはつまらなさそうな顔をした。


「最後の古代人の王は古代魔法を消そうとしたけれど、反抗した人がいたみたい。その人たちが残したようだよ」

 

「そこ、封印解いたらどうなるの?」

「どんな人が封印したかわからないから、ちょっと危険ね。魔王軍の罠用に作ったのかもしれないし」

「そっかあ……」

 それでもアルルは、遺跡への興味が燻るのを消せなかった。


「明日からまた合同大会の練習でしょ? 早く寝なさいね」

「はーい」

 ササリーフ採取はしばらくの間休むことにしていた。魔王の手下の一件があったからだ。


 アルルは寝る前に、教科書の『魔物図鑑』で森の魔物を予習しようとしたが、いつのまにか寝てしまっていた。

 

 ◇ 

 

 次の日、朝ごはんを食べていると、ドリフィーが引っ越しの話を始めた。

 

「アルル。ここは危ないから引っ越そうと思ってるんだけどね」

「ベルフィーさんの近く?」

 

「いや、別のところにする。巻き込みたくないし、学校から遠くなるし、ササリーフ取れなくなるからね」

「そっか……。どこに行くの?」

 

「北西の方にササリーフが取れる池がある場所があってね、今日の夜下見しようと思ってるのさ。お前も行くかい?」

「うんうん! 行きたい」

 

「じゃあ、昼間は下見の下見しとくね」

 そう言ってドリフィーは笑った。つられてアルルも笑った。


 ◇


 学校の講堂に行くとリオナがいた。

「おはよう」

「おはよう! 今週の練習が終わると半分終わっちゃうねえ」

「早いよね」

「うん。はっきり言ってこんな練習で役に立ってるのか、ってことよ」

 リオナの鼻息が荒くなる。

「どういうこと?」

「大会って人対人なのに、魔物相手に練習になるのかなあって」

「あーね。でもまだチーム組み始めたばっかりだし……」

「訓練場、予約してみようかな。いっぱいかなー」

「どうだろう?」


 魔法学校と剣術学校には、三階建ての訓練場があり、一階は六つに分かれた戦闘用アリーナがある。二階はダンジョンを模したフロアが三つあり、三階は一つの広いフロアになっている。どのフロアもダメージは十分の一になるよう設計されており、誰がどのダメージを受けたのか、スキル内容についてのログが取れるようになっている。

 

 リオナとアルルは受付に行き予約しようとしたが、すでに埋まっていた。

「残念……」

「また今度見にこようよ。キャンセルあるかもだし」

「そうだね」


「私は、ジュリアン連れてから剣術学校行くから、アルル先行っていいよ」

「はーい。じゃあ、またね。お互い頑張ろう」

「おー!」

 リオナは、拳を振り上げた。

 アルルは苦笑した。

 

 剣術学校に行くと、グレンとリュカが待っていた。

「よう、アルル」

「アルル、昨日はごめんね」

 アルルは、昨日二人に古代魔法を使おうとして怒られたのを思い出した。

「うん、いいよ。私も分かってないのに使っちゃったのが悪い」 

「アルルはなんも悪くないよ」

 リュカが優しく言った。


「まあ、次気をつけてな」

 グレンがボソッと言う。

 

「さあ、行こうか」

 リュカが、微笑む。

 

「おう! 今日はどこ行く?」

「迷いの森、行ってみる?」

「大丈夫なの?」

「森の住人、リュカがいるから大丈夫だろ?」

 グレンはそう言ったが、アルルは少し不安そうな顔をした。

 

「迷いの森は何度も行ってるし、その先も行ったことあるよ」

 リュカがその辺を散歩でもするように言うと、アルルは目を丸くした。

「あそこは魔物がうじゃうじゃいるんでしょ?」

「まあ、行ってみようぜ」

 今日は暖かく風もなく、空は雲ひとつない晴天だった。

 三人は南の迷いの森を目指した。

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