表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
癒しの雫  作者: みつき
第1章 アルル・ベリファードと魔法学校

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/16

第8話 屋根裏の秘密と古代の呪文

 アルルは、家のベッドに横たわっていた。昨夜のことを思い出していた。

 (虎ック、可愛かったなあ……)

 色々思い出していると、なかなか寝付けなかった。

 

 ――夕べ、夕飯をご馳走になった後、家まで送ってもらったのだった。

 

 ベルフィーは、《虎ック》を上手に操作する。この虎は賢いが、たまに停まって用を足すあたりは、やはり動物だった。


 ベルフィーとドリフィーは、世間話をしていた。魔王軍の話は外では話しにくいのかもしれない。

 いつもの半分の時間もかからず家に着いた。

 

「じゃあ、くれぐれも気をつけるのよ」

「わかってるわよ。それに強い相棒がいるから」

 ドリフィーは、アルルの方を見た。

 

 (相棒って私?)

 アルルは少し誇らしくなった。と同時に、魔王軍についてもっと知りたいと思った。自分のルーツについても。


「じゃあまたね」

「ありがとう」

 

 ドリフィーとアルルは、しばらく手を振って見送っていた。

 家に入ると、アルルはドリフィーの腕を掴んだ。

 

「おばあちゃん、私たちが古代人てこと?」

「まあ……そうね。小さい頃、古代語使ってたからアルルも少しわかるはずよ」

 そう言って、ドリフィーは杖を振ると、天井からハシゴが出てきた。

「ちょっと来て」

 

 アルルはドリフィーの後に続いてハシゴを登った。

 屋根裏部屋には、勝手に動き出すペンや、見たこともない形の道具や、たくさんの本が置いてある。それらは全て古代ルーン語だ。

 

「あったわ。これ。読んどきなさい」

 アルルは、埃を被った青い分厚い本を受け取った。表紙には金色の刺繍で、『古代の魔法大全』とあった。

 

 開いてみると、カテゴリー別に色々な魔法について、呪文方法、効果、効果範囲、難易度など、魔法についてのノウハウが沢山書かれていた。

 

 《生活》カテゴリーでは、農作物を早く育てる魔法、鍵を開ける魔法、頑固な汚れを落とす魔法。

 ページをめくるごとにワクワクが止まらなかった。

 《知識》カテゴリーでは、本を早く読む魔法、記憶力を増加させる魔法、計算が早くなる魔法。

 そして《戦闘》カテゴリーでは……。

 

「これ、魔王に渡したらまずいやつじゃない?」

「そうよ。その本は持ち出し禁止ね」

「わかった……。でも、この部屋たまに来てもいい?」

「もちろん、いいわよ。あなたの家だもの」

 ドリフィーは、そう言って笑った。


 ――そこまで思い出して、アルルはゆっくりと目を閉じた。 

 明日学校から帰ったら、真っ先にあの部屋に行こう。 

 ほんと、今日は色んなことあったな……。

 次第に意識が遠のいていった。

 

 ◇


 翌朝、ベルフィーにもらった月白かぼちゃのポタージュスープとパンを食べた。

「とろとろして甘くて美味しい」

「珍しいからね。なかなか食べられないよ」

 月白かぼちゃとは、白い皮のかぼちゃで、柔らかくて白い。月光に当てないと育たない。熟れてくると銀色を帯びてくる。食べると少しだが状態異常を回復させる効果があった。


「行ってらっしゃい。気をつけてね」

「いってきまーす!」

 アルルは少し警戒しながら学校に行った。

 

 学校につくと、なんとなくいつもと雰囲気が違った。講堂にはいつもより先生方が集まっている。

 

「おはよう」

 魔導士のリオナだ。

「おはよう」

「今日は魔王国の査察官がくるね」

 リオナが嫌そうな顔をした。アルルはすっかり頭から抜けていた。

「そうだった、すっかり忘れてた。なら、実践の授業はないね」

「つまんなーい」

 アルルは苦笑いをした。


 校長先生の挨拶。

「今日は査察が入りますので、粗相の無いようにお願いします」


 魔王国の査察官は、反乱分子がいないかの監視と、強い生徒を魔王国に指名することも行っている。

 だから、自分の技量を見せびらかすと連れて行かれるし、反抗したりしても連れて行かれるから、皆おとなしくしている。


 みんな暗い顔で各教室に分散していく。

 (古代魔法、試したかったな……)

 魔王国の官吏の前で、古代魔法をひけらかすものなら、きっと家族みんな捕らえられてしまうだろう。


 それぞれのクラスでは、どの役職でも基本的なスキルや知識を学ぶので、こういう日は座学だけだった。

 

「放課後、合同大会のチームと会うんだ」

 リオナが休み時間にアルルに嬉しそうに話した。

「いいね。私も剣術学校、行こうかな」

「あっちも今日査察来てるから、うずうずしてるかもね」

 リオナはそう言って笑った。


 ◇


 放課後、アルルとリオナとリオナのチームの回復魔法師のジュリアン・ミレイユと剣術学校に向かう。

 ジュリアンは、回復魔法師には珍しく、男性だ。回復魔法師は、繊細さが必要な役職のためか女性が多い。

 アルルは、同じ役職として、立ち回りで気になることを聞いてみた。

「ジュリアンてさ、魔物とかの知識も勉強したりする? 状態異常解除のタイミングとか、魔物のスキルの対処方法とか必要よね?」

「そうだね。知っといたほうが楽だよ。準備しているのと、いきなり攻撃やスキルが来るのとでは全然違う」

「なるほど……」

 アルルは、勉強しないとな、と思った。


 リオナも、ジュリアンに同調した。

「私なんて防御魔法とかないから、遠距離攻撃してくる魔物は全部把握してるよ」

「そっかー」

 アルルは、自分の知識のなさを痛感してしまった。


「アルルは、おばあちゃんに聞けばいいじゃん」

「そうだね。今日帰ったら聞いてみる」

「うんうん」

 リオナとジュリアンは微笑んだ。


 話をしていると、学校の入口の方からグレンとリュカが手を振っていた。

「よう!」

「アルル!」


 リオナは、「私らも盾剣士のとこ、行ってくるね」と言って別れた。


「塔の上からアルルが来るのが見えたんだ」

「リュカは、目がいいからな」

 

 剣術学校は、教会の建物のような魔法学校とは異なり、城のような建物だった。両脇には高い塔が建っている。

 

 リュカがゴソゴソとバッグから何かを取り出した。

「手を出して」

 アルルの手のひらの上には黒い紐のようなものが乗っていた。

 

「あっ! これ……。胞子鹿の?」

「うんうん」

 リュカは、それを手に取ると、アルルの首に回してつけてくれた。胞子鹿の角が加工されたチョーカーだった。

 

 アルルの喉元には、小さく削られた鹿角の欠片が添えられている。指先ほどの薄い板状で、角はすべて丁寧に丸められていた。紐に沿うように留められていて、ほとんど揺れない。まるで最初からそこにあったように、喉に馴染んでいた。


「似合うよ」

「すごく嬉しい! これって状態異常抵抗上がるのよね?」

 リュカは、頷いた。


「グレンには、アンクレット作ってあげたんだけど、気に入らなかったみたいで、アームバンドがいいと言われたんだよ。これだけど」

 確かに短めのアンクレットになっている。


「俺は飛んだり跳ねたりよくするからさ。足だと邪魔になるだろ?」

「そうですねー」

 リュカが下唇を突き出した。それを見たアルルが吹き出した。アルルを見て二人も笑う。

 

「また作り直すよ。……仕方ないな」

 アルルがリュカのアンクレットを手に取ると、古代ルーン語で唱えた。

『形を変えよ!』

 何も変化はなかった。しかし、一瞬紐がうねった気がした。

「だめか……」

 

 それを見たグレンとリュカは顔色を変えた。

「それって……古代魔法?」

 リュカが恐る恐る尋ねた。

「うん。ちょっと真似事だけど。やっぱりだめだったな」

 

 空気が凍る。

 グレンが低く言った。

「それ、口にするな」

 

「人前でそれは駄目だよ!! もうやらないで!」

 リュカが、アルルの両肩を掴んで厳しい口調で強く言った。

 アルルはびっくりして泣きそうになっている。

 

 グレンは静かに言った。

「人に古代魔法が使えると言ったら……、魔王国に売られる。古代魔法が使えるというだけで、高く売れるんだ。一生困らないほどのお金になる。……魔王国に連行されるぞ、確実に」

 

 アルルは怖くなって震えた。

「怖がらせてごめんね……。でもそうなんだ」

 リュカはアルルの肩を掴んでいた手を離した。

 

「うん……。もうしないよ……」

 アルルの頬に一筋の涙が光っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ