第6話 双術士の休日
休日の初日。
アルルは、ササリーフを早朝摘みに行く。夜の方が魔力が高いが、そうも言ってられない。家にストックしてある分は市場に売りに行く分だからだ。
ドリフィーは、朝ごはんの準備と同時に、戦闘の準備をしていた。ドリフィーは赤い宝石の指輪をはめた。古いが装飾が豪華な魔法の杖を倉庫の奥から引っ張り出す。埃が被っている。
(アルルの指輪のことは誰も知らないはずなのに、おかしいわね……。あの力がある指輪のことを知っている誰かがいる? まさか、家族の誰かがまだ生きてる?)
アルルが池から戻ってきた。
「ただいま。なんかいい匂いする」
「昨日貰った鹿のハーブ焼き。あと鹿とほうれん草のスープよ」
「お腹すいた!」
「支度してらっしゃい」
「はーい」
カゴからササリーフを取り出して、エキスを作る作業台に乗せた。
(おばあちゃん、見慣れない指輪してたな……)
アルルは、テーブルの席に着くとすぐに、「いただきます!」と美味しそうに食べ始めた。
ドリフィーは、嬉しそうに目を細めている。
アルルが食べながら聞いた。
「おばあちゃん、その指輪何?」
「これね」
ドリフィーがテーブルの上に手を置くと、大きな赤い宝石が朝の光を受けて、煌めいた。澄んだ石の奥で、小さな炎のような光がゆっくりと息づいている。触れずとも、そこに確かな力が宿っているのがわかる。
「魔力を増幅する力があるの」
「へえ! すごい」
ドリフィーは、スープのスプーンを口に持って行く手を止めた。
「今日も攻撃魔法の練習する?」
「うん。だって魔王の手先が指輪を探してるんでしょ? ……だから、練習しときたい」
「わかったわ」
ドリフィーとアルルは、食べることに集中した。
アルルは、食べながら自分の攻撃魔法の上達について考えた。
(早く上達しないかなあ。双術士になりたいなあ)
双術士とは、攻撃魔法も回復魔法も扱える人のことである。
二人は食べ終わるとヴォルバグ――でかい甲虫がいる畑に向かった。
「アルル、前教えた炎の魔法覚えてる?」
「うん……。なんとなく?」
「やってみて」
少し離れたところに、ニンジンを食べているヴォルバグが一匹いる。
「燃えよ!」
アルルが魔法をかけると、火に包まれながらヴォルバグが突進してくる。
「跳ねよ!」
ヴォルバグが燃えながらぴょんぴょん跳ねている。
「氷魔法かけてみて」
「わかんないよ」
アルルは困惑した。しかし、このまま何もしないと攻撃してくる。
ヴォルバグは、上下動作がなくなって自由になり、アルルに突進してくる。
アルルが杖をかざす。
「凍れ!」
一瞬氷に包まれたが、パリン! 氷が砕けた。突進してくる。
「跳ねよ!」
「燃えよ!」
火に包まれながら跳ねている。
だんだんヴォルバグの元気がなくなってきた。
「氷よ、足止めせよ!」
ドリフィーが魔法で足止めする。
「アルル、雷魔法かけて」
「雷よ!」
上から電撃が落ちて、ヴォルバグが動かなくなった。
「とうとう倒せるようになったわね!」
「おばあちゃんの足止めがあったからだ。私も足止め魔法してみる」
「跳ねる魔法と足止め魔法があれば、炎・氷・雷の攻撃魔法で倒せるわね」
「うん! もっかい、やってみる!」
アルルは、他のヴォルバグを探して歩く。
ドリフィーは、少しずつ成長していく孫の姿を眩しく感じていた。
◇
――リュカの家。
森の入り口の大きな木の上にリュカは住んでいた。姉のアイリス・エルドとの二人暮らし。
トントン、カンカンと、こ気味良い音が響く。
リュカは、小さな作業台の前に座り、ナイフで胞子鹿のツノを削っていた。
「リュカ、それ何?」
「昨日、胞子鹿を倒したんだ。合同大会の仲間と」
「加工してるの?」
「うん。仲間にアクセサリー作ってあげようと思ってさ。俺こういう作業、好きだし。姉ちゃんにも作ろうか? 異常状態抵抗が上がるよ」
「あ、欲しい」
「わかった。ネックレスでいい?」
「うんうん。ありがとう」
アイリスは優しく微笑む。
(アルルには、ネックレスよりチョーカーが似合いそうだ……。グレンには戦闘に邪魔にならないようにアンクレットにしよう。自分はネックレスでいいや)
リュカは夜遅くなっても作業台の前に座って作業をしていた。アイリスがリュカの作業を覗いた。
「よく集中力が続くねー。今日はそのくらいにして明日にしたら?」
リュカは背伸びをした。
「う……ん。そうする。……姉ちゃんの出来たよ。これ」
「ありがとう! ちっちゃくて可愛い」
アイリスは早速ネックレスをつけた。鏡の前に行って確認した。
「素敵。やっぱり器用よね」
「たまに作ったやつ、市場に売りに行くしね」
「助かってる」
リュカの家もなるべく時給自足で質素な生活をしていた。肉は食べないベジタリアンだ。
「そろそろ寝るよ」
「おやすみ」
リュカは、休み明けにアクセサリーを渡した時の仲間の反応が楽しみだった。想像してクスッと笑っていた。




