第4話 森の遺跡
次の日は、雨だった。パラパラと窓を打つ雨。
朝ごはんを食べた後、魔法撥水のフード付きコートを着て学校に行く。
遠くで雷の音がする。
(練習どうなるのかなあ?)
魔法学校に着くと、リオナが残念そうな顔をしていた。
「おはよう。……この雨じゃ、無理よね」
「まだ先生なんも言ってこないけど、どうなんだろう」
魔法学校は、大きな教会のような建物だった。高い天井には綺麗な絵が書いてあり、窓はいろんな色のガラスが差し込む光を色付けている。今日は外が暗いため、ガラスは光ってはいなかった。
朝はこの講堂に集まり、校長先生の挨拶の後、各自の教室に移動することになっていた。
校長先生の話が始まった。
「皆さん、おはよう。今日も合同大会の練習があります。あいにく雨ですが、雨除けの準備をしてから練習に行くように。実際の戦闘では、天気は関係ありませんから、これも経験になります。ではお気をつけて、頑張りましょう」
リオナが両手をあげて喜んでいる。
「良かったー! 練習いけるよ!」
「リオナのチームってどんな感じ? 盾剣士と回復魔法師よね?」
「もう相性バッチリよ! 剣士さんが庇ってくれるから自由に攻撃できてめっちゃ楽だし、回復魔法師さんも回復に徹してくれてて安心」
「楽しそうでいいなあ」
アルルはリオナのチームが楽しそうで羨ましくなった。
「アルルのチームはどんな感じ?」
「私が足引っ張ってるのかもしれない……。でもね、回復いらないって言う剣士さんがいるの」
「うへぇ! それきっついね。回復しないわけいかないしねえ」
「そうなんだよ」
「でもさ、そのうち回復の大切さ、わかるようになると思うよ。要らないなんて言ってらんないもの。卒業するまでこのチームらしいから、お互い必要になって行くと思うよ」
「そうだね」
「今日の練習の後、しばらく間が空いちゃうし、頑張ってこよう!」
「はーい!」
剣術学校に行くと、グレンとリュカが待っていた。
「遅いから迎えに行こうと思ったぞ」
「ごめん」
「さあ、行こうか」
私たちは、前回は北の森に行ったが、今回は南の湖を抜けて南の森に行くことにした。
北の森より、南の森の方が広い。一つ間違えると迷って出られなくなる。奥の方には《迷いの森》と呼ばれる森がある。
三人は森を散策していると、ピラミッド型をした石の遺跡を見つけた。
建物の中に入ると中は広かった。雨の音も聞こえず、ひっそりとしている。苔が至る所に生えていて、人が訪れていないことがよくわかる。
石で作られた建物。奥に進むと、大きな石碑がそびえている。
「お前ら、あんまり奥行くなよ。戻れなくなったら困るぞ」
グレンが、少し震える声で注意した。
アルルは、人差し指で石碑の文字をなぞった。不思議と懐かしい感覚があった。
「わかる! 読めるわ!」
「まじで!?」
リュカが驚いて大きな声を出した。
「……なんて書いてあるんだ?」
グレンが恐る恐る聞いた。
「我らは力を封じた。
人がそれを望みすぎたからだ。
もし開くならば――汝に望みの力を授けられん。
ただし、その代償を支払う覚悟ある者のみが触れよ」
しばらくみんな沈黙した。
グレンが静寂を破った。
「なんか怖えな……てかなんで読めるんだよ」
リュカが石碑に顔を近づけた。
「これは、古代ルーン文字かな?」
「そうだね。私……読めるのにびっくりした」
アルルは目を見開いた。
「アルルは、古代人の末裔か何かか?」
グレンが、アルルの名前を初めて呼んだ。
リュカがまじまじとアルルを見つめた。
「――そろそろ、練習に戻らないか?」
グレンが剣の柄に手を置いて言った。
「「そうだね」」
遺跡を出ると、雨は止んでいた。
「もう少し南下してみようか」
グレンが言った。
「あの……私試したい魔法があるんだけど、いい?」
「どんなの?」
「補助魔法だよ」
「ほう。あとで、やってみて」
グレンがそう言うと、アルルはくすぐったいような嬉しいような表情をした。
――雨上がりの森。
草木が濡れていて、歩いて行くと、足がずぶ濡れになった。
急に視界が開けると、まるで森を抜けたかのような広い場所に出た。芝生が広がり、丈の短い綺麗な花がそこかしこに咲いて風に揺れている。
「わあ、綺麗!」
アルルは、スキップして走り回った。
すると、広場の端の方に何かがいるのに気付いた。
鹿だ。大きな体に立派なツノが生えている。体は緑色に光っている。
リュカの目は、鹿に釘付けになっている。
「……胞子鹿だ」
「「胞子鹿?」」
リュカだけ知っているようだった。
「あいつの胞子が欲しい。……僕が罠を置くからそこに誘い込んでくれないか?」
「わかった。胞子は何に使うの?」
「矢に塗るんだよ。あと、胞子は吸い込まないように気をつけて。混乱するから」
「うん。気をつける」
「あいつは追うと反対方向へ逃げる習性がある。だから森の中から追ってくれないか?」
「了解!」
「罠に目印に矢を立てておく」
アルルは、ワクワクした気持ちを抑えられなかった。




