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癒しの雫  作者: 蒼井みつき
第1章 アルル・ベリファードと魔法学校

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第18話 合同大会(中編)

 三回戦目。三階の広いアリーナを四つに区切った一角で戦う。


 これに勝てば、いよいよベスト4に入り、さらにあと二戦勝てば優勝。頂点も見えてきた。


 観覧席も人が増えてきた。なぜか、ザワザワしている。


「今更だけど、緊張してくるな」


 グレンが笑う。少し引き攣っている。


「普段通りで行こう!」


 リュカが声を出す。


 アルルは一人でぶつぶつ言っている。


「タイミングを詠唱に合わせて……」


 相手は三年生。魔導士二人と、回復魔法師のチーム。火力で押してくるタイプだ。


「あの青いのは、ぜってー倒す!」


 グレンが剣を握り直し、剣を振り回すと、ブンッと低く唸る音がした。


 アルルが、隣のアリーナに目をやると、アレンがいた。隣の家に住む盾剣士。


 (やっぱり強いんだな……)


「リュカが回復魔法師、足止めしといてくれよ。俺青いの倒すから」


 私情が入ってそうな感じだが、とりあえず方針は決まった。


 (私は、まずは倒れないこと!)


「グレン。私にはなんでなんも言わないの?」


 気になったので聞いてみる。


「アルルには、あれこれ言うより、自由に動いてもらった方が、いい気がしてさ」


「そっか……。わかった!」


 (信用してくれてるのかな? 私のこと)


 グレンが剣をしまった。


「そろそろ準備だ」


 ドオオーーーン……。


 三年生同士の試合会場からものすごい爆音が聞こえた。


 (あれまともに受けたら、死ぬんじゃないの――? 学校じゃなかったら……)

 

 アルルは少し震え上がった。

 いや、――グレンとリュカを信じよう。私が耐えればなんとかしてくれるはず。


 自分の会場に着いた。深呼吸をする。

 

 グレンは、剣の柄に額に当てて祈っていた。リュカは弓のチェックをしていた。


 アルルは、防御魔法を使うタイミングのことだけを考えていた。


「始まる」


 その瞬間、床が光った。


 アルルは早速魔導士二人の攻撃を喰らった。


「燃えよ!」「雷よ!」


 体が焼ける感覚。目がチカチカした。――痛い。


「癒やせよ! 癒やせよ! 癒やせよ!」


 それでもアルルは走る。


 グレンが青い魔導士に転撃をかけようとすると、即時後退で回避。


「チッ」

 

 リュカは、罠を張る。制動矢で、回復魔法師の動きを封じた。

 

 グレンが青い魔導士の相手をしてくれる間、もう一人の魔導士からは攻撃を受ける。でも、青い魔導士の攻撃よりは痛くない。


 回復魔法師は、青い魔導士の回復に専念している。――今だ。


「燃えよ! 雷よ!」


 リュカに加勢して、回復魔法師を攻撃した。


 もう一人の魔導士、青い魔導士がアルルを狙っているのが見えた。

 

「護れ!」

  

 自分を守りつつ、回復魔法師を攻撃! 回復魔法師は倒れた。


 ドォーン!


 防御魔法も貫通する衝撃。アルルの体が炎に包まれ、強い衝撃がアルルを打ち据えた。

 

 青い魔導士の会心の一撃だった。アルルは、焼けるような痛みに耐えながら、自分を癒す。


「癒やせよ! 癒やせよ!」


 逃げながら振り返ると、グレンとリュカに攻撃されている魔導士の悔しそうな表情が目に焼きついた。


 ついに青い服の魔導士が倒れた。


「護れ!」


 もう一人の魔導士の攻撃から耐えている間に、グレンとリュカの猛攻撃が、魔導士に刺さる。


 転撃で転ばされ、リュカの溜め撃ちが刺さった。


 勝敗は――アルルチームの勝ち。


 (三年生に……勝った……)


 アルル、グレン、リュカ、共にしばらく放心状態だった。


「あ……やったね!」


 アルルはグレンの袖を引っ張ると、皆正気に戻った。


「おう! やったな!」


「すごいよ! ほんと」


 リュカも顔を赤くして喜んだ。


 試合終了を告げる回復の光が降り、傷が癒やされていく。


 青い服の魔導士が近づいてきた。ものすごい不服そうな顔。


「あんた、名前は?」


「アルル……ベリファード」


「覚えとくわ。次に会った時は、絶対負けないから!」


 青い服の魔導士は、そう言って走り去った。


「名前……聞き損ねちゃった」


「今度聞けばいいさ」


 リュカが優しく微笑んだ。 

 

「……さて、次だな。どうやら相手は、二年生チームらしいぞ。アレンとかいう盾剣士のチーム」


「アレン、勝ったんだ!」


「お? 知り合い?」


「引っ越した先のお隣さんの子」


「へえ。強い?」

 

「戦ったことないから、わかんないよ。……でも、ここまで来るんだから強いと思う」


「まあ、準決勝、決勝、三位決定は明日だ。今夜はゆっくり休もう」 


「うん!」


 リオナが後ろから勢いよく抱きついた。


「アルル!! すごい!!」


 リオナは、ぎゅう、と力強く抱きしめた。


「あはは。リオナったら」


「アルルは疲れてるんだから、体重かけるなよ」


 ジュリアンが、リオナを注意する。


「ごめん、ごめん。つい……」


 リオナは、アルルから体を離した。


「でも、明日はずっと応援してるから、頑張ってね」


「ありがとう」


 (リオナは、負けたんだよね。落ち込んでそうなのに……)


 リオナの気遣いに、胸が温かくなった。


 ◇


 帰り道、アルルは悩んでいた。


 (ジャックさんのところに行こうか……いや、またしんどかったら、明日辛くなる……。ササリーフ摘みもあるし……)


 そして、夕ご飯を食べながらも、ずっと考え事をしていた。


「アルル、今日は疲れてるようだけど、ジャックのところに行くのかい?」 


 ドリフィーが黒パンをちぎりながら尋ねた。


「体は休みたがってるけど、気持ちは行きたがってる」


 そう言って、アルルがかぼちゃスープを飲み干した。


 ドリフィーは、笑った。


「おほほ! 正直ね。ササリーフは私がやっとくから、少しだけ行ってきたら?」


 アルルは少し考えたが、「うん。そうする」と言って笑った。


 食器を片付け、アルルはあっという間に、外へ飛び出し、召喚獣に乗って飛んでいった。

 

「誰に似たんだろうねえ」


 そう言ってドリフィーは目を細めた。


 ◇


 舵チョウは、少しよろけながらも、迷いの森の上を飛び、海岸の洞窟になんとか着いた。


 (ドキドキする……また、いきなり襲われたらどうしよう……)


『光よ』

  

 アルルはゆっくり洞窟を降りていく。

 

 奥の広場中央には焚き火が燃えていて、ジャックが椅子に座っていた。


 ホッとして、アルルは歩み寄った。


「お疲れ」


「?」


 アルルは隣の椅子に座る。


 ジャックは、枝を一本火にくべると、落ち着いた声で言った。焚き火からパチパチと音が跳ねる。


「俺の言いたかったこと、理解できたようだな」


「えっ?」

 

「一度も膝をつかなかった。おめでとう」


「……あそこにいたの?」


 アルルは目を丸くする。


 (学校の中、関係者以外入れないんじゃなかったっけ?)


「こっそりな。まあ、入る手段はいくらでもある……それより……」


 アルルは唾を飲み込んだ。


「まず、古代魔法よりも魔法の基礎を習い直した方がいい」 


「えーっ! 古代魔法、習いたいです!」


 両手を握って振りながら、訴えた。


「アルル。焦っても上達しないぞ」


 アルルは、渋々と言った感じでジャックを見つめた。

  

「……では、どうすれば?」


「お前は魔法使いだ。回復魔法と攻撃魔法を使うんなら、双術士を目指してるんだろ?」


「はい」


「片方でもすぐ魔力が尽きてしまうのに、両方の魔法を使うなら、極力魔力を使わずに強力な魔法を繰り出すようにしないといけない」

 

「そうです。理屈はわかるけど、実際にはできません……」


 アルルの声がだんだん小さくなった。


「なんで上級生の魔法が強いのかわかるか?」


「……体力の違い?」


「違う」


「体の大きさ?」


「それも多少あるかもしれないが、練度だ。いかに使い慣れたか、いかに自分のものにしたか、だ。わかるか?」


「練習しないとダメってことですか?」


「まあ、そうだ」


 ジャックは、腕を組んだ。


「起きてる間、ずっと回復魔法を自分にかけてみろ」

 

「魔力なくなっちゃう……」


「自然に回復するだろ?」


「ま、まあ……」


「はっはっは。まあ、これは合同大会終わった後でいいけどな」


 ジャックは、高らかに笑った。


 (授業中もずっとやるの? 先生に何か言われそう……)


「明日も試合あるんだろう。今日はもう帰りなさい」


「はーい」


 アルルは立ち上がると、お辞儀をして「ありがとうございました。おやすみなさい」と言って、洞窟を後にした。


 (もっと色々教えてくれるのかと思った……)


 家に着くと、泥のように眠った。

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