第17話 合同大会(前編)
合同大会当日。
今年の開催会場は、剣術学校のアリーナだった。
全三十二チーム参加で、五回戦までの勝ち抜き戦。
試合会場は、一階と二階の九フロアに分かれており、一回戦と二回戦で使用される。
三階は臨時の障壁で四フロアに仕切られ、三回戦が行われる。
そして準決勝、決勝では仕切りが解除され、三階の広大なアリーナで対戦が行われる。
準決勝が始まるまでは、三階が待機場になっていた。
アルルは、ジャックの宿題のことを考えていた。ジャックに会ったことは、グレンとリュカの二人には内緒にしていた。
(昨日から考えているけど、わからない……。だって魔法が効かないんだもの。どこが悪いのか……。大事なのは、生き残ること……)
リオナが歩いてきた。
「トーナメント表、どうだった?」
「えと……、当分強いチームとは当たらないみたい」
アルルが答えると、リオナが抱きついてきた。
「アルルー、どうしよう……。三回戦目、優勝候補の三年生チームと当たりそう……」
「あら……。でも、まだわからないよ!」
アルルがリオナの背中をぽんぽんと叩いた。
「もし負けたら、アルルは私らの分まで頑張ってよ」
「それを言うのは、早いでしょ!」
隣のリュカも、「始まってみないことにはどうなるかなんてわからないさ」と言ってくれた。
みんな試合前で、ピリピリした空気が流れていた。
優勝チームには、最新の武器が与えられる。準優勝には、最新の防具一式、三位には、高級アクセサリーが与えられるため、皆目の色が違う。
そんな中、アルルだけは、宿題のことを考えていた。
(最初に狙われるのは、回復魔法師……。やっぱり倒されるなってこと? グレンも言ってたな……そういえば。お前は死ぬな、とかまず防御しろ、とか)
(具体的には、どうすれば……)
「……ル、アルル」
グレンが呼んでいる。
「ほら、一試合目、行くぞ!」
アルルは、杖を持ち直し、口をキュッと結んだ。
一戦目は、同じ一年生のチームだった。相手チームの編成は、自分たちと同じ編成だった。剣士、弓使い、回復魔法師。
会場は一階の初心者用アリーナ。
少し手狭だが、六人が走り回るには十分な広さだ。
「よろしく」
「よろしくね」
握手の後、それぞれチームごとに両端に移動した。
「アルル、まず自分の身を優先しろ」
「……わかった」
ハッとする。ジャックの言葉と重なった。
――大事なのは、生き残ることだ。どんなやり方でもいい。
アルルは、なんとなく理解できた気がした。
床が光る。開始!
相手の三人が一斉にアルルの方へ走ってくる。
いち早く気づいたリュカが弓使いに制動矢を放った。間に合う。しばらく弓使いは痺れて動けない。
グレンが回復魔法師へ突っ込む。
「転撃!」
回復魔法師は転んだ。
走って逃げるアルルが剣士に追いつかれそうになる。
「跳ねよ!」
さらに走りながら、攻撃魔法を繰り出す。
「雷よ!」
相手の回復魔法師は、グレンの攻撃に耐え、自分の回復で精一杯だった。
「アルル、足元に罠!」
リュカが叫ぶ。アルルはジャンプして見えない罠を避けた――。
リュカも回復魔法師に攻撃すると、回復魔法師は膝をついた。
アルルは、弓使いの制動矢を喰らう。動けない。剣士が追いつく。
グレンとリュカは、弓使いを猛攻撃!
剣士がアルルに連続攻撃と天槌! もろにダメージをくらう。
……ああ、もうダメだ。
ジャックの言葉が蘇る。……生き残れ。
体が軽くなる。
「癒やせよ! 癒やせよ! 護れ!」
剣士の転撃が弾かれた。
動ける! アルルは咄嗟に走る。「癒やせよ!」
相手の弓使いが倒れるのを横目で見た。
アルルは逃げながら、足止め魔法を撃つ。
「氷よ、足止めせよ! 雷よ!」
グレンとリュカ、そしてアルルの攻撃を受け――遂に剣士も膝をついた。
「勝った!」
グレンとリュカ、アルルは、お互い目を合わせた。
まだ息が弾んでいる。
(誰も倒れず、倒せた……)
アルルは、杖を強く握っていた。反対の手の拳が震えている。
「お前ら、ちゃんと休めよー」
先生が声をかけてまわる。
「よく耐えたな」
グレンがアルルに声をかけた。
アルルが照れ笑いする。
「休憩したら、また二回戦目があるよ」
リュカが笑う。
「おう、そうだな。しっかり回復しとこうぜ」
◇
二回戦目。相手は二年生チーム。編成は、盾剣士、魔導士、補助魔法師。
戦闘補助系の補助魔法は、試合前に準備できる。ただし、二種類のみかけられる。
相手チームの補助魔法師が、盾剣士に移動速度上昇と攻撃力強化を、魔導士に詠唱短縮と防御力上昇を、自分に詠唱短縮と防御力上昇の魔法をかけた。
開始の合図。
アルルは盾剣士に「跳ねよ!」と唱えるが、おさまるとあっという間に追いつかれる。
間一髪、「護れ!」が決まり、盾剣士のスタンを弾いた。
アルルは、走る。
(倒れちゃダメだ!)
しかし、アルルは魔導士から執拗に連続攻撃を受ける。
「癒やせよ 癒やせよ!」
自分を回復しながら走りまわる。
しかし、その間にグレンとリュカが補助魔法師を倒していた。次は魔導士に攻撃!
アルルは追いつかれる一歩手前で、盾剣士に足止め魔法をかけた。
「氷よ、足止めせよ!」
アルルが逃げている間に、グレンとリュカが魔導士を倒していた。
残るは盾剣士。こうなると独壇場だった。あっという間に勝敗はついた。
アルルチームの勝ち。
「やったあ!」
「よくスタン防いだね。上手くなってる!」
リュカに褒められて、照れるアルル。
相手チームの三人が近寄ってきた。
「回復魔法師がなかなか落とせなくて、負けたよ。いい意味でしぶとかった」
アルルは髪をいじって下を向いた。顔が少し赤い。
「悔しい! ……けど、いい試合だった」
「次、頑張ってね」
「ありがとう」
お互い握手を交わし、別れた。
アルルは、壁に貼ってあるトーナメント表を見に行った。
(リオナはどこでやってるんだっけ……。二階のAか)
「リオナ見てきてもいい?」
「俺も行くよ」「僕も行く」
三人で二階に行くと、リオナはまだ試合中だった。
両チームとも同じ編成だった。盾剣士、魔導士、回復魔法師。相手は二年生のチーム。
両チームの回復魔法師は、まだ倒れていない。
しかし、ジュリアンの方が攻撃を受けていないようだった。
アルルはじーっとジュリアンの動きを観察していた。
(防御魔法使うタイミングが上手いな。あと、回復のタイミングも)
やはり、二年生チームの回復魔法師が先に倒された。
次に魔導士、盾剣士の順で倒れた。
(おめでとう、リオナ)
試合が終わり、回復を済ませた、ロイド、リオナ、ジュリアンがこちらに歩いてくる。
「お! 来てくれてたんだ」とロイド。
「アルルー! 勝てたよー」とアルルに抱きつく、リオナ。
「おめでとう、リオナ」
「アルルはどうだったの?」
「実は……」
一瞬、暗い顔をするアルル。リオナが眉間に皺を寄せた。
「勝ったよ!!」
アルルが笑って言うと、リオナが少し怒ったように「何よー! 負けたかと思ったじゃない」と言ってアルルの腕を叩いた。
「意外とそういう茶目っ気あるんだな」
グレンが意外そうにアルルを見た。
「お互い、三回戦目頑張ろうぜ」
◇
三回戦目。
相手は三年生。魔導士二人と、回復魔法師のチームだ。
青い服を着た魔導士が近づいてきた。後ろに魔導士と回復魔法師らしい三年生がいた。
「あなたたち、一年生みたいね。信じられないわ! なんかズルしたのかしら」
「おい! 言っていいことと悪いことがあるぞ」
グレンが一歩前に出た。
リュカがグレンの前に腕を出して止めた。
「ズルだと思うなら、その目で確かめればいい」
珍しくリュカが感情を露わにしている。
お互いのチームが睨み合った。
(試合前なのに……)
アルルは、三人のやり取りを聞きながらも、次の試合のことを考えていた。
(次は魔導士二人か……)
次の試合を頭の中で描いていた。




