23. 恐るべき真実 ールーカスsideー
セシリアが好きだ。そしてセシリアも少なからず俺を好きだと思っていたのだが……どうして嫌われてしまったのだろう。
俺はふらふらっとクソチビの出ていった扉に歩み寄り、扉を開けた。なにも、クソチビを引き止めようとしたわけではない。ただ、体が勝手に動いたのだ。心ここに在らずの俺の耳に、マルコスの声が聞こえてきた。
「父上と母上が、森の外れのあの家から追放されることになったらしい」
「えっ!? なんで!? 」
クソチビの声が聞こえる。マルコスとクソチビは友人だと言うが、マルコスはなぜ自分の身の上話をクソチビにするのだろうか。そして、マルコスの父母が追放されるということは……セシリア一家が追放されるということか。一体なぜだ?
「詳しくは分からないけど……とりあえず俺は、一旦帰ろうと思う」
マルコスは焦ったように言う。そしてその後、衝撃的な言葉を吐いたのだ。
「セシリアはどうするんだ? 」
……は!? セシリア!?
背筋にゾゾーッと寒気が走った。
まさか、クソチビってセシリアに似ているのではなくて……
「私も帰るわ。何が起こったのか、お父様やお母様から聞かなきゃいけないから」
クソチビ……いや、セシリアは言う。
「そうか。……万が一、状況がさらに悪くなったら……セシリアは、ルーカス様との縁談はどうするんだ? 」
それに彼女は答えなかった。だが、切なげにぽつりと溢した。
「私はルーカスが好き。でも、私のせいでルーカスに迷惑をかけられないわ」
セシリアは……なに馬鹿なことを言っているのだろう。俺のことなんて考えなくてもいいのに。俺は突き進むのがどんな道であれ、セシリアと共に歩みたい。俺にとっての地獄は、セシリアがいなくなることだ。
セシリアが学院を去ってから、彼女のことを考えない日はなかった。楽しかった学院生活も、セシリアがいなくなると途端につまらなくなった。自分をかっこよく見せようとか、セシリアをちょっとからかってやろうとか、そういう日々の楽しみが奪われた。だから俺は何年もかけて、どうすればセシリアと幸せになれるのか必死に考えた。そしてようやく胸を張ってセシリアを迎えられると思ったのに……また、俺の前から消えるのだろうか。
……いや、消えさせなんてしない。
俺は、クソチビをセシリアだとは知らず、酷い扱いを繰り返してきた。過去の俺をぶん殴ってやりたい気持ちでいっぱいだ。セシリアには最低な俺を見せつけてきたのに……セシリアは、俺のことを好きでいてくれた。
最低な俺の、どこを好きになってくれたのだろうか、それは甚だ謎だ。だが、ありのままの俺を好きになってくれたセシリアを、絶対に悲しませたくはない。
マルコスと話を終えたセシリアが、部屋の中へと戻ってくる。俺は平静を装うが、心臓は止まってしまいそうだ。
「ルーカス様」
彼女はわざと低めの声で俺を呼ぶ。だが、どう考えてもセシリアの声だ。もっと言えば、クソチビだってセシリアそのものだ。気付かなかった俺は、最低な男だ。
「急遽用事が出来て、また家に帰らせていただきたいのですが……」
セシリアと目を合わせることが出来なかった。だが、出来る限り普通に答えた。
「分かった。急いで帰れ」




