↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンダフルリング! エイルとエミルのふしぎな冒険 黒竜事件  作者: 稲葉トキオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/92

第49話 闇を切り裂く光

 ゴオオオオッ!


 ザングが竜人化した姿をあらわにした瞬間、その全身からオーラと衝撃波がほとばしり、広間をゆるがしました。


 天井から、パラパラと細かい白土が降ってきます。ここは、山肌をくりぬいて作られた洞窟。へたをすれば崩れて、みんな生き埋めになってしまうかもしれません。


 けれど、クラウス、エイル、ミリアム、クリスティーヌの四人は、戦闘態勢のまま平然としていました。四人とも歴戦のつわもの、これくらいではびくともしないのです。


「おお……みなぎる……みなぎりますぞぉ……! これが、黒竜さまのおチカラ! このおチカラが我がものとなれば、おそれるものなどなにひとつッ……!」


 浮かれきったザングがセリフを言い終わる前に、エイルのアームドした黄金の剣が、その黒い首にたたきこまれました。


 ガギィン!


 本来なら、スパッと首が飛んで、あっけなく終了……となるはずなのですが。


「ああ……"巨獣狩りの剣星"……なんと無粋な! せっかく、黒竜さまへささげる感謝の言葉をさえぎるとは!」


 ザングは金色の瞳をギョロリと動かし、エイルに邪悪な笑みを向けるのでした。


 エイルはただならぬ気配を感じたのか、クラウスたちのもとまで、ひらりと飛びすさります。


「効いてない……?」


 ミリアムはおどろきの声をあげます。


 黒竜のウロコは、全ドラゴンの中でいちばんの硬度を誇ります。ザングが同じ硬さを手に入れたとなると……黒竜とひとつになったというのは、見かけだけの話ではない……信じがたいことですが、どうやら事実のようです。


「なにが起きた!?」「侵入者か!?」


 すると、さっきの震動に気づいたのか、教団員たちがぞくぞくと広間に集まってきました。目の前にはザング、うしろには団員たち。一行は、はさみ撃ちの形になってしまいます。


 教団員一人一人は、一行にしてみればザコ同然です。けれど、エイルたちの存在に気づかれた以上、もっとわらわらと押しよせてくるでしょう。そのうえ、黒竜と一体化したザングも相手にしなければならないのですから、やっかいなことこの上ありません。


「ミリ! クリちゃん! うしろのやつら、まかせた!」


 エイルは得意の即決即断で、一直線にザングへと向かっていきました。


「わかった!」「おまかせください!」


 ミリアムとクリスティーヌもまた即決即断。くるりと反転して、押しよせる教団員たちを相手にします。ミリアムはボウガンから矢をつぎつぎと放ち、クリスティーヌはトゲつきのグローブで、団員たちをぽいぽいとはじきとばしていきます。


 クラウスも指輪をかまえ、エイルとともにザングに挑む腹づもりのようです。


 キン! キン! ガキィーン!


 エイルは黄金と白銀の剣の二刀流で、猛獣のように攻めたてますが、ザングの両手にみごとにさばかれてしまいます。


 ザングの両腕も黒竜の硬度を手に入れているうえ、視力まで上がっているらしく、見切りの力も大幅に増しているのです。


「来い……!」


 "キャスト"では威力が足りないと判断したクラウスは、指輪からパートナーを召喚します。彼の体のまわりでうずを巻くすさまじい吹雪とともに、それは現れました。


 全身に、するどい氷の結晶をまとった美しい女性型のワンダー……【氷晶妃精コキュート】。三メートル近い体を持つ、氷の大精霊です。


 コキュートは両手をひろげ、ふうっと息を吐きました。


 吐き出された息は、猛烈な吹雪となって、ぴったりと張りついているエイルもろとも、ザングに襲いかかります!


 ヒュゴオオオーーーッ!


「うむあッ!?」


 黒竜の頑丈な体を手に入れたザングも、さすがにこれにはたじろぎました。さっきは"キャスト"の氷を砕いたザングですが、大精霊が直接放つ冷気は、まるでケタちがいでした。


 ドラゴンはトカゲから進化した生きものといわれるためか、冷気が共通の弱点なのです。それをものともしないのは、同じ氷の属性を持つドラゴンだけです。


「チャンス!」


 同じく吹雪にあてられながらも、風の子元気の子のエイルは、にいっと笑います。そして、ひるんだザングに、ありったけの力をこめた一撃!


 パキィーン!


 みごと、寒さで弱って硬さの落ちたザングの右腕に、ヒビを入れることに成功しました。


「ぎゃああっ! 私の、黒竜さまの腕がああァッ!」


 ふつうの人間であれば、腕にヒビが入るなんてことはありません。その激痛は、想像もつかないほどなのでしょう。


 けれどエイルは手をゆるめません。くるりと回転しながら、右手の黄金の剣で、ふたたび首を刈り取ろうとします。今度は、ちゃんと斬れるはず……


 ところが。


「あああああああッ!!!」


 ゴオオオオッ!


 ザングが大声とともに全身からオーラを噴き出し、エイルはたまらず飛びのきました。


「許しません……あなたたち……許しませんぞおォォォ!!!」


 どうやら斬るより先に、相手の堪忍袋の緒のほうが切れてしまったようです。


 ザングの体は、オーラとともに、ムクムクと大きくふくらんでいきました。


 それは広間の天井に届くほど……高さ七メートルくらいにまでなります。


 そして、その姿は……


『グルル……』


 ――完全に、黒竜と化してしまっていました。ザングの面影は、ちぢれた長い髪の毛と、左目のモノクルだけです。


『グルオオオオオッ!!!』


 黒竜と化したザングの、おたけび。


 それは広間、いえ隠れ家全体、いえいえ山全体にひびきわたるほどのいきおいでした。ミリアムたちが相手にしていた教団員は、その圧に耐えられなかったのか、バタバタと倒れていきます。


「な、なによ、あれ……!」


 異変に気づいたミリアムが振り向くと、そこには、どこかいびつな黒竜の姿が。クリスティーヌも、「あらまあ……」とびっくり仰天です。


「"トランス"……そのなれの果てへと堕ちたか……!」


 クラウスは、いまいましそうに言い捨てました。


 "トランス"とは、ウィザードの技術のひとつ。みずからの体にワンダーをとりつかせ、パワーアップするスタイルのことです。アームドよりお手軽で、より大きなチカラを得ることができます。


 ですが、そのかわり体への負担が大きく、長いあいだ、あるいは深くとりつかせつづけていると、後遺症が残ったり、精神に異常が起きたりします。さらには、ワンダーに体を乗っ取られてしまうこともある、諸刃の剣のような技なのです。


 今回、ザングに起こったのは、いちばんおそろしい、体を乗っ取られるパターン。黒竜の強大すぎるチカラに耐えきれず、その体をうばわれてしまったのです。


 いまのあの黒竜は、ザングの意思でも黒竜の意思でもない、ただ闘争本能だけで動きつづける、暴走ワンダー……いえ、モンスターです。


「できれば生け捕りにしたかったが……これで加減はいらなくなったな」


 クラウスもまた、全身からオーラを解き放ち、コキュートに強い冷気を放たせました。その威力は、広間全体を銀世界に変えてしまうほどです。


『グルアアアッ!』


 黒竜と化したザングは寒さにあえぎますが、負けじと口の中に漆黒の火炎をためはじめます。ドラゴンの得意技、火炎のブレスです。


「あれ……やばくない?」


 ミリアムは表情を引きつらせ、体がこわばりました。


 それはクラウスも、クリスティーヌも同じです。


 黒竜のブレスは、そこらのドラゴンとは格がちがいます。ものによっては、まわりの時空すらゆがませることもあるとか。経験豊富な三人は、その脅威を見ただけで感じ取ったのです。


 氷の大精霊コキュートの冷気でも、おそらく打ち消しきれない業火……それが一行に向かって、放たれました!


「!」


 そこに、エイルが先頭に立ちはだかり、二本の剣でブレスを切り払おうとします!


「なっ……バカか、お前!」


 クラウスが必死の形相で叫びます。ミリアムも声をあげようと思っていましたが、先を越されて、口をあんぐりと開けるばかりです。


 エイルとつきあいの長いミリアムは、彼女がドラゴンのブレスを切り払う場面を、何度も見ています。しかし、黒竜の、それも人の肉体とマナを得て強まったブレスは、完全に未知の領域。まともに受ければ、ただではすまないはずです。


 実際、ブレスを受けているエイルのやまぶき色の髪が、ペールオレンジのマントが、チリチリと焦げていきます。二本の剣の美しい刀身も、黒ずみはじめていました。


「エイル様……」


 メイドのクリスティーヌは、かたずをのんで、主人のエイルを見守ります。


 はたして、エイルの運命やいかに……?



お読みいただき、ありがとうございました。

このおはなしがおもしろい、つづきが気になると思っていただけたら、 ブックマーク登録や下↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価していただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。