↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンダフルリング! エイルとエミルのふしぎな冒険 黒竜事件  作者: 稲葉トキオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/46

第27話 パワードゴブリンをさがせ!

 【ニュードウルフ】のシロの背に乗った姉妹とクリスティーヌ、シロンとシュガーは、王都の外へと飛び出しました。


「さあー、シロ。ダルベールの相棒をさがすんだぞ」


『ワンッ!』


 元気のいいおへんじ。これなら期待できそうです。


 ……が。


『ワフーン……』


『ごめん、わかんない……ってさ』


 不発に終わってしまったのでした。


「おいおいシロー、どうしたんだー?」


 エイルは、しゅんとしてしまったシロの頭を、ぽんぽんとたたきました。


「うーん、距離が遠すぎるのかな……」


 エミルは考えこみました。家族なので、シロの鼻のよさはよく知っているのです。その範囲が、どこまでなのかということも。


『隠ぺいの魔法でも、使ってるんじゃないでしょうか?』


 シュガーがおずおずと言いました。


「まあ、なくはないと思うけど……お姉ちゃん?」


 エミルはエイルに話をふります。ダルベールと彼のパートナーのことを知っているのは、エイルだけだからです。


「わかんない!」


 ある意味、予想どおりの答えです。けれど、あまりにきっぱり言い切るものですから、エミルたちはそろってずっこけてしまいました。


『もー! どうするの! これじゃ、てがかりゼロじゃーん!』


 シロンがじたばたとさわぎだすと、エミルはハッとひらめきました。


「ううん、手がかりならあるよ」


「ほんとに!?」


 エイルたちは、くるっとエミルのほうをふりむきます。


「きのう、お姉ちゃんが、ダルベールさんの依頼を手伝った場所だよ」


「あそこが?」


 エイルは首をかしげました。


「だって、ダルベールさんは、お姉ちゃんにわざわざメッセージを残したんだよ。だったら、お姉ちゃんといっしょに行った場所が関係してるっていうのは、じゅうぶん考えられると思う」


 妹の推理を聞いて、ぴーんときたエイルは、さっそくシロに声をかけました。


「だってさ、シロ! まずはきのうの、【ストーンザウルス】の巣に向かおう!」


『ワンッ!』


 シロもすっかり元気をとりもどし、ストーンザウルスのすみかの洞穴へ、たったっと駆け出しました。


 ……が、そこにいたのは、体じゅうの石をごっそり取られたまま、ふて寝しているストーンザウルスだけ。手がかりらしいものは、なにも見つかりませんでした。


 そこで一行は、すぐにもうひとつの依頼の場所へと向かうことになりました……



 ☆ ☆ ☆



 そして、たどりついたのは……


『うっ……』


 シュガーは顔を青くして、うっと眉をひそめました。


 ここは、きのうエイルがダルベールといっしょに、【マッドマン】狩りに来た湿地帯です。


 マッドマンは、きのうエイルがほとんど倒してしまったばかりなので、すがたを見かけることはありませんでした。けれど、あっちこっちドロだらけで、清潔でまっしろずくめのシュガーにとっては、地獄のような場所でしょう。


『シロンも、どろんこはきらーい……』


 白いドラゴンの子どもシロンも、おなじ気持ちのようです。子どもっぽく見えて、じつはきれい好きなのです。


 見かねたエミルは、ふたりをいったん指輪の中にもどしてあげました。


 かわりに守り役として、【ダークエルフプリンセス】のシルヴィアを呼び出します。彼女もかなりのきれい好きですが、自然豊かな森育ちなので、どろんこはそれなりに平気なのです。さらりとゆれる銀の髪、つやめく褐色の肌、すらりとのびた長い手足……ドロの大地の中でも、その美しさにはまるでかげりがなく、ひときわ目を引きます。


「シロ様は、ドロも平気そうですね」


 クリスティーヌは、乗っているシロの毛皮を見下ろしながら言いました。


「シロはちっちゃいころから、よくお姉ちゃんとドロまみれになってたからね」


 エミルは、むかしをなつかしむように、シロの毛並みをなでました。


「さあシロ、ダルベールのパートナーはどこ?」


『ワンッ!』


 エイルの指示で、シロはあたりをきょろきょろと見まわすと、ダッと駆け出し、その先で、すぐに見つけました。


 全身ドロまみれで、ひとりさみしそうに座りこんでいる、緑色の小鬼を……


「あの子が、そうなの? でも、ふつうのゴブリンに見えるけど……」


 エミルは、おかしいな、と思いました。話に聞いていたのは、【パワードゴブリン】……筋肉ムキムキの、大きなゴブリンだったはずです。


 ですが、シロが見つけたのは、どこにでもいるような、人間の子どもくらいの大きさの、ふつうのゴブリンでした。


「おーい!」


 エイルが呼びかけると、ゴブリンはこちらに気づき、立ち上がりました。


『ゴッ! ゴッゴッ!』


 そして、なにかを伝えたいのか、うったえるように声をあげるのですが……


『うう……なにを言っているのか、わかりません!』


 エルフのシルヴィアもお手上げのようです。けれど、美しい銀髪をゆらして頭をかかえ、おろおろする姿は、なんともかわいらしいものでした。


 それなら……と、エミルは指輪から、シロンを呼び出しました。


「シロン、この子の通訳をおねがい!」


『そーゆーことなら、しょーがないな!』


 言いながらも、シロンはたよりにされて、ちょっぴり誇らしげです。


 シロンは、ちっちゃくて幼くてもドラゴン。知能が高く、あらゆるワンダーの言葉がわかるのです。さっきも、シロの言葉を通訳していましたしね。


『えーと……まってた。エイル、くるの、まってた』


「私を?」


 エイルは、きょとんとして自分を指さしました。


 この言い方……聞いていた姿とはちがいますが、やっぱりこのゴブリンこそが、さがしていたダルベールのパートナーのようです。


『ダルベール、いった。キズナ、きれたら、ここでまってる。きめてた』


「絆が切れたら、か……」


 エミルは、また考えこみました。


 自分が死んだときのメッセージを残していたことといい、まるでダルベールは、自分が死ぬことを予期していたみたいです。悪の組織をひそかに追っていたのなら、当然の用意かもしれませんが……なんだか、言いようのないもやもやが、胸の奥にのこりました。


『ですが、どうしてこんな、ドロだらけの場所に?』


 きれい好きのシルヴィアが、すっと通った鼻すじの美しい顔を、少しだけしかめてたずねました。


『ここ、マッドマン、よくでる。ニンゲン、あんまりこない』


「たしかに……じめじめしてるし、あんまり来たくない場所ではあるよね……」


 エミルたちは、パートナーたちの加護や、いままでの冒険で授かった祝福のおかげで、どんな環境にもある程度なじめる状態です。けれど、じめじめを不快に思う気持ちまでは、なくならないようでした。


『それに、ニオイも、けはいも、おわれること、ない』


 実際、シロもにおいをたどることはできないようでした。このゴブリンを見つけられたのも、湿地帯に来て、近くに生きものの気配を感じとったからにすぎません。


「ねえ、ダルベールを殺したのはだれ? ダルベールは、なにを調べてたの?」


 エイルは、ずばっと本題に入りました。


 すると、ゴブリンは頭をぎゅっとかかえ、苦しみはじめます。


『わ、わからない……おもいだせない……おもいだしたく、ない……』


「む、むりしなくていいよ!」


 エミルが、あわてて声をあげました。


『きがついたら、ダルベール、しんでた。おれも、ちぢんでた。わけがわからなかったけど、ダルベールとのやくそくだけ、おぼえてた。だから、ここでまってた、エイルのこと』


 ゴブリンは、ぽろぽろと涙を流しながら、エイルにたのみました。


『ダルベール、いってた。エイルなら、きっとなんとかしてくれるって。たのむ、エイル、なんとか、してほしい』


「……」


 エミルたちは、なんだかせつなくなりました。


 パートナーを失った悲しみは、はかりしれないものでしょう。なのに、こうしてけなげに約束を果たしているゴブリンの姿に、こみあげてくるものがあります。


 だからこそ……エイルは、迷いなく、きっぱりと言いました。


「まかせろ!」


 そのたのもしいひとことを聞いて、ゴブリンは、ほっとしたようにほほえみます。


 そして気がぬけたのか、そのままドロの上で、すうっと眠りについてしまいました。


『このこ、かわいそう……』


 通訳を終えたシロンは、金色の瞳をうるうるさせます。


『ええ……かならずや、カタキを討ってみせましょう、エミル様!』


 シルヴィアも、宝石のようなオレンジの瞳を涙ぐませ、ずずっと鼻をすすりました。そして、エミルに熱いまなざしを向けます。


 しかし……エミルのほうは、浮かない顔をしていました。


「うん……わたしも、そうしてあげたいと思ってるよ。でも……ダルベールさんのパートナーは見つけたけど、事件の手がかりは、けっきょくつかめなかったからなあ……」


『あっ……』


 シロンとシルヴィアは、目を丸くしました。


 そうです。こんなドロまみれの場所まで来たというのに、ゴブリンは事件当時の記憶を失っており、手がかりは、またしてもゼロのまま。ふたりは、思わずげんなりしてしまいました。


「うーん、ゴブリン(こいつ)の頭の中がのぞければいいんだけどねえ」


 エイルは、ぼやくように言いました。


 そんなことができたら、苦労はしません。他人の記憶をのぞき見することなんて、できるはずが……


「……あっ」


 クリスティーヌが、思わず小さく声をあげました。


『どうしたの、クリちゃん?』


 シロンをはじめ、みんなの視線が、クリスティーヌにあつまります。シルヴィアだけは、あいかわらず、対抗心むきだしでじろりとにらんでいますけれど……きりりとした目つきのむくれた横顔は、どこか愛らしく見えます。


「い、いえ……なんでもありません」


 クリスティーヌは、苦笑いしながら首をふりました。まるで、なにかをごまかしているみたいです。


『なんでもなくは、ないでしょう!』


 シルヴィアはここぞとばかりに、銀髪をさらりとなびかせて、ずいっとつめよります。


 エミルはシルヴィアをなだめながら、クリスティーヌにたずねました。


「クリスティーヌさん。なにか心当たりがあるなら、言ってほしいな。お姉ちゃんは……ううん、わたしたちは、前に進みたいの」


 その真剣な顔つきに、クリスティーヌはハッと目をみはり、きゅっとくちびるをむすびます。


 エミルのりりしい横顔に、シルヴィアもどきりとして、ほほをぽっと染め、胸をきゅんと高鳴らせました。


「クリちゃん、私からもたのむよ」


 エイルまで、いっしょになって身を乗り出します。


 みんなに見つめられ、クリスティーヌは観念したように口を開きました。


「……わかりました。ですが、その前に……」


「その前に?」


 エミルは、ごくりと息をのみます。


「……一度、王都に戻りませんか? わたしも正直……こういう場所は得意ではないので……あはは……」


 きまり悪そうに笑うクリスティーヌのひとことで、エイルたちは、へなへなと気がぬけてしまいました。


『それは、シロンもさんせい!』


 シロンは、ぴっと小さな手をあげました。


『めずらしく、意見が合いましたね!』


 シルヴィアも、つんと澄ました美しい顔で、ふんっと鼻を鳴らします。


「よーしシロ、こいつを連れて、王都へ帰ろう!」


『ワンッ!』


 エイルは、眠っているゴブリンを小脇にかかえてシロの背に乗り、みんなといっしょに、王都へと引き返すのでした……



お読みいただき、ありがとうございました。

このおはなしがおもしろい、つづきが気になると思っていただけたら、 ブックマーク登録や下↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価していただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。