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【完結】灰人と無魂の魔女 〜魔導士最強の男は魔法のすべてを奪われた〜  作者: くれは
最終章 白の魔女

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第76話 重なる想い

 ネフリティスごと引き金を引いた魔弾は霊体をすり抜けて、白の魔女へ命中する。相手は領域支配によってサフィールよりも速く動けるはずなのに……。


「――魔弾の弾速が上がってる……?」


 いつの間にか以前と同じく青白く輝いて変形していた魔導銃から放たれた魔弾は光の速度で届いていた。


 ネフリティスと白の魔女の心臓部は同じ位置。一瞬体をこわばらせたネフリティスだったが、魔弾は物体と捉えず、魔力の内臓で唯一輝いていた心臓部の魔石(コア)に撃ち込まれた直後。ピシピシと音を立てた極大魔法は――一瞬にして氷の華を咲かせた。


「……極大魔法、絶対零華アプゾルーテ・ブルーメ


 満開な氷の華が咲き、氷漬けになった白の魔女は氷像のようで、月明かりに照らされて輝いて見える。

 そして、同時に心臓部の魔石(コア)が音を立てて砕け散った。


「……あ、サフィール! 魔石(コア)が灰になって消えて……」

『――漸く、魔女の呪い(魔法)から解放された』


 灰になって暗闇へ消えていく魔石(コア)と共に聞こえてくる音は優しく、白の魔女から発せられた声とは別物だった。


 すると、少しずつ体が砕けて灰になる白の魔女の前へ光り輝く人影が現れる。


「次から次へとなんなんだよ……」


 人影は少しずつ形作られていき、線の細い優男に変わった。しかし、これも肉体ではなく〝魔法〟だ。それも、とても古い――。


「――俺は、知識の書……だった男だ。これはすべて過去の遺言。魔法で吹き込まれた彼女の言葉だ」


 魔力生命樹(マギア・リラフト)に消滅させられた知識の書は、謎だらけだった。しかし、生きながらえた中で一番古い魔女は七百年の青の魔女……。白の魔女が死んだことで姿を現したのなら、辻褄が合わない。


「……ギーア、さん……じゃない⁉ ほら、あの手記!」


 この男がギーア・ルジストルなら、さらに辻褄が合わなくなる。


「……知識の書が一つとは限らないか……」


 その直後、再び輝きが周囲を覆うとサフィールたちを囲うように知識の書が現れた。

 そして、欠けた部分に優男が連なる。魔力生命樹(マギア・リラフト)から生み出された歴史の書。優男は白の魔女が消えるさまを最後まで見届けることなく光の中に溶けていった。

 魔女の体は、〝ただの器〟に過ぎない……。


 力が抜けたように意識を奪われていたサフィールは、背後の音で勢い良く振り返る。

 そこに立っていたのは気を失っていたニルだった。


「……灰色じゃないと人類は魔女に勝てなかった。黒で描かれる魔女と、白で描かれる人間……」

「え……急に謎解きか?」

「それって、船でも見た絵のこと……? そんなことより、体は大丈夫なの⁉」


 相変わらず意思疎通出来る二人を見て、戦いが終わったことを感じ取る。

 ニルの描いた絵はこの未来を予感していたのだろうか……。

 

「……俺は白だけど、生きたまま魔女にされたから灰色の人間、()()ってわけか」


 白の魔女によって半壊した街に複数の足音が聞こえてくる。避難が完了した魔導隊だと察したサフィールは場所を移動しようとしたときだった。


 再び、体に異変が起きて足を止める。力が抜けたとかではなく、重い枷の外れた感覚だった。


 首から足までがんじがらめになっていた鎖のような枷が外れていくような……。それと同時に、大きな魔力(ちから)が失われていく感覚も。


 そして、最後に白の魔女の美しい顔が崩れていく刹那。

 最後に残ったのは両頬まで侵蝕された紋飾護印(まもりいん)

 思わず手を伸ばしていたサフィールは、他の魔女でも感じたときと同じく意識を持っていかれた。


「うっ……また、魔女の記憶か……?」

「えっ……? どういうこと?」


 とても聞き馴染みのある声に目を見張るサフィールの横で困惑するネフリティスの姿がある。


 しかし、それ以外は白くて何も見えない。

 動揺を隠せないサフィールは霧が晴れたように見えてきた巨大な木で言葉を失った。


 水晶のように透明で、美しい大樹。二人はそれだけで直感した。


「……魔力生命樹(マギア・リラフト)


 その姿はまさに知識の書と同じく、此処が魔法界であったなら対面側の景色を映すだろう。


 そして、明らかに人とは違う声が頭の中で響いてきた。


『――愚かでいて、幼い人の子よ……魔法界の母である魔力生命樹(マギア・リラフト)に盾突いたこと、万死に値する』


 敵意むき出しの言葉に戦闘態勢を取るサフィールと反対に混乱したネフリティスが周りを飛び回る。


「なっ……この世界で戦えるのか?」

「嘘! どうしよー⁉」


 しかし、魔力生命樹(マギア・リラフト)は葉の一枚さえ動かさず鎮座していた。


『――同時に、感服した』


 サフィールたちの動きにも注視することない言葉で、王者の風格を見せてくる。魔法界で国王などという上に立つ存在はいない。

 きっと魔力生命樹(マギア・リラフト)の影響力だろう。あとから魔法界へやってきた〝人間〟も馬鹿ではなかったということ――。


 そのあとも魔力生命樹(マギア・リラフト)の演説に近い歴史の話を聞かされた二人は沈黙する。


「……すべては魔力生命樹(マギア・リラフト)による間引き……。魔力を持たない人間と交わることを選んだ代償か」

「だけど! そうしないと、人間は滅んでたんでしょ?」

「いや、滅ぶほど少なくはないはずだ……元々魔力を持った人間が生まれたのも、魔法界から魔力が流れ込んできたのが原因らしいからな」


 知らなかった過去の歴史を知り、魔力生命樹(マギア・リラフト)に認められたのだと分かった。


 ――そう。これは、魔力生命樹(マギア・リラフト)の温情による終結宣言だ。

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