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【完結】灰人と無魂の魔女 〜魔導士最強の男は魔法のすべてを奪われた〜  作者: くれは
最終章 白の魔女

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第75話 希望の光

 サフィールは広範囲の魔法を使ったことがなかった。無数の白い花はインフィニート全域を覆っていて街全体を守れないと焦っていたサフィールも、こちらへ突っ込んでくる大きな物体に気づく。

 そして、勢い余って白の魔女に突っ込んで停止したのは魔導飛空艇だった。


「救世主は遅れてやってくるってなァ? ――黒霧の息吹(ウルティムス・カリゴ)


 その中から颯爽と姿を見せたニルによる上級範囲魔法。黒い霧状の魔力が街全域を覆っていった。

 魔女の魔法は一般の魔法で相殺出来ない。それを分かった上で、ニルがサフィールを見る。


「サフィール! オレの魔法を書き換えろ」

「え……はは、難しい要望を言うのが救世主かよ――奪変矜持(ステールン)


 ニルの魔法をサフィールが書き換えて奪い取り、発動させた。互いに勢いよく放たれる魔法は相殺し合って爆発音と白い煙で周囲を覆い隠す。


 上空から駆け寄るサフィールはニルの姿に辺りを見回した。


「ニル、グランツは?」

「ああ……魔力は無限じゃないってことを、魔力生命樹(せかいさま)に教えてやったんだよ」

「どうにか戦闘不能にしたわけか……」


 フロワは監視として残ったらしい。元々、相棒だから当然だろう。

 心配事が一つ解決したことで、残るは本当に白の魔女を倒すことだけ。


「魔女にとっても視界不良は効果的かもしれない。サフィール、もう一発喰らわせてやれ」

「はぁ……簡単に言ってくれるよな」


 それでも、一人で戦っていたときよりニルが来てくれたことで精神的な余裕も生まれていた。

 魔力を感じられる喜びと発動可能な魔法に、自然と口角が上がりながら視界不良の中を駆け出す。

 厄災である魔女も魔力を感じ取って目標を定めているかは分からない。町には人間がいると理解して無差別に狙っているからだ。いや、理解ではなく……組み込まれた情報にすぎないのかもしれない。


 しかし、駆け出した音を捉えているのか再び魔女の追撃が始まった。


「……すべてを破壊する魔法も厄介だ」


 白の魔女の魔法は無属性。形あるものは一瞬で失われる最強最悪な魔法だ。

 サフィールが避けた魔法は宙へ飛んでいく。背後の家屋が無くなってきたことで、どこへ飛んでいくか分からない魔法も脅威だ。


 再び空へ舞い上がったサフィールも、今一度魔力を一点集中させる。


「――空間断裂(デストル・エスパシオ)!」


 サフィールの放った魔法は空間を歪め、空へ亀裂を走らせながら一直線に白の魔女を貫いた。そして、白い何かが横へ飛ぶ。


「ひっ……! 魔女の腕……」


 背後からネフリティスの悲鳴が聞こえてきた。白の魔女も反応していたようで、サフィールの魔法に撃ち負けた。

 腕がなくなっても無反応の魔女だったが、顔だけにあった模様は細い首まで侵食していく。


 そして、白の魔女にさらなる異変が生じた――。


「なっ……まさか、もう第三形態……」


 ピシッと音が聞こえた直後。白の魔女の肩から下にかけて亀裂が走る。脱皮するように、ひび割れていく白の魔女の体が透けていき、同時に腕も再生する。

 臓器まで見えるほど透明化した姿は、人間の臓器がなく、すべて魔力で隙間なく埋められていた。

 青黒く輝く心臓部の魔石(コア)、一つを除いて――。


 第三形態は色々な変化を及ぼすが、その姿は他の魔女よりも美しく、同時に最も不気味だった。


 驚きで反応が遅れたサフィールは空間が歪むのを感じた。これは、サフィールが魔女にされた夜……。一度だけ体験した感覚と同じだった。


「――〝魔女の領域支配〟……」


 サフィールの体が横へ突き飛ばされた瞬間、肉眼で捉えきれない速さの閃光は肉体を貫き、赤い鮮血が(ほとばし)る。


「カハッ……オレは不老不死だからな。まぁ、痛みはあるんだけど……」


 気が狂うほどの痛みで吐血したニルはそのまま地面へ倒れた。生命視(ほしみ)によって、動けたのだろうニルの思いがけない行動で動揺するサフィールの正面へ、美しくも狂気的な肢体が現れる。


「なっ……お前も、空間移動するのか」


 今度こそ避けられない距離でサフィールの心臓部へ手を伸ばす白の魔女との間に割り込む影があった。

 

「ダメェェェ‼」


 両手を大きく開くネフリティスの後ろ姿で目を見開くサフィールは、言葉を発しようとして動かない魔女に気づく。

 まるでネフリティスの声に反応したかのような沈黙だ。


 今までサフィールが放ってきたのは上級魔法だった。極大魔法は時間がかかってすぐに放てない。それを分かった上で、ネフリティスが叫ぶ。


「魔導銃で、わたしごと撃って!」

「なっ……そんなこと」


 ――出来るはずがない。


 混乱するサフィールより先に動いたのは気絶していたはずのニルだった。


「ハァ……オレたちの相棒は、優しいなァ……」


 風穴は塞がり白い肌が見えている状態。仰向けで倒れたまま、懐から小さいモノを投げられる。反応して受け止めるサフィールの手には黒い魔弾があった。


「それには、極大魔法を付与してある……」

「――サフィール! 迷わないで!」


 焦りによる冷や汗が頬を伝う中、魔弾を魔導銃(相棒)に触れさせて装填する。


 同時に動き出した白の魔女へ、魔弾が静かに放たれた――。

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