5 絆が呼ぶもの
精霊たちの弱い声が、結界の空間に滲むように広がっていく。
「……助けて……」
その声を聞いた瞬間、ステラの胸の奥で、何かが強く脈打った。
まるで、忘れていた鼓動を思い出したみたいに。
ゼフも同じだった。
風が、今までよりずっと荒々しく、でもどこか優しく渦を巻く。
「ステラ……この感じ……」
「うん……分かる。
精霊たちの声が、直接……胸に響いてくる……」
二人の間に、淡い光が生まれる。
それは魔法陣の光とも、精霊の光とも違う、もっと深いところから滲み出るような輝きだった。
絆の契約が、静かに、しかし確実に共鳴し始める。
空間が、ぎし、と軋む。
床に刻まれた魔術式が、悲鳴を上げるように明滅し、天井の結界が波打つ。
「……っ」
アルドラが初めて、わずかに表情を変えた。
「空間そのものが震えている……。
やはり、通常の契約とは格が違うか」
ステラは、鎖に縛られた精霊へと手を伸ばす。
「大丈夫……。今から助けるから……!」
ゼフの風が、彼女の手を包む。
風と光が絡み合い、共鳴し、爆発的に魔力が膨れ上がる。
結界の外、はるか上空。
城の高い塔のバルコニーに、一人の男が立っていた。
海の風に銀髪を揺らし、遠く地下の魔力のうねりを見下ろしている。
シリウスだった。
「……やはり、あの力は危険だ」
低く、静かな声。
恐れと、同時に、確信を含んだ声音。
「世界を統べるには、あまりにも自由すぎる……」
再び地下。
鎖が、きしきしと音を立て始める。
精霊たちの魔力が、ステラとゼフの共鳴に引き寄せられるように震えている。
アルドラは、薄く笑った。
「やはり……記憶の封印は不完全だったか」
冷たい声で、しかしどこか楽しげに。
「絆で結ばれた契約は、封印をしただけでは縛れない。
魂そのものが、互いを呼び合っているということか……」
彼は二人を見つめる。
「いいだろう。
その力が、どこまで世界に届くのか見せてもらおう」
鎖が、今にも砕けそうな音を立てて、震え続けていた。




