↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
穏やかな王と潜む支配
PR
82/113

11 平和の裏で

王城の最奥。

分厚い結界に守られている、誰の立ち入りも許されない部屋の中。


床一面に広がる巨大な魔方陣の中心には、黒い魔力が脈打つように流れていた。

術式が鎖のような形をとって空間に浮かび、精霊の力を縛り、集め、制御するための準備が着々と進められている。


その前に立つのは、銀髪の王、シリウス。

何もせず、ただ静かに術式を見つめていた。

その背後で、影が揺らいだ。


「シリウス。2人の記憶の封印が、揺らぎ始めている」


黒い霧から現れたアルドラが淡々と告げる。


「先ほどの地下での接触で、ステラは過去の断片を見ているような行動をしていた。

 完全ではないが、あの契約の真実と我々の計画の存在に勘づき始めているだろうな」


アルドラの報告を聞いても、シリウスは表情を変えない。


「想定内だ。絆の契約は、完全に縛ることはできない。

 微弱でも、共鳴が長く続けば封印は弱まり、いずれは思い出す」


「思い出した時は、どうする?」


アルドラの問いに、ずっと魔術式を見ていたシリウスはゆっくりを視線を上げた。


「……だからこそ、次の段階に進む。

 世界を統一するための魔術は、もう後戻りできないところまで来ている」


その言葉に反応するように、黒い魔力が脈打つように動く。


「精霊も人も、秩序の中に置く。

 あの絆の共鳴が完全に目覚める前に」


アルドラは静かにうなずいた。


「では、準備を始めよう。次は……より大規模な実験を」


2人の足元で、魔方陣が暗く輝く。


同じ空の下。


ファラサの港は、穏やかな潮風に包まれていた。

青い海、白い帆船、空を舞うカモメの影。

屋台からは焼き魚の香ばしい匂いが漂い、人と精霊の笑い声が混ざり合っている。


「うおー! この魚、めちゃくちゃうまそうだな!」


リオネルが目を輝かせる横で、ルクスも少し興味を持ったように焼かれている魚を見つめる。

子どもたちがフィリアの魔法で作り出した雪の球を追いかけ、ヴァルカが小さな炎で屋台を手伝い、店主に感謝されて照れている。


そして、少し離れたところでステラは海を眺めていた。


潮騒の音。

暖かな光。

仲間たちのにぎやかな声。


穏やかで平和なはずなのに、胸の奥がかすかにざわつく。


(……何か、大きなことが動いてる、気がする)



理由はわからない。しかし、夢の中で見た銀髪の王と黒衣の魔術師の姿が、頭から離れなかった。

その隣に、ゼフが静かに立つ。


「ステラ。無理をしなくていい。今は、ゆっくり休もう」


こちらを見つめる翡翠色の瞳は、いつも通り優しい。

でも、どこか遠くを警戒するようでもあった。


港の上空を、風が吹き抜ける。

平和な声と光の中で、誰も気づくことはない。


ゆっくりと、しかし着実に。

世界を縛るための計画が進められていることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。