↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
穏やかな王と潜む支配
PR
81/113

10 記憶の断片

アルドラの姿が、黒い霧に溶けるように消えて少したってから。


張り詰めていた空気が一気にほどけて、ステラの膝から力が抜ける。

ゼフが名前を呼ぶ声が、遠くで響いた気がした。


「ステラ!」


次の瞬間、視界が白く弾けて——


白い石の床。高い天井。どこか神殿のような場所。

その中央に、二つの影が並んで立っていた。


一人は、王の装束をまとった銀髪の男。

もう一人は、黒い外套の魔導師。


声が聞こえる。けれど、ノイズが入っていて、途切れ途切れにしか聞こえない。


『精霊を……管理し……ば、世界は……』


『あの契約は……危険だ……共鳴が……』


『絆が……強くなりすぎれば……世界の均衡が……』


銀髪の男が、静かに言う。


『だから……記憶を……封……』


黒い外套の男がそれに応える。


『……あの二人は……特別だ』


その言葉と同時に、視界の端に、自分自身の姿が映る。

ゼフと横に並び、手を取り合い、強い光に包まれている過去の自分。


そして、アルドラと——シリウス。

二人が並んでこちらを見ている。


「……っ……」


胸の奥が、締め付けられるように痛んだ。


*


「――ステラ!!」


はっと目を開けると、天井の木目が見えた。

見慣れた宿の部屋。ファラサの、あの宿だ。


すぐそばにゼフがいて、翡翠色の瞳が不安そうに揺れている。


「……起きた……」


その声に、周りが一斉に動く。


「おい、大丈夫か!?」とリオネル。

フィリアがそっと額に手を当てて、「熱はないわね……」と安心したように息をつく。

ルクスとヴァルカは珍しく喧嘩せず、黙ってこちらを見ていた。


ステラはゆっくりと身を起こしながら、さっきの夢を思い出す。


白い神殿。

並んで立つ、シリウスとアルドラ。

そして——


「……計画……」


無意識に、そう呟いていた。


ゼフの表情がわずかに強張る。


「……何か、思い出したのか?」


ステラは首を振る。


「全部じゃない。でも……あの二人が一緒にいて、何か……世界のことを話してた。

 精霊と、契約と……それから……私たちのことも……」


言葉にするほど、胸の奥がざわつく。


自分は、確かに知っていた。

シリウスとアルドラの計画を。

でも、それを思い出そうとすると、まだ霧がかかっている。


ゼフは何も言わず、ただそっと、ステラのそばに座り直した。


「……無理しなくていい。思い出す時は、きっと来る」


その声は優しかったけど、どこか覚悟の色を帯びていた。


ステラは小さくうなずき、窓の外を見る。

海風に揺れるファラサの街は、いつもと変わらず穏やかだ。


でも、その裏で——

世界を縛ろうとする計画が、静かに動き続けている。


そして、自分とゼフは、その鍵であることだけは、はっきりと感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。