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風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
穏やかな王と潜む支配
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8 王国に潜むもの

城での食事は、豪華だった。


白い大理石の床に、海の色を思わせる青い装飾。高い天井から吊るされた水晶のシャンデリアが、ゆっくりと光を揺らしている。楽団の柔らかな音色が流れ、長いテーブルには海の幸などが使われた色とりどりの料理が並んでいた。


シリウスは玉座の前に立ち、穏やかな笑みを浮かべてステラたちを迎える。


「ネレイス王国を救ってくれたこと、心から感謝する。

 君たちのような力ある旅人は、この国にとって希望だ」


丁寧で、親切。そして、礼儀正しい。

でも、その言葉の端々に、どこか冷たい響きが混じっているように、ステラは感じていた。


「我が国の魔術師も忙しく、あの魔物の対処ができない状態にあった。

 加えて、強力な力を持っていたことから普通の魔術師では倒せなかった」


「そうだったんですね。あの魔物を倒せて、よかったです」


ステラはシリウスの冷たさを感じつつ、いつも通りに振る舞う。

食事の途中、シリウスはおもむろに話し始めた。


「力というものはね」


シリウスは静かに続ける。


「正しく管理されねばならない。人も、精霊も。

 自由すぎる力は、いずれ秩序を壊す」


その言葉に、ゼフの周りの空気がわずかにざわめいた。

ルクスは眉をひそめ、ヴァルカは露骨に不満そうな顔をする。

フィリアは何も言わないが、周囲の空気がひんやりと冷えている。


歓迎の席が終わり、城の中を案内されている最中だった。

突然、ルクスが立ち止まる。

ルクスに合わせて、案内していた騎士もステラたちも立ち止まる。


「……この流れ、おかしい」


ぽつりとルクスが呟く。


「地下から、変な魔力が流れてきてる。精霊の力なのに……縛られてるみたいだ」


ステラとゼフは顔を見合わせる。

案内の騎士が去った隙に、全員でその魔力の流れを追った。


階段を降り、さらに奥へ。

空気が重くなり、壁に刻まれた結界の紋様が淡く光っている。


辿り着いた先は、巨大な円形の部屋だった。


中心にあったのは、結界の核。

そして——そこに、無数の魔術の鎖で縛られた精霊がいた。


光の精霊、水の精霊、風の精霊……

力を吸い上げられ、苦しそうに震えている。


「……なに、これ……」


ステラは息をのむ。


「結界を維持するために……精霊を、無理やり……」


フィリアの周りの空気が冷たく重くなり、ヴァルカは拳を握りしめる。

ルクスの雷が、怒りに呼応して小さく弾けた。


「助けよう」


ステラは迷いなく言った。


ゆっくりと、縛られた精霊に近づき、手を伸ばす。


その瞬間——


空間が、歪んだ。


黒い霧のような魔力が部屋を満たし、冷たい声が響く。


「感動的だが……実験の邪魔だ」


影の中から、アルドラが姿を現す。


「君たちは本当に、面白い。だが、ここから先は——」


指を鳴らす。


眩い光が走り、リオネル、ヴァルカ、ルクス、フィリア、そして助けようとしていた精霊たちが次々と暗い光に包まれていく。


「なっ——!」


「みんな!」


ステラとゼフが叫ぶが、その声は届かない。


「特別な契約を持つ者だけ、残れ」


次の瞬間、仲間たちの姿は消え、広い地下空間に残されたのは——


ステラとゼフ。


そして、結界の核と、目の前に立つアルドラだけだった。


アルドラは仮面の奥から二人を見つめ、静かに言う。


「さて……。君たちが、どこまで思い出すのか。

 そして、その絆がどこまで世界を揺らすのか——」


その声には、期待と、ぞくりとするほどの興味が滲んでいた。


「見せてもらおう。特別な契約を持つ二人」


地下深く、結界の光と黒い魔力が交錯する中で、ステラとゼフは、逃げ場のない対峙を迎える。

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