6 魔物退治へ
王城の地下深く。
光を遮るように張り巡らされた結界の中で、巨大な魔術陣が静かに脈打っていた。
黒い紋様が床から壁へ、天井へと伸び、中心には歪んだ輝きを放つ結晶。
その周囲を取り囲むように、鎖のような魔力が空間に浮かんでいる。
「……始めよう」
アルドラが淡々と告げる。
結晶が光った瞬間、黒い鎖が一斉に震え、見えない何かへと伸びていった。
それは遠く離れた魔物に絡みつき、活性化させた。
——苦しげな波動が、風に乗って王都へと広がる。
その頃、王都ファラサでは。
港に面した広場で、突然強風が吹き荒れた。
帆が裂け、屋台が倒れ、人々が悲鳴を上げる。
「な、なんだ!? 海の魔物が……!」
海の魔物の動きが急に活発になる。
海面が不自然に波立ち、高波が岸壁を打った。
ステラたちはフィリアに海面を凍らせてもらって魔物に近づいている途中だった。
急に波が高くなったため、ゼフが風を使って散らす。
「ありがとう、ゼフ」
「ああ。だが、これは……?」
魔力の流れから、魔物に術がかかっていることに気づいたゼフ。
「痛みと……命令が、混ざってるな」
ステラは剣を構え、まっすぐに魔物を見つめた。
「無理矢理、動かされてる……」
港で逃げ惑う人々を見て、リオネルが叫んだ。
「おい! このままじゃ街がめちゃくちゃになるぞ!」
同時刻、王城。
兵士が謁見の間へ駆け込む。
「陛下! 海の魔物が街で暴走しています! 港と市街地で被害が――」
だが、シリウスは玉座に腰掛けたまま、表情一つ変えなかった。
「……そうか」
ただ、それだけ。
慌てる様子も、驚く様子もない。
まるで、起こることを最初から知っていたかのように。
その隣で、フードを目深に被った魔術師が静かに口を開く。
「実験は、順調です」
シリウスは目を閉じ、わずかに微笑んだ。
「街は守らねばならない。
だが、あの者たちに任せている。少し、様子を見よう」
兵士は言葉を失う。
精霊が苦しみ、街が混乱しているというのに。
王は、あまりにも冷静だった。
そのころ、街では。
魔物の攻撃に耐え続ける民と、被害を最小限に抑えようとするステラたちの姿があった。




