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風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
穏やかな王と潜む支配
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8 おかしな精霊たち

朝の王城は、海からの光で満ちていた。

高い窓から差し込む淡い青の光が床に広がり、波のように揺れている。


テラスで用意された朝食を前に、ステラは海を見つめていた。

水平線はどこまでも穏やかで、風もやさしい。

それなのに、胸の奥だけが、なぜか落ち着かない。


「……きれい、だけど」


ぽつりと漏らした声は、潮風に溶けた。


ゼフはその横で、城の上空を流れる風の気配を感じ取っていた。


「この国の精霊……静かすぎる。

静かっていうより、抑えられてる感じだ」


そこへ、ルクスが腕を組んで近づいてくる。


「街の風の精霊たち、命令待ちみたいな顔してた。

自分で動く気配が薄い」


「植物の精霊もよ。人に話しかける時、すごく遠慮してる」


フィリアの声は低く、どこか不安げだった。


ヴァルカは舌打ちする。


「従順すぎるのは、支配されてるのと同じだ。

火は、本来もっと自由に揺れる」


一行は朝食を食べた後、城を出て、王都ファラサの街へと向かった。

シリウスから依頼された海の魔物を倒すためだ。

港へ向かいつつ、街の様子を観察する。


港には船が並び、商人たちの呼び声が響く。

表向きは、活気に満ちた平和な都だ。


けれど、精霊たちは人の一歩後ろに控えるように浮かび、視線を合わせようとしなかった。


子どもが小さな風の精霊に話しかける。


「ねえ、今日も一緒に遊べる?」


風の精霊は一瞬ためらい、周囲をうかがってから、静かにうなずいた。


その様子を見たステラの胸が、きゅっと締めつけられる。


——前は、違った。


理由は分からない。

でも、心がそう告げていた。


「……精霊って、こんなに遠慮する存在だっけ」


ゼフは答えず、遠くの王城の塔を見上げた。

その影の中で、誰かが動いている気配を、風が伝えてくる。


港に着くと、沖に黒い何かが動いているのが見えた。

おそらく、あれが海に出現している魔物だろう。

とりあえず、魔物に近づこうとフィリアに海を凍らせてもらうことにした。


場面は変わり、王城の地下深く。


淡い光の結界の向こうで、黒衣の男——アルドラが静かに立っていた。


「記憶の封印……確かに、再び揺らぎ始めている」


冷たい瞳が、遠くにあるステラたちの気配を捉える。


「王よ。

あなたの理想の秩序を揺るがす存在が、すぐそこまで来ているぞ」


その言葉は、まだ誰の耳にも届かない。

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