2 王城からの呼び出し
入国の門をくぐると、街の空気は一気に変わった。
石畳の道は潮で少し白くなり、通り沿いには貝殻やガラス細工を並べた店が並んでいる。
風鈴のような飾りが軒先で揺れて、涼やかな音を立てていた。
「海の街って、音も違うんだな……」
リオネルがきょろきょろしながら感心したように言う。
ルクスは腕を組み、鼻で笑う。
「湿っぽいだけだろ。炎には向かない場所だ」
「は? 喧嘩売ってんのか?」
すぐにヴァルカが噛みつき、フィリアがため息をついた。
「朝から元気ね、あなたたち……」
そのやり取りを少し後ろで聞きながら、ステラは街の上空を見上げていた。
白い雲がゆっくり流れ、その間を縫うように風の精霊たちが飛んでいる。
自由そうで、でもどこか決められた軌道をなぞっているようにも見えた。
「……ゼフ」
小さく呼ぶと、ゼフはすぐに気づいて隣に来る。
「やっぱり、ここ……精霊の流れが不自然な気がする。
みんな、自由に動くことができないみたい」
「ああ。整えられすぎてる。
守られてるとも言えるけど、縛られてるとも言える風だ」
そのときだった。
鎧を着た騎士たちが、通りの向こうからやって来る。
周囲の人々がざわめき、道の端に避けていく。
「旅の方々。少しよろしいでしょうか」
先頭の騎士が、丁寧だがはっきりした声で言った。
「私は、ネレイス王国騎士団団長のキリシャといいます。
ステラ殿とゼフィロス殿。そしてその同行者の方々。
王城より参りました。国王、シリウス様がお呼びです。王城までお越しください」
リオネルが目を丸くする。
「え、俺たち有名人じゃん!」
他の仲間たちも驚いた顔をしている。
そんな中、ゼフは一瞬だけ目を細めた。
「……王城? どうして……」
ステラは少しだけ考えてから、静かにうなずいた。
「分かりました。案内してください」
「かしこまりました」
騎士は頭を下げ、城の方角を示す。
遠くに見える、白く輝く王城。
そこにいる王——シリウス。
まだこの時のステラは知らない。
その人物こそが、自分の記憶と運命に深く関わる存在だということを。




