番外編 ゼフィロス観察日記 byヴァルカ
ある日の朝。
ふとヴァルカは思った。
ゼフィロスは、休日は一人で何をしているのか、と。
リオネルは鍛錬か、街の人の手伝いをしている。
ルクスは寝るか散歩をしている。
フィリアは街の子どもたちと遊んでいる。
ステラは街をぶらぶら歩いている。
でも、ゼフィロスは?
ステラと一緒にいるところはよく見るが、一人でいるところはほぼ見たことがない。
想像もつかない。
どこで、何をしているのか。
そこで、ヴァルカは決めた。
わからないなら、見に行けばいい!
今日はゼフィロスを観察する!
早速、宿から一人で出ていくゼフをこそこそと追いかけていくヴァルカ。
しかし。
「何してるの?」
「うおっ!?」
背後から声をかけられ、縮み上がるヴァルカ。
慌てて振り返ると、ステラ、リオネル、ルクス、フィリアがいた。
ゼフに気づかれたと焦ったが、違った。
よかった、と安心するヴァルカ。
「ゼフィロスの観察だ。あいつが休みの日に一人で何してるか、気になったからな」
「それ、面白そうだな! 俺もやる!」
「⋯⋯ぼくも、気になるかも」
「しょうがないわね、ついて行ってあげるわ。ステラはどうするの?」
「んー⋯⋯。楽しそうだし、私も行くよ」
「よし、決定だな。ゼフィロス観察隊、行くぞ!」
「ヴァルカ、うるさい」
ゼフに気づかれないようにしなければいけないのに、大声を出すヴァルカ。
こんな感じで大丈夫かな、と少し心配するステラだった。
さて。
ヴァルカを筆頭に、隠れつつゼフを尾行していくステラたち。
そんなことに気づいていないだろうゼフは、子どもに頼まれごとをされていた。
「あ、ボールが木に乗っちゃった⋯⋯」
「ねえ、おにいさん! あのボール取って!」
「⋯⋯あの赤いボールか?」
「うん!」
「よっと」
ゼフは上手く風を操り、ボールを自分の近くに引き寄せた。
そして、しゃがんで子どもに渡す。
「もう木に乗せるなよー」
「ありがとう! これ、お礼!」
一人の子どもが手に持っていた花冠をゼフの頭に乗せる。
予想外の出来事に、笑顔のまま固まるゼフ。
一方、ゼフィロス観察隊。
リオネルが小声で言った。
「似合ってるぞ、ゼフ!」
「静かにしなさい」
フィリアに注意される。
ヴァルカは手帳に観察結果を書き込んでいた。
【観察結果1】
子どもに頼まれて木に乗ったボールを取ってあげていた。
優しい。
子どもに花冠を返したゼフは、街を歩きながら人助けをしていた。
近くの積み上げられた荷物が倒れそうになるとすぐに支える。
そして、そのまま荷物運びを手伝い始めた。
お礼として報酬を渡されそうになると断る。
それを見たゼフィロス観察隊。
「かっこいいな、あいつ」
「さすがゼフだね」
と称賛。
それを聞き流しつつ、ヴァルカはまた観察結果を書いていた。
【観察結果2】
倒れそうな荷物を支えて、手伝いをしていた。
すぐに人助けができてすごい。
報酬を断ったゼフは街の中心から離れ、木陰にあるベンチに座った。
「⋯⋯少しだけ」
誰に言うまでもなく呟いて、目を閉じる。
少しすると、かくん、と首が傾いた。
「⋯⋯寝てるのか?」
「うん」
「さすがステラ」
ルクスの問いに答えるステラ。
観察隊の中では一番ゼフと長く過ごしているだけはある、と全員が納得する。
「なんか、少し幼く見えるわね」
「確かに。いつもは真面目な顔をしてることが多いもんなー」
穏やかな顔をしていて、少しあどけない表情をしている。
そんなゼフの様子をヴァルカが観察結果を書こうとすると。
近くの木の枝から、小さな黄色の小鳥が降りてきた。
ベンチの背もたれに止まる。
そして、ぴょんぴょんと移動し、ゼフの肩に乗った。
安心したように羽を整える小鳥。
それを見て、ステラたちは異なる反応をした。
リオネルとヴァルカは叫びそうになり。
それをフィリアとルクスが必死に止める。
ステラはそれを横目に、ゼフを優しい目で見つめてから。
「リオネル、ヴァルカ。静かにして。ゼフが起きる」
口に立てた人差し指を持っていき、声を出さないように注意する。
少し後。
小鳥がふわっと羽を広げて飛び立つ。
その気配でゼフが目を覚ました。
少しぼんやりとした後、ステラたちが隠れている物陰を正確に見る。
「もう出てきたらどうだ? バレてるぞ」
びくっとする観察隊。
リオネルは動けない。
ヴァルカは結果を書く体制のまま固まっている。
ルクスはそっと視線をそらして知らないふりをする。
フィリアは静かに諦め顔をしている。
そんな中。
「おはよう、ゼフ」
物陰から普通に出てくるステラ。
いつも通り軽い足取りでゼフの前まで歩いていく。
ゼフは特に驚くわけでもなく、ステラを見る。
「ステラ。お前も仲間だったのか」
「うん。楽しかったよ」
ゼフはため息を吐き、軽く伸びをする。
「⋯⋯帰るぞ」
立ち上がり、すたすたと歩いていくゼフ。
ステラは少し小走りでゼフに追いつき、隣を歩く。
残りの観察隊のメンバーは慌ててついていく。
小声で話しながら。
「いつから気づいてたんだろうな」
「ゼフィロスのことだし、最初からだろうな」
「気配とか、すぐに察知するものね」
小声で話している三人の隣ではヴァルカが満足そうな表情をしていた。
一方、少し前を歩いているステラとゼフ。
「暇だったのか?」
「それもあるけど、楽しそうだったから」
「そうか」
ゼフが短く返事をすると。
風が吹き、黄色の小鳥が二人の上を通過していく。
それを見たゼフの口元は、わずかに緩んでいた。




