6 共有と覚悟
神殿を出ると、外の光がやけに眩しく感じられた。
森の風が、さっきまでの静寂を溶かすように吹き抜ける。
「……で、何が見えたんだ?」
リオネルが、少し緊張した顔で聞く。
ステラは一瞬だけ言葉に迷ってから、ゆっくりと口を開いた。
「昔……人と精霊が、命令じゃなくて、対等に契約していた時代があったみたい」
ヴァルカが眉をひそめる。
「対等、だと?」
「うん。主従じゃなくて……絆で結ばれる契約」
フィリアは静かに目を閉じる。
「それは……今の契約体系とは、まったく違うわね。
今は、主従関係が当たり前だもの」
ステラは胸元に手を当てる。
「水晶には……私とゼフが、そういう契約を結んでいた映像が残ってた」
リオネルが目を見開く。
「え、じゃあ二人は――昔から一緒だったのか?」
ゼフが代わりに答えた。
「ああ。おそらくな」
「おそらくってなんだよ」
「俺たちは昔、失っているんだ」
その声は低く、重い。
「誰かに……記憶を封じられた。
俺たちの契約のことも、力の意味も」
ルクスが思わず叫ぶ。
「記憶を……!? そんなこと、誰が……」
ステラは首を横に振る。
「たぶん、アルドラだと思う。
みんなのことを暴走させていた人。
……私たちの契約の力を危険だと思った存在がいる」
フィリアが、そっとステラの肩に手を置いた。
「だから、忘れさせられたのね。
思い出せば、また絆が強いままだから」
ヴァルカは思わず出現させてしまっていた炎の揺らぎを少し強める。
「……卑劣だな。力を奪うために、心を奪うとは」
リオネルは拳を握りしめる。
「でもさ、今こうして少しずつ思い出してるってことは……その封印、壊れ始めてるんだよね?」
ステラはうなずいた。
「うん。全部じゃないけど……確かに、戻り始めてる」
ゼフは仲間たちを見回す。
「これから先、俺たちは思い出してはいけない存在を思い出していくことになる。
危険も、きっと増える」
それでも。
ステラは小さく、でもはっきりと微笑んだ。
「……でも、一人じゃない」
その言葉に、リオネルがにっと笑う。
「当たり前だろ。今さら一人で背負わせる気なんてない」
フィリアも、ルクスも、ヴァルカも、静かにうなずいた。
忘れられた過去は、
今、仲間と共有された。
それは、記憶封印に刻まれた最初のひび。
そして、アルドラの計画が破綻し始めたきっかけともなる。




