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風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
水晶の記憶と絆の契約の真実
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5 観測

その頃、はるか遠く。

黒い魔術式が幾重にも重なった地下の間で、ひとりの男がゆっくりと目を細めた。


「……揺らいだな」


アルドラは、空間に浮かぶ黒い結晶に手をかざす。

そこには、細いひびのような光が走っていた。

そのひびは、ステラとゼフに施した記憶の封印が完全ではなくなったことを示していた。


「記憶封印の魔術式が……反応している」


記憶を完全に封じたはずだった。

ステラとゼフの絆の契約の核心。

思い出せば、力が戻る。

だからこそ、思い出せないようにした。


だが今。

その封印が、外から揺さぶられた。


目を閉じ、2人がどこにいるかを探る。

とある街のはずれにある神殿。

そこには、絆の契約について記録されている水晶が保管されている。

その水晶に触れたことで、記憶の封印が不完全になってしまった。


「対等の契約を記した神殿……か」


薄く笑う。


「やはり、あの二人は引き寄せられる運命らしい」


黒い鎖のような魔力が、床を這うように脈動する。

その魔力は、あたりに浮いている魔術式へと注がれていく。

魔力を注がれた魔術式は暗く輝いた。


「完全に思い出される前に……。

 もう一段階、実験を進める必要があるな」


遠くで、風の流れがわずかに乱れた。

アルドラはその違和感を楽しむように目を閉じる。


「ステラ。そして、ゼフィロス。

 希望を取り戻す前に――絶望も与えてやる」


そして、静かに告げた。


「さあ……。

 どこまでその絆が耐えられるか、見せてもらおう。

 特別な契約者たち」


一方、神殿の外。


ステラはまだ、水晶に触れた手の感覚を確かめるように、そっと指を握りしめていた。

胸の奥に残る、あたたかくて、でも少し痛い感覚。


ゼフはその横で、何も言わずに立っている。

ただ、風がわずかに強く吹き、ステラを包むように流れていた。


「……まだ、全部は思い出せないけど」


ステラは小さく息を吸う。


「でも……私とゼフが、ただの旅人と精霊じゃないってことだけは、分かった」


ゼフは静かにうなずく。


「この力を、恐れているやつがいる」


その言葉に、ステラは少しだけ視線を伏せる。


「……アルドラ、だよね」


その名を口にした瞬間。

風が、低く鳴った。

まるで、警戒するように。


物語は、もう後戻りできない場所まで来ていた。

封じられた過去が、少しずつ、確実に目を覚まし始めている。

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