2 いつもと違う朝
朝の光が宿の窓から差し込み、部屋の中をやさしく照らしていた。
そして、いつもは静かな朝も、今日は少し騒がしい。
「よっしゃー! 今日もいい天気だな!」
一番に起きていたリオネルが、勢いよく背伸びをする。
その声に反応して、ルクスの雷がぱちっと小さく弾けた。
「朝からうるさいな。テンション高すぎ」
「はあ? 元気なのはいいことだろ!」
「元気なのとうるさいのは別!」
「二人とも~? 朝から喧嘩しないの」
穏やかな声だけど、有無を言わせない迫力。
空気も凍っている気がする。
フィリアが腕を組んで立っていると、リオネルもルクスも一瞬で大人しくなる。
「……はい」
「……悪かった」
ゼフはその様子を少し離れたところから見て、くすっと小さく笑った。
ヴァルカも苦笑している。
ステラはテーブルの端に座り、湯気の立つカップを両手で包みながら、その光景を静かに眺めている。
騒がしい。
でも、不思議と嫌じゃない。
「なあステラ!」
リオネルがぐっと身を乗り出す。
「昨日の戦い、すごかったよな! 剣振りながら魔法って、どうやってんだ?」
「……慣れ、かな」
短い答えに、リオネルは目を輝かせる。
「かっこいいな! 俺もいつか魔法使えるようになりたいぜ!」
「やめとけ。お前は槍振って突っ込む方が向いてる」
ルクスが皮肉っぽく言うと、
「なんだと!?」
「事実だ」
また火花が散りそうになるのを、フィリアがため息で止める。
「朝ごはん冷めるわよ」
その一言で、全員がはっとして席に着いた。
にぎやかな声。
笑い声。
精霊の気配と、人の温度。
ステラはその輪の中にいながら、ふと胸の奥がきゅっとするのを感じた。
(……前にも、こんな朝があった気がする)
理由は分からない。
誰と、どこで、何をしていたのかも思い出せない。
でも、この空気だけは。
なぜか、とても懐かしかった。
ゼフはそんなステラの横顔を見て、何も言わない。
カーテンが揺れ、朝の光が少しだけ強く差し込んだ。
新しい仲間と、新しい一日。
にぎやかで、少し騒がしくて、でもあたたかい旅が、また始まった。




