表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
従属の鎖と新たな仲間
PR
59/61

9 雷光の支配者

空が、裂ける。


紫電が、地を焼いた。


「……っ!」


ステラとは反対方向。


ゼフの前に立ちはだかるのは——雷の精霊。


その身体には、やはり黒い鎖。


雷が走るたびに、鎖が不気味に脈動している。


「随分と荒れてるな」


ゼフは静かに構える。


「それは、本当のお前じゃないだろ」


次の瞬間。


——轟音。


雷が一直線に落ちた。


無意識にゼフは横へ跳ぶ。


地面が爆ぜる。


遅れて、衝撃が追いつく。


(速いな)


だが。


「悪くない」


わずかに口元が動く。


ゼフの周囲に、空気の流れが生まれる。


風が、研ぎ澄まされていく。


「なら——」


一歩、踏み込む。


雷が再び走る。


今度は、避けない。


「……っ」


ギリギリで身体を捻る。


雷が肩をかすめる。


だがその瞬間。


距離を詰めた。


「捕まえた」


低く呟く。


風が、一気に収束する。


圧縮された空気が刃となり、雷の精霊へと叩き込まれる。


だが——


雷が弾けた。


衝撃が相殺される。


「……無駄だ」


初めて、声が響く。


低く、冷たい声。


「きみ程度では、ぼくを止められない」


ゼフは眉一つ動かさない。


「そうか?」


短く返す。


「お前が思うほど、俺は弱くない」


雷の精霊の瞳が細められる。


次の瞬間。


雷が、爆発的に増幅する。


空間そのものが、歪むような圧力。


「……ちっ」


ゼフが舌打ちする。


雷が、四方から迫る。


回避は不可能。


なら——


「全部、落とす」


風が、爆ぜる。


ゼフを中心に、嵐が生まれる。


雷と風がぶつかり合い、空間が震える。


その中で。


ゼフは、止まらない。


一歩。


また一歩。


強引に、前へ。


「なぜだ」


雷の精霊の声が、わずかに揺れる。


「なぜ、退かない」


雷が強まる。


それでも。


ゼフは進む。


「決まってるだろ」


視線は、まっすぐ。


「止めるためだ」


一瞬。


雷の精霊の動きが、止まる。


「……止める?」


わずかな、間。


その隙を——


ゼフは逃さない。


「お前ごと、な」


風が収束する。


圧倒的な一撃。


だが。


雷の精霊は、笑った。


ほんのわずかに。


皮肉げに。


「随分と乱暴だな」


雷が、迎え撃つ。


激突。


轟音。


だがその奥で。


雷の精霊の視線が、揺れる。


「……あいつらは」


ぽつりと、漏れる声。


「無事か」


その一言。


ほんの一瞬の、本音。


(やっぱりか)


ゼフの目が細められる。


「周りの心配する余裕があるなら」


さらに踏み込む。


「自分の状況を気にしろ」


雷の精霊の身体に絡む黒い鎖。


それが、きしむ。


「……余計なお世話だ」


強がるように、吐き捨てる。


だが。


雷が、わずかに鈍る。


「仲間想いだな」


ゼフが淡々と言う。


「そんな顔してる」


「……っ」


一瞬。


雷の精霊の表情が歪む。


その瞬間。


——バキッ


小さな音。


黒い鎖に、ひびが入る。


「……なに」


雷の精霊が目を見開く。


ゼフは、静かに言う。


「お前は、操られてる」


雷が、揺れる。


「それでも、その程度で揺らぐなら——」


さらに一歩。


「まだ、残ってるんだろ」


まっすぐに、見据える。


「お前の意志が」


沈黙。


次の瞬間。


雷の精霊が、低く笑う。


「……はは」


皮肉げに。


だがどこか、諦めたように。


「面倒なやつだな」


雷が、静かに収まっていく。


「……確かに」


鎖が、軋む。


「こんな形で戦う趣味はない」


そして。


「特に——」


わずかに視線を逸らす。


「仲間を巻き込むのはな」


その瞬間。


——バキンッ!!


黒い鎖が、砕け散った。


雷が、純粋な光へと戻る。


静寂。


雷の精霊は、深く息を吐いた。


「……助けられたな」


ゼフは構えを解く。


「勝手に解けただけだ」


素っ気なく返す。


雷の精霊は小さく笑う。


「可愛げのないやつだ」


そして、視線を向ける。


ステラのいる方向。


「……あっちは?」


「問題ない」


ゼフは即答する。


雷の精霊は、少しだけ安心したように目を細めた。


「そうか」


その表情は、すぐに消える。


いつものクールな顔に戻る。


「……礼は言わないぞ」


「期待してない」


短いやり取り。


だが。


確かに通じたものがあった。


遠くで炎が轟く。


「……残りは炎か」


ゼフが呟く。


雷の精霊が、雷を纏う。


「手伝う」


「好きにしろ」


そして——


二人は同時に、駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ