6 黒き鎖の実験
遺跡を出た瞬間。
「……っ」
ステラが足を止める。
「どうした」
と聞いた後。
ゼフもすぐに気づく。
——空気が、おかしい。
風の流れが、歪んでいる。
本来なら自然に巡るはずの魔力が、
どこかで無理やり歪められているような、不自然さ。
「これ……」
ステラが周囲を見渡す。
「精霊の流れが……変」
その言葉と同時に。
——記憶が、よぎる。
黒い鎖。
苦しむ精霊。
冷たい視線。
過去、同じことがあった。
だからこそ、わかる。
これは、ただの自然現象じゃない。
もっと、歪なもの。
ステラも同じように感じていた。
「……嫌な感じがする」
胸の奥が、ざわつく。
懐かしさとは違う。
これは——
「来る」
ゼフの声と同時に。
空気が裂けた。
熱。
閃光。
冷気。
三つの力が、同時に現れる。
地面が焼け、空気が裂け、霜が広がる。
そこに立っていたのは——
「……精霊?」
ステラが呟く。
「ああ。だが、何かおかしい
魔力が歪みすぎている」
ゼフの言う通り、その姿も、魔力も歪んでいる。
黒い魔力が絡みつき、
瞳は濁り、
本来の輝きを失っている。
「……アルドラか」
ゼフが低く吐き捨てる。
風が、強く吹き荒れる。
ゼフの怒りを表すように。
「ステラ」
短く呼ぶ。
「こいつら……普通じゃない」
「うん」
ステラも、すでに構えていた。
剣を抜く。
その瞳に、迷いはない。
「でも」
一歩、踏み出す。
「助けられるなら、助けたい」
ゼフは一瞬だけ目を見開いて——
すぐに、笑った。
「……言うと思った」
風が、二人を包む。
契約が、静かに共鳴する。
歪められた精霊たちが、咆哮する。
そして——
戦いが、始まった。




