4 対等の契約
遺跡の奥は、広い空間になっていた。
天井は高く、崩れているはずなのに、
中心だけは不自然なほど形を保っている。
その中央に——
円形の魔法陣。
いや。
「……これ」
ステラが、ゆっくりと歩み寄る。
「魔法陣じゃない」
床に刻まれているのは、
少し前に見たものと同じ構造。
でも、規模が違う。
「契約陣……」
ゼフの声が、わずかに低くなる。
その周囲の壁には、
一連の流れを描いた壁画があった。
人と、精霊。
向かい合い、手を取り合っている。
「……普通と違う」
ステラが呟く。
普通の契約は、人が精霊に命令するもの。
ステラとゼフのように、対等な契約はない。
しかし。
この壁画は同じ高さで、手を重ねている。
「……対等な契約」
ゼフが言葉にする。
その瞬間。
ステラの視界が、揺れた。
——ここに、立っている。
今と同じ場所に。
でも、時間が違う。
「……ゼフ」
その声は、今よりも少しだけ強かった。
目の前にいるのは、
今と同じ姿のゼフ。
でも、表情が違う。
少しだけ、迷っている。
「本当にいいのか?」
ゼフの声。
「この契約は……普通じゃない」
ステラは、迷わなかった。
「うん」
即答。
「だからいい」
一歩、前に出る。
「上下じゃなくて、対等でいたい」
風が、強くなる。
「どっちかが従うんじゃなくて、
一緒に進みたい」
手を伸ばす。
「……ゼフと」
静かな言葉。
でも、揺るがない意思。
ゼフは、少しだけ目を伏せてから——
笑った。
「……ほんと、変わってるよな」
でも、その手を取る。
「いいよ」
風が渦を巻く。
契約陣が、光を放つ。
「その代わり、条件がある」
ゼフの声が、少しだけ真剣になる。
「この契約は——
破棄できない」
光が、さらに強くなる。
「どっちかが離れたいと思っても、
終わらせることはできない」
ステラは、少しだけ目を見開いて。
でも、すぐに笑った。
「それでもいい」
迷いはない。
「最初から、そのつもりだから」
風が、応える。
二人の魔力が、重なる。
溶け合うように。
契約が成立した、その瞬間——
爆発するように、力が広がった。
風と魔法が、完全に共鳴する。
今までとは比べ物にならないほどの、力。
——そして。
「っ……!」
ステラは、現実に引き戻された。
息が乱れる。
視界が揺れる。
「ステラ!」
ゼフの声。
今のゼフ。
ステラは、ゆっくりと顔を上げた。
「……思い出した」
はっきりとした声。
「ここで、契約した」
ゼフの表情が、固まる。
そして、もう一つ。
「この契約……」
自分の胸元に手を当てる。
「解くことができない」
ゼフは、何も言えなかった。
言えない、じゃない。
——知っていた。
でも。
(思い出すの、早すぎるだろ……)
焦りが、胸を締め付ける。
遺跡の空気が、わずかに変わる。
今までの、少し重い空気から柔らかくなる。
まるで。
「……歓迎してるみたいだな」
ゼフが苦く笑う。
忘れられていた契約が、
再び認識されたことを。
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結構今更なんですけど、Xはじめました!
キャラの設定とかを少しずつ投稿する予定なので、気になった人は覗いてみてください〜




