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風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
従属の鎖と新たな仲間
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1 記憶の兆し

リューミアを出て、数日。


空を離れた旅路は、どこか現実味を帯びていた。

足元はしっかりとした大地で、風もどこか穏やかだ。


それでも。


「……」


ステラは、ふと足を止めた。


前を歩いていたゼフが気づいて振り返る。


「どうした?」


「……なんでもない」


そう答えるまでに、ほんの少し間があった。


ゼフはそれ以上は聞かず、

ただ歩く速度を少し落とす。


並んで歩けるように。


風が、二人の間をすり抜ける。


穏やかな、ただの風。

——のはずなのに。


ステラは小さく眉を寄せた。


(……今の)


一瞬だけ。


懐かしいような感覚が、胸をかすめた。


理由は分からない。

でも、確かに知っている何かだった。


「……ゼフ」


ぽつりと、名前を呼ぶ。


「ん?」


「最近、夢を見る」


ゼフの足が、わずかに止まりかける。


けれどすぐに、何事もなかったように歩き続けた。


「どんな?」


できるだけ自然に聞く。


ステラは少しだけ視線を落とした。


「森」


短い言葉。


「夜で、静かで……

 でも、怖くはない」


ゆっくりと言葉を探すように続ける。


「狼が出てきて、

 怪我してて……」


そこで、少しだけ迷う。


「……助けてた、気がする」


ゼフの表情が、一瞬だけ固まった。


風が、ぴたりと止まる。


「気がする?」


「うん。はっきりとは覚えてない」


ステラは首を横に振る。


「でも、知ってる感じがする

 その時のことも、そのあと何があったかも」


言葉にしながら、自分でも不思議そうだった。


「夢なのに、

 実際にあったことを思い出してるみたいな……」


沈黙が落ちる。


ゼフは前を見たまま、何も言わない。


ただ。


その手は、ほんのわずかに握られていた。


(……やっぱり、思い出し始めてる)


アルドラの言葉が、頭をよぎる。


「思い出したら、教えてくれ」


大丈夫。

思い出しても、今度こそ、必ず――


「……ゼフ?」


ステラが、少し不思議そうに顔を覗き込む。


「あ、いや」


ゼフは軽く笑った。


「いい夢だと思ってた。誰かを助ける夢」


あえて、軽く言う。


ステラは少しだけ考えてから、頷いた。


「……そうかも」


完全には納得していない顔。


でも、それ以上は追及しない。


風が、またゆっくりと流れ始める。


しばらく歩くと、視界が開けた。


小さな丘の上。


その向こうに、古びた石造りの建造物が見える。


「……あれ」


ステラが目を細める。


ゼフも足を止めた。


「遺跡……か?」


地図には載っていなかった場所。


人の気配はない。

けれど。


「……風が、変だ」


ゼフが低く呟く。


ただ流れているんじゃない。

何かに引かれているような、不自然な動き。


ステラは無意識に、一歩踏み出していた。


理由は分からない。


でも。


(……行かないと)


そう思った。


ゼフはその背中を見る。


止めるべきか、一瞬だけ迷って。


——やめた。


「……行くんだろ」


ステラは振り返らずに、頷く。


「うん」


短い返事。


それだけで十分だった。


二人は並んで、遺跡へと向かう。


その場所が——


ただの偶然ではないと、

まだ知らないまま。


風は、静かに吹いていた。


まるで。


何かを思い出させるように。

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