9 共に進む力
路の奥。
光の罠が、容赦なく襲いかかる。
――ヒュンッ! ヒュンッ!!
四方から飛び交う魔力の刃。
そして、元から存在する罠によって足場は歪み、進む方向すら狂わされる。
だが――
「右!」
ゼフの声。
同時に、風が渦を巻く。
飛来する光の軌道が、わずかに逸れる。
「……今!」
ステラが踏み込む。
すり抜けるように前へ進み、魔力の流れの隙間を抜ける。
「こっち! 流れ、変えるよ!」
レーカが叫ぶ。
風が一気に広がり、通路の空気そのものを書き換える。
迷わせる罠の方向感覚が、わずかに正常に戻る。
「道、わかるようにするね!」
サウラがふわりと広がる。
白い霧のように広がった体が、空間の歪みを映し出す。
「……なるほど」
ゼフが小さく笑う。
「見えない罠を、見える形にしてるのか」
「進むよ」
ステラの一言。
迷いはない。
罠がさらに変化する。
床が消え、虚空が口を開く。
「っ!」
ステラが落ちかけた瞬間――
「任せて!」
サウラが一気に膨らむ。
ふわり、と足元に雲の足場が生まれる。
ステラはそこを蹴り、再び前へ。
その直後。
――ドォンッ!!
壁から光の槍が突き出す。
ゼフが手を振る。
「遅い」
風が槍を弾き、軌道を変える。
そのまま壁へと叩き返す。
「まだ来るよ!」
「でも負けない!」
レーカとサウラの声が重なる。
精霊たちも、もう逃げていない。
戦っている。
「……いい連携だね」
ゼフが軽く言う。
ステラは短く答える。
「……うん」
その声には、確かな信頼があった。
やがて――
通路の先に、重い扉が見えてくる。
淡い光が、その隙間から漏れていた。
「……あれが」
「魔術式の中枢だろうな」
その時。
――ピタリ。
罠が、止まった。
不自然なほどに、静寂が訪れる。
「……変だね」
ゼフが目を細める。
その直後。
扉の前の空間が、ゆらりと歪んだ。
「よくここまで来たね」
静かな声。
そこに立っていたのは――
黒い魔力をまとった、一人の男。
「少しは楽しめたかな?」
その口元には、余裕の笑み。
まるで今までのすべてが遊びだったかのように。
ゼフが一歩前に出る。
「お前か、アルドラ。この騒ぎを起こしたのは」
男は軽く肩をすくめる。
「正解だ」
「この街を落とすつもり?」
ステラの問い。
アルドラは少しだけ考えるように首を傾げ――
「どうだろうね」
と、曖昧に笑った。
「ただ――」
その目が、わずかに細くなる。
「君たちがどう動くのか、興味がある」
その瞬間。
空気が変わる。
圧が、増す。
ゼフが小さく息をつく。
「……厄介なのが出てきたな」
その時。
背後で、再び大きな揺れが起きた。
――ゴゴゴ……!
天井が軋み、魔力が不安定に波打つ。
サウラが叫ぶ。
「もう時間がない!」
レーカも続く。
「魔術式、崩れかけてる!」
ゼフは一瞬だけ考え――
そして、決断する。
「ステラ」
「……うん」
言葉はそれだけ。
ゼフは振り返る。
「サウラ、レーカ」
「君たちは先に行って」
「え……!?」
サウラが揺れる。
「でも……!」
ステラが静かに言う。
「……大丈夫」
その視線は、まっすぐアルドラへ向いている。
「ここは、私たちがやる」
一瞬の沈黙。
そして――
レーカが風を強く吹かせる。
「……わかった!」
サウラも決意する。
「絶対、止めるからね!」
二つの精霊は、扉の向こうへと飛び込んでいく。
残されたのは、三人。
ステラ。
ゼフ。
そして――アルドラ。
アルドラは、ゆっくりと手を上げる。
「さて」
黒い魔力が、空間を歪める。
「続きをしようか」




