7 崩れ始めた均衡
塔へと急ぐ途中――
その瞬間だった。
――ズドンッ!!
「きゃああっ!?」
激しい衝撃とともに、街全体が大きく揺れた。
「っ……!」
ステラは咄嗟に近くの柱へ手をつく。
ゼフは風を纏い、倒れそうになる人々の体を支える。
その直後。
――ガラガラッ……!!
遠くで、何かが崩れる音。
視線を向けた先。
空中にせり出していた建物の一部が――崩れ落ちていた。
「……!」
人々の悲鳴が一斉に広がる。
「建物が……!」
「逃げろ!!」
精霊たちも混乱し、空中でぶつかり合う。
風は荒れ、雲は形を保てなくなっていた。
サウラが震える。
「こんなの……」
レーカの声も揺れる。
「今まで一度も……」
その言葉には、はっきりとした恐怖が滲んでいた。
「……ゼフ」
ステラが呼ぶ。
ゼフは目を瞑り、集中をしていた。
この揺れが、どこから来ているのかを突き止めるために。
「この揺れ……下から来てるな」
低い声。
「魔術式の中心部……地下だ」
ゼフはゆっくりと手を上げる。
風が集まる。
細く鋭い流れとなって、地面の奥へと潜り込むように広がっていく。
「探る。原因を……」
風は見えない通路を辿るように、地下へ――
その瞬間。
――バチッ!!
「……っ!?」
風が、弾かれた。
ゼフの表情がわずかに歪む。
「今のは……」
ただ弾かれたのではない。
意図的に遮断された感覚。
もう一度、風を送り込む。
今度はより強く、深く――
だが。
――ギィンッ!!
鋭い音と共に、風が粉々に裂かれる。
「……邪魔、されてる」
ゼフの声が低くなる。
その時。
ほんの一瞬だけ。
空気が、歪んだ。
見えないはずの何かが――そこにいたような気配。
ステラの目が細くなる。
「……誰かいる」
確信に近い直感。
だが次の瞬間には、何もない。
ただ――
さらに強い揺れだけが襲ってきた。
――ドォンッ!!
足場が大きく傾く。
「っ……!」
ステラがよろめく。
ゼフがすぐに腕を掴む。
「大丈夫?」
「……ああ」
短く答えながらも、視線は鋭いまま。
サウラとレーカは、完全に不安を隠せなくなっていた。
「これ……変だよ……!」
ゼフは塔の方を見据える。
「間違いないな」
風が届かない。
魔術式が乱されている。
そして――それを防ぐ何かがいる。
「行こう、ステラ」
「……うん」
揺れはさらに強くなる。
建物は軋み、空の橋が悲鳴を上げる。
このままでは――
都市は、持たない。
見えない場所で、確かに動く影。
その存在を、まだ思い出さない。
しかし、確実に――
二人の前に、立ちはだかろうとしていた。




