6 リューミアの中心
揺れが続く中、四人は塔へと急いでいた。
足元は不安定で、時折バランスを崩しそうになる。
それでも、立ち止まるわけにはいかない。
「サウラ、レーカ」
ステラが前を見たまま問いかける。
「……塔って、どんなところ?」
その声は落ち着いている。
けれど、確実に核心を捉えていた。
サウラが少しだけ揺れる。
「えっとね……」
レーカが続ける。
「リューミアの中心!」
「この街ね、塔の地下にある魔術式で浮いてるの!」
「……なるほど」
ステラが小さく呟く。
ゼフはその横で静かに頷く。
「その魔術式が乱れてるってことか」
揺れが、また一つ強くなる。
――ぐらっ。
足場が傾き、風が乱れる。
「っ……!」
「急がないと……!」
サウラの声に焦りが混ざる。
ステラは続けて問う。
「……その魔術式、誰でも触れるの?」
サウラとレーカは同時に首を振った。
「ううん!無理!」
「絶対ダメ!」
レーカが強く言う。
「塔の地下はね、普段は入れないの!」
サウラも続ける。
「管理者と、選ばれた魔導師だけ!」
ゼフの目がわずかに細くなる。
「……管理はしっかりとされてるってことか」
「うん!」
「ちゃんと点検もしてるよ!」
レーカが少しだけ胸を張るように回る。
「5年に1回、魔術式を確認するの!」
「壊れてないか、ちゃんと動いてるか!」
サウラが続ける。
「点検は去年やったばっかりなんだ!」
その言葉に、ステラの足が一瞬だけ止まる。
「……去年やったの?」
「うん! だから大丈夫なはずなんだけど……」
サウラの声が、少しずつ小さくなる。
その瞬間。
――ドォンッ!!
今までで一番大きな揺れがリューミアを襲う。
「っ……!」
ステラはとっさに体勢を低くする。
ゼフが風を使って周囲の瓦礫を逸らす。
「これは、ただの不具合じゃないな」
ゼフが低く言う。
「点検されたばかりで、これだけの異常が出てるのは普通じゃない……」
その視線は、塔へと向けられていた。
「……誰かが、意図的にいじってるってことだな」
ステラは何も言わない。
ただ、静かに――
その可能性を受け入れていた。
「……急ごう」
短い言葉。
だがその中には、はっきりとした決意があった。
サウラとレーカも、もう迷っていない。
「案内する!」
「地下まで、連れてく!」
揺れは止まらない。
むしろ――
都市そのものが、ゆっくりと傾き始めていた。
守られているはずの場所。
触れることすらできないはずの魔術式。
それが今――
何者かの手によって、歪められている。




