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風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
天空都市と黒い観測者
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42/61

5 広がる違和感

二人が案内する道を歩きながら。


「もうすぐだよ!」

 

「上から見る景色、すっごいんだよ!」


サウラとレーカは楽しそうに先を進む。


ステラもその後を静かに追う。

その表情はいつも通り――だけど、ほんの少しだけ周囲を気にしていた。


「……さっきの揺れ」


ぽつりと呟く。


ゼフは軽く頷いた。

 

「ああ。小さかったけど、気になるな」


その時。


――コトン。


足元が、ほんのわずかに揺れる。


気づくか気づかないか、ぎりぎりの感覚。


ステラの足が止まる。

 

「……また」


「え?」

 

「ほんと?」


サウラとレーカも動きを止める。


だが周囲の人々は、まだ気づいていない。

笑い声も、精霊のざわめきも、変わらず続いている。


少し進んだ、その時。


――ミシ……


今度は、確かに聞こえた。


どこか遠くで、何かが軋むような音。


「……ゼフ、聞こえた?」


ステラが小さく言う。


ゼフは周囲を見渡す。

 

「……ああ」


レーカの動きが、わずかに鈍る。

 

「風が……変」


サウラの周囲も不安そうに揺れる。

 

「さっきから、少しずつ……」


さらにその直後。


――ぐらり。


今度は、はっきりと揺れた。


「っ……!」


人々の中から、ざわめきが起こる。


「今の、揺れたよな?」


「地震……?」


精霊たちも、落ち着きを失い始める。


風が乱れ、雲が形を崩す。


ステラは空を見上げた。


「……おかしい」


短い言葉。

でも、その声には確かな違和感があった。


ゼフも同じ方向を見る。


風の流れが、目に見えるほど乱れている。

本来なら安定しているはずのこの都市で――あり得ない現象。


「ただの揺れじゃないな」


その時。


――ドンッ!!


今までとは比べものにならない衝撃が走る。


「きゃあっ!?」

 

「な、何!?」


人々が一斉に悲鳴を上げる。


足場が大きく傾き、何人かがよろめく。


ステラはとっさに近くの子どもを支えた。

 

「大丈夫?」


子どもは泣きそうな顔で頷く。


レーカが叫ぶ。

 

「これ……普通じゃない!!」


サウラも震える。

 

「魔術式が……変なのかも……!」


「……魔術式?」


ステラの目が、わずかに鋭くなる。


ゼフはすぐに理解する。

 

「この街を浮かせている力……そこに何か起きてるってことか」


さらに――


遠くで、建物の一部がわずかに崩れる。


空中の橋が、不安定に揺れる。


精霊たちの悲鳴が、空に広がる。


ステラは拳を握る。


「……行こう」


その視線は、まっすぐ塔へ向いていた。


ゼフは小さく頷く。

 

「その魔術式を確かめる必要がある」


サウラとレーカも、覚悟を決めたように言う。


「そこまで案内する!」

 

「絶対、原因見つけよ!」


揺れは、止まらない。


むしろ――


少しずつ、確実に大きくなっている。


空に浮かぶ都市、リューミア。


その均衡は今、静かに――


崩れ始めていた。

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