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風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
天空都市と黒い観測者
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41/59

4 忍び寄る揺らぎ

翌朝。


窓から差し込む光に、ステラはゆっくりと目を開けた。


「……まぶしい」


静かな朝。

外では、いつも通り精霊たちが漂っている。

近くにいるゼフを見てみると、まだ寝ていた。

二度寝しようと思ったその時。


――朝の静けさはにぎやかな声によってかき消された。


『おはよー!』


『今日はどこ行く!?』


勢いよく窓を開けて部屋の中に入り込んできたのは、昨日の精霊たち。


ステラは目を瞬かせる。


「……来たの?」


『うん!』


『決めたの!』


雲の精霊がぽんっと膨らむ。


『きみのこと、気に入ったから!』


『一緒に行くことにした!』


風の精霊がくるりと回りながら言う。


「……え?」


少しだけ間の抜けた声。


ゼフはその様子を見て、くすっと笑う。


「どうする?」


ステラは一瞬だけ考えて――


「……いいよ」


小さく、でもはっきりと答えた。


二人の精霊はぱっと表情を明るくする。


『やったー! よろしくねー!』

 

『案内も任せて!』


「うん」

 

その後、四人は再び街へと出た。

雲の精霊はサウラ、風の精霊はレーカというらしい。

 

『今日はね、もっとすごいところ見せる!』

 

『リューミアの秘密だよ!』


レーカが風を巻きながら先導する。


通りを進むと、サウラがふわりと横に並ぶ。


『この街はね、中心にある塔から魔術式が広がってるの!』

 

『それで浮いてるんだよ!』


「……魔術式で」


ステラが小さく繰り返す。


『うん! いつもは見えないけどね!』

 

『でも、すっごく大事なやつ!』


サウラは少し誇らしげに言った。


ゼフはその言葉に、ほんのわずかに視線を細める。

 

「……なるほど」


その時。


――ぐらり。


わずかに、地面が揺れた。


「……?」


ステラが足を止める。


周囲の人々も一瞬だけ動きを止めるが、すぐにまた元のにぎわいに戻る。


『今の……?』

 

『風、変だった……』


レーカの声が少しだけ低くなる。


サウラの近くにふわふわ浮いている雲も、不安を表すように小さくしぼむ。

 

『……うん。ちょっとだけ、ね』


「気のせい……?」


ステラが呟く。


ゼフは空を見上げる。


風は吹いている。

だが、その流れが――ほんのわずかに歪んでいる。


(……何かが、起きている)


だが、それを確信するにはまだ弱い。


その頃――


誰もいないはずの、塔の地下深く。


淡い光で構成された魔術式の中心。


そこに、一つの影が立っていた。


「……なるほど。これが、都市を支える核か」


フードの男は静かに呟く。


指先で魔術式に触れると、そこから黒い魔力がじわりと滲む。


光の線が、わずかに歪んでいく。


「さて……どこまで耐えられるかな」


口元に、うっすらと笑み。


「契約者たち。君たちなら、どう動く?」


その声は、誰にも届かない。


でも、確実に。


都市の均衡は、崩れ始めていた。


一方、地上では。

 

サウラとレーカは、まだ明るく案内を続けていた。


『次は景色を見に行こ!』

 

『昨日より綺麗なはずだよ!』


ステラは小さく頷く。

 

「……うん」


けれどその時。


また、ほんのわずかに――


空気が、揺らいだ。


まだ誰も知らない。


この街が――


静かに落ち始めていることを。

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