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風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
天空都市と黒い観測者
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3 風と雲の案内人

通りを歩いていたその時。


ふわり、と目の前に白い塊が現れた。


「……?」


よく見ると、それは小さな雲の精霊だった。

小さく、雲の服を着ている。

丸くて柔らかそうな体を揺らしながら、ステラの前でくるくると回る。

その動きに合わせて、少し遠くにある雲もふわっと広がった。


「こんにちは! きみ、珍しいね。やさしい風の匂いがする」


頭の中に直接響くような、不思議な声。


ステラは少し驚いたように目を瞬かせる。


「……そう、かな。ありがとう」


すると今度は、風がくるりと巻き上がり、もう一つの気配が現れる。

透明で淡い光を帯びた――風の精霊。


「ようこそ、リューミアへ。ここは空の街。風と雲の家だよ」


すぐ近くを、風の精霊が駆け抜ける。

ゼフの身体をかすめながら、悪戯っぽく笑った。


「あれ、同族? でもちょっと違う風だね」


ゼフは軽く肩をすくめる。


「俺は契約の風だからな。ここに根を張ってる風とは少し違う」


「二人とも、リューミアは初めて?」


「うん」


「じゃあ、案内してあげる!」


「リューミア、広いからね!」


二つの声が楽しそうに重なる。


ゼフは少しだけ肩をすくめる。


「ずいぶん親切だな」


「ここでは普通だよ!」


「迷う人、多いから!」


雲の精霊が誇らしげに膨らむ。


ステラはその様子を見て、ほんの少しだけ口元を緩めた。


「……ありがとう」


精霊たちはふわふわと先を進みながら、街を案内していく。


「ここは風の広場!」


「上昇気流が集まる場所!」


言われた通り、足元から柔らかな風が吹き上がる。

人々はその風に乗るように、軽やかに移動していた。


「……すごい」


ステラの声は静かだけど、確かに感心している。


さらに進むと、雲の精霊が少し大きく膨らむ。


「こっちは雲の庭!」


「休憩する人が多いよ!」


ふかふかの雲のような足場が並び、人々がくつろいでいる。

まるで空の上の庭園だった。


ステラはそっと足を乗せる。


「……やわらかい」


そのまま少しだけ沈み、バランスを崩しそうになる。


ゼフがすぐに手を差し出す。


「気をつけて」


ステラはその手を取り、体勢を整える。


「……ありがとう」


ほんの一瞬だけ、目が合う。

そのまま、どちらからともなく視線を外した。


やがて精霊たちは、街の中心へと二人を導く。


そこには――


空へとまっすぐ伸びる、巨大な塔があった。


「……大きい」


思わず、ステラの足が止まる。


「リューミアの中心だよ!」


「ここから全部見えるんだ!」


塔の上へと続く道は、光の橋でできている。

二人は精霊に導かれるまま、ゆっくりと登っていく。


頂上にたどり着いた瞬間。


視界が、一気に開けた。


空に浮かぶ街の全貌。

白い建物、交差する橋、漂う精霊たち。

そのすべてが、空と光に包まれている。


ステラは何も言わず、ただその景色を見つめた。


風が髪を揺らす。


その瞳は、わずかに見開かれている。


「……きれい」


静かな声。

けれど、それは今までで一番素直な感想だった。


ゼフは隣でその様子を見つめる。


(……こういう顔もするんだな)


小さく、目を細めた。


「今日はこのくらいかな!」


「宿も案内するよ!」


精霊たちは再び楽しそうに動き出す。


その後、二人は案内されるまま宿へとたどり着いた。


空を見渡せる、小さな宿。

窓の外には、ゆっくりと流れる雲と光。


「……いい場所だね」


ステラが静かに言う。


ゼフは軽く頷く。


「そうだな。しばらく休めそうだ」


夜。


街は静かに光り、精霊たちはゆっくりと漂っている。


その中で――


ほんのわずかに、風が乱れた。


気づく者は、まだいない。


ベッドに腰を下ろしたステラは、窓の外を見つめる。


その瞳には、どこか安らぎがあった。


「……おやすみ、ゼフ」


「おやすみ」


静かな夜。


嵐の前の、ほんのひとときの平穏だった――

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