1 いざ、天空都市へ
「もし、行き先が決まっていないなら――『天空都市リューミア』はどうだい?」
困りごとを解決した帰り道。
街の人にそう声をかけられた。
「空に浮かぶ都市でね。景色が本当に綺麗なんだ」
ステラは少しだけ目を細める。
「……空に、浮かぶ都市?」
その声はいつも通り落ち着いていたが、ほんのわずかに興味が混ざっていた。
ゼフはそれを見逃さず、口元に小さな笑みを浮かべる。
「行ってみるか?」
「……うん」
短い返事。
でも、それだけで十分だった。
数日後。
二人は空を走る列車の発着駅に立っていた。
天空都市リューミアへ行くためには、この列車に乗らなければならない。
空へと伸びる線路。
その上を走る銀色の列車は、まるで空を切り裂くように輝いている。
「……すごいな」
ゼフが小さく呟く。
ステラはその隣で、静かに、じっと列車を見上げていた。
表情はいつもと変わらない。
けれど。
ほんの少しだけ、目が輝いている。
「……ステラ、行くぞ」
「うん」
列車が動き出すと、窓の外の景色はどんどん遠ざかり、やがて街や森が小さくなっていく。
雲の中へと入った瞬間、世界は一気に白に包まれた。
「……」
ステラは何も言わず、窓にそっと手を触れる。
指先が、わずかに力を込めたように見えた。
ゼフはその様子を横目で見て、少しだけ笑う。
「珍しいな。ステラがそんなに見入るなんて」
ステラは一瞬だけ視線を逸らし、
「……別に」
と小さく返す。
でも、またすぐに窓の外を見る。
雲の隙間から光が差し込み、まるで空の海を泳いでいるようだった。
遠くには、光に包まれた何かの影が見える。
ステラはほんの少しだけ、息を呑む。
「……綺麗」
それは、ほとんど呟きみたいな声だった。
ゼフはその言葉を聞いて、ふっと目を細める。
「そうだな」
風が静かに揺れ、列車はさらに高度を上げていく。
やがて、雲を抜けた先に――
巨大な都市が現れた。
空に浮かぶ島のような大地。
白い建物と光の橋、空を漂う精霊たち。
都市全体が、淡い光に包まれている。
「……あれが、リューミア」
ステラは言葉を失ったまま、ただ見つめていた。
その瞳には、今までにないほどの光が宿っている。
列車はゆっくりと速度を落とし、都市へと滑り込んだ。
二人の新たな冒険が、始まる。
☆ お知らせです!
実は、書き溜めてたデータが消えてしまって、今絶賛新しく書いている途中という状況で……。
間に合わないときは週1更新とかになってしまうかもしれないので、そのときは気長に待っていもらえると嬉しいです!
最後になりますが、これからも「風の契約と絆を紡ぐ物語」をよろしくお願いします!




