6 覚悟と決意
黒い魔導師たちの魔法は、まるで網のように広場を覆っていた。
闇の鎖、重力を歪める術式、風の流れを封じる結界。
ステラが一歩踏み出すたび、足元に影が絡みつく。
斬っても斬っても、霧のように形を変えて迫ってくる。
「……このままだと、押し切られる」
小さく息を整えながら、ステラが呟く。
ゼフも同じだった。
風を呼ぼうとすると、黒い魔力が先回りして流れを濁す。
完全に封じられてはいないが、いつもの鋭さが出ない。
(精霊を縛る術……でも、完璧じゃない)
そのとき、ゼフは気づいた。
黒い渦の中心から、わずかに風が漏れている。
完全な無ではない。むしろ、周囲の魔力を吸い込みすぎて、流れが歪になっている。
(あそこ……渦の中心。術式が集中してる)
敵は渦を門として使っている。
ということは、そこを乱せば――
「ステラ、あの渦の中心……完全には閉じてない」
彼は声を落として伝える。
「風が、そこから歪んで出てきてる。たぶん……術の継ぎ目だ」
ステラは一瞬だけ空を見る。
感情は表に出さないけど、理解した時の、ほんのわずかな目の動きで分かる。
「……そこを叩けば、連携が崩れる?」
「可能性は高い。ただし……かなり危険だ」
黒い魔力が最も濃い場所。
下手に近づけば、飲み込まれる。
ステラは剣を構え直す。
「危険なのは……いつも同じでしょ。
それに⋯⋯やらないと、こっちがやられる」
淡々とした声。でも、その中に決意があった。
ゼフは、ふっと小さく笑う。
「……やっぱり、止めても行くよな」
風が、再び二人の周りに集まり始める。
まだ弱いけれど、確かに流れが変わった。
敵の魔導師たちは、その変化に気づいたのか、魔力をさらに高め始めた。
黒い渦が、どくん、と脈打つ。
突破口は、見えた。
まだ細く、危ういけれど――
そこに向かって踏み出す覚悟だけは、二人の中ではもう揺らいでいなかった。




