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風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
黒い渦と輝く魔法
28/40

3 始まる実験

昼が近づくにつれて、中央広場はさらに人であふれてきた。

観客席には家族連れや旅人、魔法使いたちが集まり、空には光の精霊が描いた紋様がゆっくりと浮かんでいる。


「人と精霊の合同演出、まもなく開始します――!」


高台からの声に、どっと歓声が上がった。


ステラは人波の中で立ち止まり、空を見上げる。

剣の柄に手を添えたまま、どこか無意識に警戒する姿勢。

それでも視線は、光と魔法の舞に引き寄せられていた。


光の柱が何本も立ち上がり、水の精霊がそれを鏡のように映し、風がすべてを包むように回転する。

まるで空そのものが、ひとつの巨大な魔法陣になったみたいだった。


その中心で――


ひずみが生まれた。


最初は、誰にも分からないほど小さな黒い点。

光の中に混じる、ありえない色。


ゼフの表情が変わる。


(来た……!)


風が悲鳴のように震えた。

黒い点はゆっくりと回転しながら広がり、周囲の光を吸い込むようにして渦を巻き始める。


「……あれは」


ステラも異変に気づいた。

ざわめきが観客席に広がり、演出担当の魔導師たちが動揺する。


次の瞬間。


黒い渦から、冷たい魔力の波が放たれた。


光がかき消され、空気が重く沈む。

精霊たちの動きが鈍り、悲鳴があちこちで上がった。


「ステラ、下がって!」


ゼフが叫ぶと同時に、彼女はもう剣を抜いていた。


「ううん、だめ。あそこ、まだ人がいる」


静かな声。でも、迷いはない。

ステラは渦と人々の間に立つように一歩踏み出し、魔力を剣に流す。


風が、彼女の周りに集まる。

それは偶然じゃない。ゼフの力と、ステラ自身の魔法が、自然に共鳴していた。


黒い渦は、まるで二人を標的として定めたかのように、ゆっくりと向きを変える。


(やっぱり……狙いは、魔力の強い者と精霊か)


ゼフは歯を噛みしめ、風を解き放つ。


祭典の光に満ちた空は、

今、確実に戦場へと変わり始めていた。

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