表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
黒い渦と輝く魔法
27/39

2 予兆と違和感

屋台の準備が本格的に始まり、広場には甘い匂いと金属音、笑い声が混ざり合っていく。

人間と精霊が一緒になって作業している光景は、まるで一つの大きな生き物みたいだった。


「今日は中央ステージで、合同演出のリハーサルがあるって」


ステラが掲示板を見ながら言う。

文字を追う横顔は相変わらず静かだけど、足取りはいつもより少しだけ軽い。


「……見に行く?」


「うん。精霊と人が一緒にやる魔法……興味ある」


ゼフは小さく笑った。

その興味あるが、ステラなりの楽しみという意味だと、もう分かっている。


二人が中央広場へ向かうと、そこではすでに準備が始まっていた。

光の精霊が空中に淡い光の道を描き、水の精霊がそれを映すように霧を広げ、風の精霊たちがその霧をゆるやかに渦へと導いていく。


「きれい……」


ステラの声が、ほんの少しだけ弾む。

表情は大きく変わらないのに、瞳の奥がわずかに明るくなっているのを、ゼフは見逃さなかった。


そのとき。


風の流れが、一瞬だけ乱れた。


歓声に紛れるほど微かな違和感。

だが、ゼフの感覚にははっきりとした引っかかりとして残る。


(まただ……さっきより、はっきりしてきてる)


黒いものが、遠くでうごめいた気配。

空の高いところ、演出用の魔法陣が展開されるはずの場所――そこに、ほんの一瞬だけ、影が滲んだ。


「ゼフ?」


再び呼ばれて、彼ははっとする。


「どうしたの? 大丈夫?」


「……ああ」


今度は嘘じゃない。

今はまだ、何も起きていない。ただの予兆だ。


ゼフはステラの隣に立ち、同じ景色を見るふりをしながら、風に意識を広げる。


(来るなら、昼の演出のときだろうな)


人と精霊の魔力が最も集まる瞬間。

そこを狙わない理由はない。


祭典の準備は順調に進み、街は期待と光で満ちていく。

誰も気づいていない。

その光の裏側で、静かに口を開け始めた黒い渦の存在に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ