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風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
離れた心と変わらぬ絆
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4 重なる想い

ステラがゼフに呼びかけ、ゼフの意識が戻り始めたころ。


リオネルたちは、床に張りつくように魔力の鎖で縛られていた。


動こうとするたび、鎖が全身を締めつける。

力任せに引きちぎろうとしても、鎖はわずかに軋むだけで、びくともしなかった。


「……っ、クソ……!」


リオネルは歯を食いしばり、アルドラの方を睨みつける。


あの冷たい目で、ゼフを実験体みたいに扱ったことが、どうしても許せなかった。


ゼフは、いつだって飄々としていて、何を考えているのかわからないところがある。

それでも、仲間が危険にさらされれば迷わず手を伸ばすし、誰かが困っていれば、さりげなく助けてくれる。


そんなゼフが、今は自分の意思とは関係なく、仲間に刃を向けさせられている。


「人の心も、精霊の心も……踏みにじりやがって……!」


怒りで、魔力がわずかに震える。


拘束が、きし、と音を立てた。


もう少し力を込めれば、何とかなるかもしれない。

そう思って再び腕に力を込めるが、鎖は容赦なく身体を締めつけるだけだった。


「……くそっ、動けよ……!」


目の前では、ステラがゼフの攻撃を受け止めている。


必死に呼びかけながら、何度もゼフの名を口にする姿が見えた。


あの二人を助けたい。

今すぐ駆け寄って、ステラと一緒にゼフを取り戻したい。


なのに、自分には何もできない。


その事実が、怒りと同じくらい、リオネルの胸を締めつけていた。


その隣で、ヴァルカが低く唸る。


「……今は動けねぇけどよ。

あいつ、正気に戻ったら一発……いや、十発は殴らせてもらう」


視線はゼフに向いている。


敵意じゃない。

悔しさと、心配と、そして仲間への苛立ちが入り混じった目だった。


「無茶しやがって……一人で抱え込みやがって……」


吐き捨てるような声には、普段の荒々しさとは違う響きがあった。


「……戻ってきたら、覚悟しとけよ」


もう一度、ヴァルカはゼフを睨む。


その目には、怒りだけではなく、無事に戻ってきてほしいという願いが滲んでいた。


ルクスは腕を拘束されたまま、悔しそうに顔をしかめる。


「……ゼフのばか。

戻ってきたら絶対言ってやるんだから。心配かけすぎって」


いつものように冷静な口調を保とうとしている。

けれど、言葉の端はかすかに震えていた。


ゼフの魔力が乱れた瞬間から、ずっと気になっていた。


普段なら、どれほど危険な状況でも、ゼフは余裕を失わない。

軽口を叩き、周囲をよく見て、必要なときには誰よりも早く動く。

そんなゼフが、自分の意思を失いかけている。

それが、ルクスには何よりも歯がゆかった。


「……何でも一人で解決しようとするんだから」


小さく呟き、視線を落とす。


ゼフが何を考え、何を恐れていたのか。

すべてを知っているわけではない。


それでも、仲間であることに変わりはなかった。

だからこそ、何もできずに見ているだけなのが、悔しかった。


「……ちゃんと、戻ってこいよ」


誰にも聞こえないほどの声で、ルクスは呟いた。


それでも、その声は震えていた。


フィリアは、ただステラの方だけを見ていた。


必死にゼフの攻撃を受け止め、呼びかけ続けるステラの背中。

その姿を見ているだけで、胸が苦しくなる。


ステラがどれほどゼフを大切に思っているのか、フィリアは知っていた。

だからこそ、今のステラを一人にしておきたくなかった。


ゼフを助けたい。

ステラを支えたい。


けれど、身体を縛る鎖は、そんな願いさえも拒むように動きを封じている。


「……早く……ステラのところに……」


祈るように、指先に力を込める。


何とかして、この鎖を解けないだろうか。

自分の魔力で、少しでもステラの助けになれないだろうか。


何度もそう考えた。


けれど、焦れば焦るほど、思うように魔力がまとまらない。


「一人で戦わせたくない……

二人で一緒にいなきゃ、意味ないのに……」


声が、かすかに震える。


ステラとゼフは、いつだって互いを支え合ってきた。


どちらか一人がすべてを背負うのではなく、二人で考え、二人で進んでいく。

それが、フィリアの知っている二人だった。


だから、今も信じていた。


きっと、ステラの声はゼフに届く。

ゼフもまた、ステラのもとへ戻ってくる。


そして、二人が戻ってきたときには、今度こそ自分たちも一緒に戦いたい。


もう、誰か一人に無理をさせるのではなく。

全員で、困難を乗り越えたい。


そんな想いが、胸の奥で強くなっていく。

その想いに応えるみたいに、四人の魔力が、微かに共鳴しはじめた。


最初に気づいたのは、リオネルだった。


「……ん?」


拘束された腕に、かすかな熱が伝わる。


先ほどまで、どれほど力を込めても動かなかった鎖が、ほんのわずかに揺れていた。


「……おい。これ、もしかして……」


顔を上げる。


ヴァルカも、ルクスも、フィリアも、同時に感じ取っていた。


それぞれの魔力が、互いに呼応するように揺らいでいる。


自分たちが抱いている想いは、少しずつ違う。


怒りもある。

悔しさもある。

心配で、たまらない気持ちもある。


けれど、願っていることは同じだった。


ステラを助けたい。

ゼフを取り戻したい。


そして、もう一度、みんなで一緒に歩いていきたい。


誰か一人が傷つくのを、ただ見ているだけなんて嫌だった。


四人の魔力が、少しずつ強くなる。


拘束の魔力が、再び、ぎしりと軋んだ。


リオネルは、顔を上げる。


「……絶対、助けるからな」


その声に、ヴァルカが小さく笑った。


「当たり前だろ。あいつを殴る約束も、まだ残ってんだからな」


「……その前に、ちゃんと戻ってきてもらわないとね」


ルクスも、わずかに口元を緩める。


フィリアは、ステラの背中を見つめたまま、静かに頷いた。


「……うん。みんなで、一緒に」


四人の想いが、一つになる。


玉座の間の空気が、少しずつ、変わり始めていた。

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