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風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
離れた心と変わらぬ絆
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3 風が守ったもの

風の刃が、すれすれでステラの頬をかすめる。

鋭い衝撃とともに、赤い線が走った。


「……っ!」


それでも、ステラは後ろに下がらなかった。

防御魔術を展開しながら、まっすぐにゼフを見つめる。


「ゼフィロス……お願い、思い出して」


虚ろだったその瞳が、ほんの一瞬だけ揺れた。


「ここに来てから一緒に見た海のこと、覚えてる?

すごいきれいだったよね。みんなでいろいろ話して、楽しかった」


ステラの言葉を聞いて、ゼフの指先がかすかに震える。

攻撃に大きな隙が生まれ、その間にステラは態勢を整えた。


ゼフにかけている支配の術が緩み、魔力の制御が大きく乱れた。

アルドラはそのことに気づく。


「……意識が戻りかけているな。やはり、あの共鳴は厄介だ」


彼は杖を掲げ、ゼフの体に絡みつく支配の術の鎖をさらに強く輝かせる。

鎖のような魔力が、何重にもゼフの魂を縛りつけていく。


「くっ……」


ゼフの呼吸が乱れ、体がこわばる。

しかし、震える手がステラに向かって伸ばされた。


その瞬間。


ステラの胸の奥が、きゅっと締めつけられるように熱くなった。

ゼフの魔力と、自分の魔力が——ほんのわずか、重なった感覚。


「……っ、これ……」


いつもの完全な共鳴にはほど遠い。

十分の一にも満たない、かすかなつながり。

でも、確かにそこにあった。


ステラの魔力の中に、覚えのある気配を感じる。

優しくて、いつも支えてくれる風の気配。


その気配を感じてすぐ、ゼフの瞳に薄く光が戻る。


「……ステ……ラ……」


アルドラの眉が、ぴくりと動いた。


「共鳴だと? この状態で……!」


苛立ちを隠さず、アルドラはステラに向けて攻撃魔術を放つ。

黒い閃光が、一直線に彼女を貫こうとした。


「……っ!」


その瞬間。


ゼフの体が、命令に逆らうように動いた。

ゼフの腕がわずかに動くが、鎖に阻まれる。


しかし。


ごうっと唸る風が生まれ、

アルドラの魔術を真正面から吹き飛ばす。


爆ぜるような音とともに、闇の魔力が霧散する。


場が、一瞬静まり返った。


アルドラは信じられないものを見るように、ゼフを見据える。

目を細め、ゼフに絡む支配の術を観察する。


「……命令に、逆らった……だと?」


ゼフは苦しそうに息をしながら、でも、はっきりとステラの方を見る。


「……ステラには……

指一本……触れさせない……」


声はかすれていて、体もまだ自由じゃない。

それでも、その言葉だけは、確かにゼフ自身の意思だった。


ステラの胸が、ぎゅっと締めつけられる。


(まだ……いる。ゼフは、ちゃんと……そこにいる)


わずかな共鳴。

ほんの一瞬の自由。


でもそれは、

絶望の中に差し込んだ、確かな希望の光だった。

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