番外編 呼び方の話
とある日。
暇を持て余していたリオネルは、ふと思った。
「ステラってさ、なんでゼフィロスのことをゼフって呼んでるんだ?」
「え?」
急なリオネルからの質問に、首をかしげるステラ。
近くにいたゼフも、不思議そうな顔をしている。
「確かに、言われてみれば気になるかも」
ルクスもリオネルに同意し、ヴァルカとフィリアもうんうんと頷いている。
そんな4人を見て、ステラは不思議に思いつつも答えた。
「なんとなく、かな」
「なんとなくなのか!?」
「うん。ちゃんと覚えてないけど」
「そうなの? ゼフィロス」
なんとなくというふわっとしたステラの答えに、フィリアがゼフに確認をする。
「……ステラが言った通りだ」
ゼフは少し考えながら答えた。
そう、あれはまだ2人が出会ったばかりの頃。
「ゼフィロスって名前、長いよね」
「……そうか? 言われたことないな」
たまに出会う精霊たちには、そのようなことは言われたことがなかった。
そもそも、『ゼフィロス』という5文字は長いのか。
ゼフは不思議に思ったが、ステラにとっては長いのかもしれない。
ゼフの返しにステラは不思議そうな顔をする。
そして、確認するように名前を呼んでみる。
「ゼフィロス」
「どうしたんだ?」
「ううん。やっぱり長いな~って思って」
「……そうか」
ゼフは特に気にしていなかったが、ステラは気になるらしい。
「なら、どうするんだ?」
「うーん……ゼフィ、ゼフィロ……。
なんか違うな……」
いくつか試してみたものの、ステラはどれもしっくりこない様子だった。
やがて、何かを思いついたように顔を上げる。
「あ、ゼフって呼ぶのはどう?」
「ステラがいいなら、それでいいよ」
ステラは満足そうにうなずく。
これから、ゼフィロスはゼフと呼ばれるようになった。
と昔の話を簡単に話すゼフ。
昔話が終わると、リオネルは拍子抜けしたような顔をする。
「えっ、それだけ!?」
「うん」
ステラがうなずく。
「もっとこう、特別な理由があるのかと思った……」
「そんな感じだったの? てか、ゼフィロスって別に長くないでしょ」
「……そう?」
ルクスにそう言われて。首を傾げるステラ。
本人は長いと思っていたが、他の人からすると、そうでもないらしい。
ヴァルカも豪快に笑う。
「なんだ、呼びやすかっただけか!」
ルクスは呆れたように、
「本人たちが気にしていないなら、それでいいんじゃない?」
フィリアは微笑んで、
「でも、今ではすっかり馴染んでいるわね」
なんて言う。
ゼフはいつも通り落ち着いているけれど、ステラは少し考えてから、もう一度ゼフを呼ぶ。
「ゼフ」
「……なんだ?」
「ううん。呼んでみただけ」
「……そうか」
いつもと変わらないやり取り。
けれど、長い旅の中で積み重なってきた二人の時間を、仲間たちは少しだけ感じるのだった。




