10 取り戻す決意
柔らかな光の中で、ステラは立っていた。
そこは、どこか懐かしい場所。
風の匂いも、空の色も、はっきりしない。
しかし、胸の奥が、きゅっと締めつけられる。
いつのまにか、前にゼフがいる。
今より少し幼い顔で、でも今と同じように優しく笑っている。
「ステラ」
その声を聞いた瞬間、涙が溢れそうになる。
「……ゼフ……」
手を伸ばす。
触れられそうで、触れられない距離。
次の瞬間、景色が揺らいで、別の記憶が流れ込んでくる。
神殿。記録水晶。
絆の契約。
世界を救える力。
そして——二人で並んで立っていた、あの未来の光景。
(あ……そうだ……)
胸の奥で、何かがはっきりと繋がる。
(私……ゼフと一緒じゃないと……)
ゼフの姿が、ゆっくりと遠ざかっていく。
「待って……!」
声が震える。
「行かないで、ゼフ……っ」
必死に叫ぶと、ゼフが振り返って、安心させるように笑った。
「……俺は大丈夫。
それに、ステラなら、きっと迎えに来てくれるだろ?」
その言葉で、すべてが確信に変わる。
(……やっぱり……)
涙が頬を伝う。
(ゼフがいないと、嫌。
一緒じゃなきゃ、意味がない……!)
「……ゼフ……!」
はっと目を覚ます。
薄暗い部屋。
簡素な寝台。
ここは、仲間たちが用意してくれた休める場所だった。
でも、隣にいてほしい人はいない。
胸がぎゅっと潰れそうになって、ステラは布団を握りしめる。
「……う……っ」
こぼれた声と一緒に、涙が溢れる。
「迎えに行く……。
絶対、取り戻す……」
震える声で、そう呟いて、何度も何度も目をこすった。
その頃、部屋の外。
リオネル、ヴァルカ、フィリア、ルクスは、小さなテーブルを囲んで静かに話していた。
「……ステラ、まだ目を覚まさねぇな」
リオネルが心配そうに言う。
「無理もないわ……あんなことがあった後だもの……」
フィリアは胸の前で手を組み、俯いた。
ルクスが小さく息を吐く。
「ゼフィロス……どうしてるんだろ……」
ヴァルカは拳を握りしめたまま、低い声で言う。
「……連れ去られたんだ、無事なわけがない」
少しの沈黙。
リオネルが、ぽつりと呟く。
「……あの二人が一緒にいられねぇなんて……。
そんなの、間違ってるだろ……」
この言葉を、誰も否定することができなかった。
「ステラも……今、相当つらいはずだ」
「でも……あの子、立ち上がるよ」
「うん。だって……ゼフを想う気持ちは、誰よりも強いもの」
扉の向こうで、かすかに泣き声が聞こえた気がして、全員が顔を上げる。
「……起きた、みたいだな」
リオネルはゆっくり立ち上がった。
「迎えに行こう。
一人で泣かせるわけには、いかねぇだろ」
リオネルの言葉に、全員がうなずく。
そして、扉に向かって歩いて行った。




