↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の契約と絆を紡ぐ物語  作者: 蒼燈
平穏の終わりと嵐の始まり
PR
102/114

10 取り戻す決意

柔らかな光の中で、ステラは立っていた。


そこは、どこか懐かしい場所。

風の匂いも、空の色も、はっきりしない。

しかし、胸の奥が、きゅっと締めつけられる。


いつのまにか、前にゼフがいる。


今より少し幼い顔で、でも今と同じように優しく笑っている。


「ステラ」


その声を聞いた瞬間、涙が溢れそうになる。


「……ゼフ……」


手を伸ばす。

触れられそうで、触れられない距離。


次の瞬間、景色が揺らいで、別の記憶が流れ込んでくる。

神殿。記録水晶。

絆の契約。

世界を救える力。

そして——二人で並んで立っていた、あの未来の光景。


(あ……そうだ……)


胸の奥で、何かがはっきりと繋がる。


(私……ゼフと一緒じゃないと……)


ゼフの姿が、ゆっくりと遠ざかっていく。


「待って……!」


声が震える。


「行かないで、ゼフ……っ」


必死に叫ぶと、ゼフが振り返って、安心させるように笑った。


「……俺は大丈夫。

 それに、ステラなら、きっと迎えに来てくれるだろ?」


その言葉で、すべてが確信に変わる。


(……やっぱり……)


涙が頬を伝う。


(ゼフがいないと、嫌。

 一緒じゃなきゃ、意味がない……!)


「……ゼフ……!」


はっと目を覚ます。


薄暗い部屋。

簡素な寝台。

ここは、仲間たちが用意してくれた休める場所だった。


でも、隣にいてほしい人はいない。


胸がぎゅっと潰れそうになって、ステラは布団を握りしめる。


「……う……っ」


こぼれた声と一緒に、涙が溢れる。


「迎えに行く……。

 絶対、取り戻す……」


震える声で、そう呟いて、何度も何度も目をこすった。


その頃、部屋の外。


リオネル、ヴァルカ、フィリア、ルクスは、小さなテーブルを囲んで静かに話していた。


「……ステラ、まだ目を覚まさねぇな」


リオネルが心配そうに言う。


「無理もないわ……あんなことがあった後だもの……」


フィリアは胸の前で手を組み、俯いた。


ルクスが小さく息を吐く。


「ゼフィロス……どうしてるんだろ……」


ヴァルカは拳を握りしめたまま、低い声で言う。


「……連れ去られたんだ、無事なわけがない」


少しの沈黙。


リオネルが、ぽつりと呟く。


「……あの二人が一緒にいられねぇなんて……。

 そんなの、間違ってるだろ……」


この言葉を、誰も否定することができなかった。


「ステラも……今、相当つらいはずだ」


「でも……あの子、立ち上がるよ」


「うん。だって……ゼフを想う気持ちは、誰よりも強いもの」


扉の向こうで、かすかに泣き声が聞こえた気がして、全員が顔を上げる。


「……起きた、みたいだな」


リオネルはゆっくり立ち上がった。


「迎えに行こう。

 一人で泣かせるわけには、いかねぇだろ」


リオネルの言葉に、全員がうなずく。

そして、扉に向かって歩いて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。