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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第二部第一章 産声を上げた世界
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選ばれた神子

勇者との戦いは続く。勇者が聖剣を振るうが永戸が聖剣でそれを弾く。

時々レーザーも飛ぶが、神癒奈がレーザーのエネルギーを停止させて吸収する。

二人がピンチになった時はフィアネリスが間に入り、攻撃を防ぐ。


「しぶといな! さっさと倒れろ!」


勇者が再びレーザーを放ち、神癒奈がガードするが、ここで、一つの問題が出た。


(これ以上のエネルギーを…処理しきれない!)


神癒奈は飛んできた即死級のレーザーを今まで吸収する事で何とか攻撃を防いで来たが、ここに来て処理限界が来た。尻尾からは溢れんばかりの焔が舞い上がっており、余剰熱の処理もままならなくなった。このままではメルトダウンを起こし、自身を中心に爆発を起こす危険性がある。


「余裕のない表情をしだしたな? もしかして限界か?」

「そんなわけ…!」


本来ならここまでの熱量を抱え切る訓練は受けてない。だが神癒奈はその膨大なエネルギーを根性で抑え込んでいた。放射される焔が眩く揺らめき、昼なのに明るく謁見の間を照らす。


「このぉっ!」


永戸がリヴァンジェンスⅡの弾丸を勇者に撃ち込む。小型の砲弾が勇者に命中するが弾かれる。間髪入れずに斬撃を叩き込むが、こちらの攻撃への対応にも慣れてきたのか、斬撃を受けても傷一つつかなくなってきた。


「無駄だ! お前らみたいな雑魚がどれだけ束になろうと、神に選ばれた子である俺を倒すことはできない」

「…神に…選ばれた、だって?」


一通り攻撃を終えて下がった永戸が、勇者に聞く。

すると勇者は剣を掲げながらこう言った。


「そうさ、お前らみたいな雑魚能力者を守る為に俺は神からヒーローの力を授けられた! 俺こそが、選ばれし勇者! 選ばれた存在なんだよ!」

「…馬鹿げてる」

「何?」


刀を持ち、ゆらりと立つ神癒奈がそうポツリと呟く


「馬鹿げてますよ、その神様、目が節穴だったんですね、ただの暴力装置にこんな力を託すだなんて。欲望と私情に塗れた貴方が選ばれた存在な訳がない!」

「だが! 現に俺はこうして力を行使してる、無敵のヒーローとしての力を! お前らでは倒せない程の肉体を!」

「そんなもの! 神から授かった力じゃありません! ただ借りているだけのチャチな能力に過ぎない! 現に貴方は、一人のヴィランの手により倒されている⁉︎」

「ぐっ! 何でそのことを!」

「知ってますよ、貴方の行いの全てを、私は貴方を転生させた神、知ってて当然です! 呆れた人生ですよ! ええ、本当に!」


神癒奈はその記憶をひとつひとつ辿る。

子供の頃から正義を掲げては悪とみなした子供にはいじめを行い、社会人になってからも軽犯罪者に対して過剰とも言える制裁を行い、正義のヒーローとして世に君臨してからはもはや独裁状態。その都市の人々はその勇者を恐れ称え、もし事件に巻き込まれようなら血肉も残らないような惨状になり、街の頂点として君臨していた。

だが、勇気ある一人のヴィランの行いにより、彼はついに倒れ、異世界に飛ばされてきた。この世界を生贄にし、一つの箱庭にして彼を封じようとした。

それだけ危険な思想を持つ者だったのだ。


「気に入らない、お前のその目つき、あの時俺を襲った奴とそっくりだ! 勝ちを確信したような目つき、どうせ何もできないくせによぉおおっ!」


レーザーが飛んでくるが、神癒奈は夜廻桜で受け流すとカウンターで光波を飛ばす。その光波は勇者の体を確かに捉えた。


「ぐぅううっ! 何⁉︎」

「やっぱりそうだ……倒し方はこれだった。目には目を、歯には歯を、貴方は、自分自身の攻撃を返されるとダメージを処理しきれない!」


神癒奈は刀身に先ほど吸収したエネルギーを乗せると、尻尾からアフターバーナーのようにエネルギーとなる焔を放出した。


「永戸さん! フィアネリスさん!」

「ああ!」

「はい!」


二人にもエネルギーを分け与え、彼らの持つ武器に力を宿らせる。


「さぁ、懺悔する準備はできましたか? 今なら楽に死なせてあげますけど!」

「その手に乗るわけねぇだろぉおおお!」


勇者が聖剣からビームを放つが、永戸がイクセリオスの光波を放つとそれが相殺される。同時に永戸は接近し、エネルギーの宿った聖剣で彼に連続切りを一瞬で行う。ざぱっと切れた感触があり、勇者は膝をつく。


「こんなところでも! 俺は負けるのか⁉︎ いや、いやいやいや! ありえない!」

「ありえないと思うことこそありえないのですよ」


フィアネリスが推力全開で壁に勇者を押し付けると、その手にあった槍を変形させ、パイルバンカーで片腕を抉った。


「神癒奈さん!」

「はい! 


全エネルギーを刀に集中させ、刀から月光の如き光を放たせる…そしてその刀を鞘にしまうと、居合の構えをとった。


「死にたくない! 俺はまだ勇者なんだ! 世界をすべる王なんだ! そんなのが、ただの狐に、負けるなんて、そんなわけはないんだぁああああ!」


最大威力のレーザーが放たれ、神癒奈に襲いかかる。その瞬間だった、神癒奈は刀を抜き、そのレーザーすらも両断し、勇者を縦から一直線に切った。


「ぁ……ぇ……?」


勇者は何が起きたかと一瞬理解が追いつかなかったが、自身の視界が二つに割れた所で意識が途切れた。


「貴方には地獄の底が、お似合いです」


刀を納めると尻尾から大量の余剰熱が放出され、同時に勇者は真っ二つとなって倒れた。


「やったな」

「ええ、じゃあ世界の修繕作業に入りますね」


勇者に殺された者たちや、ボロボロになった謁見の間を蘇らせ、クレーターができるほどに破壊された魔王城は一応形は残す程度に壊しておく。そしてこの世界の人の記憶も処理し、修繕作業を終えた。


「さ、帰りましょうか」


勇者の死体を回収すると、血の跡も残さずに、神癒奈は笑って二人に言う。


「そうだな、帰るか」

「ええ、仕事も終わりましたし」


そうして三人はイストリアまで戻った。


ーーー


イストリアに戻り、勇者の亡骸を研究班に渡すと、三人は四課のオフィスに戻ってきた。


「お疲れっす、今お茶沸かすから待つっす」


桐枝がお茶とコーヒーを入れては三人に渡す

ふぅっと三人は落ち着く時間ができた。


「隊長さん、作戦はどうでしたか〜?」

「無事完遂したよ、メリッサ、そっちの様子はどうだった?」

「ライさんが主導で炊き出しを行ってきました。例のロボットの情報はありませんね…」

「その辺の街じゃ見つからないだろうな、やはり新世界で情報を得ないと」


ホワイトボードにはロボットの情報が載っていた。だがまだ情報が少ないのかポツポツとした習性程度しか載ってなかった。


「課長、俺たちが調査に加わるのはいつになりそうですかね」

「しばらくはないよ、敵勢力の脅威を今は二課が調べている最中だからね、投入はもう少し先になると思う、今は持てる仕事をしっかりしなさい、所で、勇者の件はどうだったかね?」

「禁忌指定されるほどの危険な相手でしたよ、神癒奈が起点を効かせなければどうなっていたことやら」


あの勇者とまともに戦ってたら死者が続々と出ただろう、早期に弱点に気がつけて良かったと永戸は思う。


「今も勇者絡みの犯罪は続々と増えている。新たにできた世界の調査や本来の魔王討伐といった目的による転生、それでの犯罪は後を絶たない、もうしばらく、君たちには同様の事件にあたってもらおう」

「はい、わかりました」


そう言うと永戸たちはデスクワークへと移り、1日を終えた。


ーーー


家に帰ってきて家事をして、ようやく就寝時間がやってくる。泥のように溜まった疲れを永戸は部屋でゆったりと癒そうとベッドで寝ていたが、すると、コンコンと部屋のドアがノックされた。


「渚、いい加減ブラコンなのもわきまえて…」

「こ、こんばんは」


どうせ渚だろうと開けたら、そこに立っていたのは神癒奈だった。おずおずとした表情で彼女は部屋の前に立つ。永戸は周囲に他に誰かいないか様子を見て言った。


「どうしたんだ? 寝られないのか?」

「いえ、別にそんなのではないんです、ただちょっと、恋人だし、一緒に寝るのはどうかなって」

「……それも、そうだな」


神癒奈を部屋に入れてベッドライトをつけると、二人でベッドに腰掛ける。


「今日も疲れたな」

「はい、勇者の案件の対処も、もう慣れてきましたよ」


今日みたいな勇者があらゆる異世界に蔓延っているのだから気分はうんざりだ、転生の担当までやっているため、犯罪者一歩手前や前科ありの転生者が来ると本当に困った。


「あんな勇者を毎日送り出してるのか?」

「毎日ってわけではないですけど、はい、時々」

「お互い、苦労してるな」

「永戸さんは隊長の仕事がありますからね、みんな纏めるの難しいんじゃないんですか?」

「あぁ、本当に難しい」


新しく増えた五人のメンバーを早いうちにこの職場に順応させたい。そう永戸は思っていたが、イマイチ旧来のメンバーと新人との間に壁がある感じがした。


「明日は何か大規模な依頼を受けさせるか、そうすりゃ少しくらいは馴染むだろう」


そう言うと永戸はベッドに横たわるが、ふわりとした何かに頭を支えられた。枕にしてはとてもふかふかで、女性の甘い香りがするその枕…。


「もうっ、私の尻尾を急に枕にしないでくださいよう」

「…あっごめん、どこうか?」

「…いえ、そのままでいいです」


神癒奈も横たわると、二人並んで一緒に寝る。


「……恋人ってこう言うことをするんでしょうか?」

「……するだろ、こんな風に一緒に寝ることは」

「じゃあ……」


神癒奈はスルスルと永戸の腕や足に体を絡み付かせると、言った。


「少しだけ、甘えさせてください」

「…わかったよ、…あぁ、感触がいいな」

「そう言う正直な所、私は好きですよ」


くすりと神癒奈が笑うと。二人はそのまま寝息を立て始め、ゆっくりと、夜の眠気に体を任せていった。

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