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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第二部第一章 産声を上げた世界
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新たなる脅威と世界

外郭で倒されたロボットは、すぐにイストリアの研究部門に回収された。

その案件の当事者でもある永戸達四課はすぐに呼ばれ、研究室に入る。

そこには、バラバラになったロボットの残骸があった。


「よく来てくれた。早速だが、このロボットについて話をしておきたい」

「一体、このロボットは何なのですか?」


神癒奈が恐る恐る問いかける、すると、科学者は手を挙げて首を振った。


「全く分からん」

「分からない? どこかの世界の勢力の兵器とか、そういう情報はないのですか?」

「残念ながらこのロボットについての情報はまだ解明してない、全く未知の、謎のロボットということだ」

「未知…」


ここにフィアネリスがいたらどんな反応をしただろうと永戸は思うが、話を続ける。


「で、このロボットの分布だが、調べたところ既存の世界には一切なかった」

「て事は、存在はこの2体だけって事か?」

「…そうではないな」


そうではない? 永戸は疑問を浮かべる。既存の世界に存在しない、だがこの2体だけではないと言うことは、どういうことなんだと。


「あっ……」


ここで神癒奈が何か思いついたようで声を上げた。だが、科学者には隠すように口を紡ぐ。


「この前の"絶望"と呼ばれた存在との戦いにて、世界は救済された、だが同時に、何かに呼応したのか、新たな世界が多数生まれた。まだどの勢力にも目をつけられていない世界、我々イストリアはこれを調査対象とし、特査二課をそれぞれの世界へ送り込んだ。そこは、緑豊かなところもあれば、凍りついた大地のところもあり、砂漠も、海も、色々あった。だが、それらの世界の一部に機械的な文明が存在した」

「それが…このロボットと関係すると?」


永戸がそういうと科学者は頷く。


「その機械的文明なのだが、人と同じようなロボットが生活をしていた、そのロボットは生物とも機械ともどちらとも取れる動きをしていた。本物の人のように狩りをし、人と同じように生活をする。それどころじゃない、同じく機械の体を持った動物が、元の生物と全く同じような生活をしていたのだ。だが彼らは食事や排泄の必要はない、ある意味、ただの模倣に過ぎない。そしてその機械生命体に使われた物質が、この二つのロボットと同じ物質であることがわかった」

「つまりは、このロボットは、機械的文明から送られてきた脅威であるという事ですか?」

「そう取ることができる。君たちのように、各異世界で同じロボットとの交戦の記録があった。このロボットは機械的文明の尖兵なのだよ」


それを聞いた永戸はうーんとうなる。これが尖兵となると結構厄介だ。リックルの話によるとバラウール重戦車砲すら弾いたとされるボディを持っている。それだけでその文明のレベルがどれだけ高いかが証明される。


「我々はこの文明のロボットを"マシンノイド"と呼ぶことにした」

「マシンノイド…機械的な人間ですか」

「あぁ、現在、この脅威に対抗すべく、より強力な調査隊を組もうとしてる、しばらくすれば、君たちの投入も決まるだろう」

「分かりました」


そう言って永戸達は部屋から出ようとするが、ここで科学者に止められた。


「そうそう、四課専用の新たな装備も今開発中でねこれらの文明に対抗した強力な武装を製作している、楽しみに待っていてくれ」

「あぁ、助かるよ」


そうして部屋から出ていく二人、二人は並んで廊下を歩くが、ここで神癒奈が口を開いた。


「新しい世界に関してなんですけど、私が世界から絶望を除染した際に、偶発的に世界が生まれたんですよね。多分ですけど、私の精神と世界が呼応して生まれた世界だと思うんです」

「遠回しにお前の子のようなものという事か」

「そういう意味では…あるのかな」


あははと困りながらと神癒奈は考える。だが新たな文明と脅威がそこにあるのならば、いずれ四課にも仕事が回ってくるだろう。


「考えても仕方ありませんしオフィスに戻りますか」

「そうだな」


そうして二人は四課のオフィスに戻る。すると、オフィスでは新人歓迎会が行われていた。


「あっ、お帰りなさい! 二人とも!」


コリーがジュース片手に二人を出迎える。


「そっか、そういえば歓迎会してなかったな」

「にしても今回の歓迎会はここでするんですね?」

「うむ、相応に広くなったこの部屋も歓迎してあげないとね」


ユリウスはそういうとワインを片手で揺らしながらピザをいただく。

部屋には寿司やピザ、七面鳥といった豪華な料理が届けられてきており、皆自分の取りたいものを取って食べていた。


「ほらほら、永戸先輩も神癒奈先輩も飲むっすよ!」


子供用ビールを飲む桐枝に二人はジュースを注がれ、二人は放った肩を落としてため息をつくと、皆とジュースで乾杯した。


ーーー


歓迎会では5人も増えたせいかすごく賑やかなものとなった。


「課長、メリッサについてなんですけど、彼女にはいつぐらいから自身の技術を与えたのですか?」

「イストリアができて間もない頃だよ、ただの学校だけでは生き抜く術が身につかないと思い、私が独断で身に付かせたんだ、なに、スパルタ教育などはしていない、安心したまえ」

「はい〜、医学専門の学校に通っていましたが、それ以外でお祖父様からいろんなことを教わりました、戦い方や緊急治療、サバイバルの術まで」


見た目以上にタフな女性なんだなと永戸は思った。


「レイピアの腕は私に負けず劣らずだとも、武装も最新のものを支給されてもらっている」

「確か、白銀弾を撃ち出すリボルバー機構を持つレイピア型の武器"ストームレイザー"でしたっけ」

「うむ、開発部から使用許可が降りたのを早速使っているというわけだよ」


最新鋭の武器か、全身白銀でできた銃撃機能を持つレイピアをメリッサは携えていた。


「小さな体なのによく頑張りますね」

「はっ! 本官は三課でも末席だった故、この課ではより一層努力していきたいと思っています!」

「自分専用のものとかないのですか?」

「一応、取り出したものを入れる魔法のバッグならございますが…」


あー、よくある何でも入ると評判のあの、と神癒奈は思い浮かべる。確かに、あらかじめ武器を用意してバッグにしまっておくのはいいかもしれないと思った。


「ヴェルサスは何か飲むものはないのかい?」

「当機にはエネルギーの補給は必要ありません、特別な動力を使用してますので」

「核動力か何かかい?」

「お答えできません、守秘義務がありますので」


守秘義務なんてあるの? とライは冷や汗をかく。ヴェルサスの出自が都市のどこかであるのは明らかなのだが、開発したのが誰か、スペックはまだ言われてない、どんな技術で誕生したのかライは興味を持った。


「歓迎会…」

「おや? 群れるのは好みではない?」

「いや…少しだけ、嬉しい」

「楽しい時間はここくらいですよ、研修も難があったとはいえ無事終えましたし、明日から任務に着きます、頑張ってくださいませ」


口数が少ないジェイルに、フィアネリスが明るく料理を振る舞う。こういう時に明るくさせようとするフィアネリスなりの行いだろう。ジェイルは少し照れながらフィアネリスから肉やピザを受け取った。


「いやー、同年代の友達を持てるとは、きりちゃんも嬉しいっすね」

「何をいってるの? 私はあなたより一つ年上よ?」

「それでもありがたい話っすよー、よろしくっす、ヒカル姉さん」

「姉さんってそんな…はずかしいわ」


かつての事件では敵同士であったはずなのに、フレンドリーに接してくれる桐枝に、ヒカルは少し申し訳なくなった。だが、その心を読んでか、「そんなに気にしなくてもいいっすよ」と桐枝はヒカルに笑いかける。


「そうだ、永戸君、この場で頼みたいことがある」

「何ですか課長、頼みたいことって」

「君を、この課の隊長に任命したいという話でね」

「俺が、ここの隊長に?」


おっ? 昇進か? と皆が永戸を見る。


「そんなよしてくださいよ、確かに世界は救いましたけど、俺は隊長とかやるタイプじゃないです」

「いや、君の現場の判断力をきちんと評価しての任命なのだよ、危険な作戦において、君が中心に立っていると、この課の隊員を任せやすいしね、それに私もそろそろ現場仕事にはこたえるようになってきてね、実働隊としてのリーダーが欲しくなったというわけさ」

「…そこまで言うなら……皆はどう思う?」


永戸が振り返って聞いた途端、全員から「さんせー!」と声が上がったあまりにも元気のいい返事だったせいか、永戸もはははと引き攣った笑いになる。


「仕方ないな、みんながそこまで望むなら、俺はこの課の隊長をやるよ、ただし、厳しくいくから覚悟しておきなよ」


そう言うと皆は了承したようにグラスを掲げた。と言うわけでとユリウスは言い、永戸に四課の隊長の証である印を示すワッペンを渡し、永戸はそのワッペンを受け取った。


「明日から俺がこの課の隊長か」


半分しょうがないなと思いながらも彼はワッペンをつけ、皆に見せる。するとメンバーの皆はおお! と活気づいた。


「かっこいいです!」

「お似合いですよ、マスター」

「そうかな、あはは」


照れくさそうに笑うと、永戸はそのワッペンをつける重みを感じ取った。明日から、このメンバー達を兵士として使い、そして守らねばならないのだと。


(やってみせるさ、今度こそ、皆を守って見せる)


ぼんやりと浮かんだケイの幻想を見ると、彼はそう心で思った。

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