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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第二部第一章 産声を上げた世界
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新人研修

新人が入って翌日、四課の部屋が新調された。部屋の広さが机と機械がぎっしり詰まったあの狭い部屋だった頃と比べて、何倍も広い部屋となった。


「すっげー! 設備が最新っすよ! 机は広いし椅子もふかふかで座り心地最高っす!」


椅子に座る桐枝がふへーっと背もたれにもたれかかって和む。


「最新のコーヒーメーカー! お茶っ葉も安物じゃなくて高級品になってる! しかもお客用のビスケットまで!」


コリーが給湯室に置かれた設備を見て目をキラキラする。


「扉が私でも通りやすい両開きに…! あぁ、四課万歳…!」


普段は落ち着いたエイルも新しい部屋になったことで嬉しいらしい、扉をパカパカ開け閉めしている。


「ふぅむ、椅子の座り心地も格段に上がったねぇ、これも積み重ねてきた功績のおかげかな?」


紅茶を飲みながら、ユリウスは心地よさそうに資料を読んでいた。


「ほら、はしゃぐのは程々にして仕事よ仕事、今日は新人研修の日でしょ」


そう言うとリオーネはホワイトボード(新品)に今日の仕事が書かれた張り紙を出した。


「今日の仕事は外郭での炊き出しと警護、どう? 簡単でしょ」

「確かに、簡単ではありますが…」

「危険、外郭は魔物が跋扈している地帯、向かうのは非推奨」


リックルは怖気付き、ヴェルサスが提案を拒否した。それに対して永戸は落ち着いた様子で言う。


「まぁ待て、外郭と言っても完全に外に出るわけじゃない、一般兵が警護してる内側、難民キャンプで炊き出しを行うんだ、安心しろ、"余程"の事がない限り戦う事はない」

「貴方が言うとその余程の事が起きそうに聞こえるけど?」

「わかってるじゃないかヒカル、運が良ければ難民と乱闘が始まるぞ」

「冗談でも言わないで⁉︎ なんだか本気になりそうだから!」


非常事態は四課のお約束だからと永戸は言うが、ヒカルはそれを恐ろしく思った。


「外郭は行ったことある。魔物が沢山いた」

「ほらジェイルもこう言ってるじゃない! 安全に炊き出しできる保証はあるの⁉︎」

「まぁ少なくとも命の保障はありませんね〜」

「お前四課がお気楽能天気な部隊か何かと勘違いしてないか?」


入った時点でブラック仕事確定だぞと永戸は釘を刺しながら装備を着込む。まぁまぁと言いながらメリッサはヒカルを押し込んでいき、他の新参者のメンバーもそれについて行かせる。


「大丈夫と思うかね?」


落ち着いた様子で紅茶を飲みながらユリウスは聞く、すると、永戸は笑いながら言った。


「心配せずとも、貴方の圧迫面接に耐えゆるメンツです、戦えてもらわねば」


ーーー


と言うことでミズガルズの外郭に来た。そこには大量の難民がテントを作ってはキャンプが形成されており、人がぎゅうぎゅうに押し込まれていた。そんな中、永戸と神癒奈は歩く。


「外郭にこうして出るのは初めてです…こんなにミズガルズに入れない人達がいたなんて」

「これは仕方ないんだ、市民権を得るにはちゃんとした戸籍がいるし、裏路地めざして裏ルートで入ろうとすれば最悪殺される可能性だってあるし、そう言ったものが手に入らない人はこんな風に外郭で怯えながら暮らすしかないんだ」

「世知辛い世の中ですね」

「そのセリフ吐ける辺りお前もミズガルズに馴染んだな」


さて炊き出しだと準備を始めたところで、永戸は致命的な問題に気づいた。


「待て、一ついいか?」

「はい、なんでしょう?」

「神癒奈、お前料理できるか?」

「今更何を言うんですか、私なら最近練習して簡単な炊事ならできるようになりましたよ」


えへへとそう神癒奈は答えたが、その時、神癒奈もどう言うことか悟った。


「新人! 料理できる奴がいるか⁉︎」


そう聞いて、帰ってきた答えがこれだった。


「ほ、本官は毛が入ると不評が出ますし見ての通り料理には不向きな体型なので難しいかと…」

「否定、当機には味覚というものがないため料理は不可能」

「うっ…料理はいつも執事に任せてたからできないかも…」

「……焼けばなんでも料理になる」


四人の意見を聞いて、永戸は叫んだ。


「ああそうか、料理なんてわかんない奴多いもんな、じゃなくて、二人だけでこの人数分の食事どう料理しろってんだぁ!」


だぁー…だぁー……と外角に声が響き渡る。しかしその時、救いの手がやってきた。


「私なら料理できますよー」

「メリッサ! 料理が作れるのか!」

「はいー、よく患者さんに料理を作ってましたしー」

「良かった、最悪の展開は回避できた!」


そういうと早速永戸は炊き出し用の器具を取り出しては料理を作る準備をする。


「リックル、ヴェルサスは周辺住民から情報収集と交流を頼む! ジェイル、ヒカルはこっちにきて野菜の皮剥きを手伝え!」

「了解であります!」

「了解」

「わかった」

「分かったわ!」


そうしてメンバーが振り分けられ、料理を作ることになったのだが…。

料理を作っているうちにわかったのは、外郭の住民は最近、魔物の影をあまり見なくなった事だった。

代わりとして、遠くの方に人影が見えるようなと言っていた。

炊き出しの配膳をしながら永戸は考える。


「変だな、外郭は基本魔物が蔓延ってると言うのに、それがないなんて」

「私たちに、興味を示さなくなったんでしょうか〜、一応、魔物とはどう言うものかお爺様から教えられましたが」

「いや……その線は薄いと思います、魔物は基本生き物の血肉を狙って動きます。でも最近はここにこない…まさか、何かしらの脅威から身を遠ざけようとしている?」


そう言ってるうちに、トラブルが発生した、炊き出しを受け取った男性が人にぶつかって炊き出しを落としたと言う。


「おい! テメェのせいで俺の飯が無くなっちまったじゃねぇか! どうしてくれる!」

「……」


男性はぶつかった人に向けて怒鳴り込む、だが、ぶつかった人は何も言わずぼーっと突っ立ったままだ。神癒奈は早速止めに入ろうとするが、妙な事に気づいた、ぶつかった人間は大きな体を持っていて、それでいて、人だと感じるような気配や匂い、感覚がしない。


「だ、大丈夫です! 配給はまた配りますから! だから怒らないで!」

「いーや許せないね、このデカブツ! 謝るまで許さねぇからな!」


そう言っては男性はぶつかった人の足を蹴った。その直後、聞こえたのは金属が響くようなガンッ! と言う音だった。人のようなものの右手を出す、すると中から金属のフレームとレーザーガンが露出した。


「は?」

「ターゲット…ハイジョ」


呆ける男性の頭にレーザーガンが命中し、スイカのように頭部が破裂する。それを見せつけられた外郭の住民は怯えて逃げ出すが、近くで見た神癒奈は驚いたが、四課の出番が来たとおもい、刀を引き抜いた。


「動かないでください! 銃を下ろして!」


神癒奈は片手で刀を持ち、もう片手で神権の実行ができるよう構えた。謎の敵はレーザーガンを撃つが、神癒奈はそれを神権で弾く。


「このっ!」


刀身に焔を宿し、謎の敵のレーザーガンを持つ腕を切断する。切断した腕が宙を舞うが、その時、神癒奈は敵の正体を見た。


「ろ、ロボット⁉︎」

「神癒奈先輩! そこを開けてください!」


リックルが神癒奈を引かせると自分の能力を行使する。


「バラウール重戦車砲!」


彼の言葉で普段エイルが使っているバラウールが召喚され、同時に彼は砲撃する。だが、戦車砲を受けてもロボットはそれを軽く弾いた。


「戦車砲を受け付けない⁉︎」

「リックルさん達は他の新人を連れて難民を避難させてください! ここは私が!」


神癒奈が刀を構えるとロボットはもう片腕に装備されていたアームで神癒奈を掴もうとしてきた。それをひらりとかわすと、神癒奈は頭部を加速による推力全開のキックで蹴り飛ばす。

ロボットの顔を覆っていた人の皮膚が剥がれ、奴の本来の姿が目に映る。その時見えたのは真っ赤な目が二つついた無機質な顔だった。センサーと最低限会話するためのスピーカーがつけられていて、不気味に感じた。


「どこの敵かは存じませんが!」


アームからパイルが突き出されるのを寸前で回避し、もう片方のアームも破壊すると、そのまま上に飛び乗って装甲の隙間から刀を突き刺してトドメを刺した。


「皆さん! 戦闘のない箇所へ避難を! ここは本官らが守ります!」

「警告、退避場所でも同系列の敵の出現を確認」

「なんですと⁉︎」


遠くを見ればまたあの巨漢のロボットが歩き回っていた。リックルはしまったと思い声を出す。


「そちらには行ってはいけません! 危険なロボットが徘徊しておりますゆえ!」


リックルがそう言った瞬間、赤黒い閃光が地を走って行った。その閃光に、新人達は覚えがあった。入隊試験でえげつない強さでいきなり襲いかかってきては、大半の候補者をボコボコにして病院送りにしたあの光…永戸の零だった。


「光を放て、イクセリオス!」


ロボットの眼前にまで迫ると、イクセリオスを五回連続で振り、一瞬でそれをバラバラに切り裂いた。

恐るべき戦闘能力に新人達はポカンとするが、その直後に永戸の喝が入る。


「何ぼさっとしてんだ! 周辺の安全の確認と難民の誘導をするんだ! 敵はこいつらだけで済むとは思わないほうがいい!」

「は…はい!」


新人達は警戒を強める。永戸も武器を持っては難民の誘導を進める。

幸いにも、敵はその2体だけで済み、その場の安全は確保された。だが、この2体のロボットが、のちの新たな戦いの狼煙になるとは、今の彼らには思っても見なかった。

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