凸凹な増員
今日も暇そうに四課は回っていた。アズウルとの戦い以降、そこまで問題になる出来事がなく、相変わらず四課は全員がのんびり仕事していた。そんな時だった。
「諸君、四課のこれからなんだが、隊員の増員が許可された」
「それってつまり……!」
「新しい仲間が来るってことっすか⁉︎」
うひょーっとコリーと桐枝が後輩ができると喜ぶ中、永戸は声を上げた。
「アズウルとの戦闘の直後の増員…四課の価値が上に証明されたと捉えるべきか、それとも、他じゃ手に負えない癖のある奴が回されにくるか……それとも、命知らずが入りたがりにきたか…」
「いい推理だ永戸君、全部だよ」
すると、ユリウスが隊員の情報が載った資料を永戸に渡した。
「コレを見ての通り、四課の入隊希望は前回から爆増した」
「前回神癒奈一人だけでしたからね、しかも俺の推薦ですし」
「あぁ、そこでだ、永戸君、試験官を君に任せたいのだよ」
「俺にですか?」
永戸は資料に目を通すと、ユリウスを見た。
「君のキャリアは私が一番知っているからね、四課の厳しさを一番お手軽に教えられるのは君ぐらいだから、君に試験官をしてもらいたいのだよ」
「はぁー、課長の頼みなら断れませんね、試験はいつですか?」
「明日だ、よろしいかな?」
「俺だけじゃ不安です、フィーネを補佐として回してもいいでしょうか?」
「許可しよう」
そうして話は決定し、永戸には、四課に新たに入るメンバーを見極める役目が与えられた。
ーーー
試験当日、いつものコートを着た永戸がグラウンドに立つ。隣にはフィアネリスがメガネ(伊達)をかけて立ち、資料と候補者を見比べていた。候補者の見た目はかなりバラバラで、中には永戸の活躍についてヒソヒソ話をしているものまでいた。永戸自身は仮装ショーでも始まるのかと早速頭を悩ませる。
「これより四課の入隊試験、実技を開始する、名前を呼ばれたやつは前に出て俺と戦うんだ。1番、アルト・ガーランド」
「はい!」
永戸に呼ばれ、アルトと呼ばれる青年は彼の前に立つ。
「1番、アルト・ガーランド、よろしくお願い…!」
「試験開始」
アルトが全てを名乗り終える前に試験が開始し、いきなり零を発動し、赤黒い稲妻を纏った永戸が彼に急接近すると、訓練用のモックアップの剣で空中にぶっ飛ばした。宙を舞い、地面に勢いよく落ちるアルトを見て、候補生達は一斉に「ヒェッ」と息を詰まらせた。
「先に言っておく、四課は他の課と違って命懸けの仕事でね、生半可な覚悟で来たら簡単に殉職する程危険な職場だ。だから、この試験を通してそれなりの強さと覚悟と人の心のなさを見定めさせてもらう。俺は全力で殺す気で行く、だから、耐エテミセロ」
永戸がそう言って英雄としての覇気を出すと、大半の候補生が泡を吹いて白目で倒れた。
「医療班〜、倒れた人が出たっすから担架頼むっす〜」
試験を見ていた桐枝達が医療班を呼んで倒れた候補生達を運ばせていく。それを横目で見て、ふぅっと息をつくと、永戸は候補生達を再び睨んだ。
「さぁ、続きといこう」
その後、ドカドカと剣が振られ、候補生のほとんどが永戸にボコボコにされた。その度に担架で運ばれ、試験会場には、数人しか残らなかった。
「次、28番、お前は……ほう」
相手を見て、永戸はおもしろそうに笑う。
「まさか候補生の中に面白い逸材が混ざってるとはな、退屈させてくれるなよ」
そうして、残った候補生達と、永戸は戦った。
ーーー
「あーーーつっかれたーーーー」
「お疲れ様です、マスター」
疲れて机に突っ伏す永戸に、フィアネリスがカフェオレを淹れる。
「試験、少しだけ見てましたけど、結構派手にやってましたね」
あははと神癒奈が苦笑いをする。試験の難易度がかつて自分が体験したレイモンドとの試験より格段に上がっていたからだ。
「あぁ、俺なりに厳しく選定した」
零まで使わなくてもいいのにと神癒奈は冷や汗をかく。
「だが収穫はあったぞ、数人の候補生が試験をクリアした、じきにここに来るはずだ」
すると、四課の扉がひらき、試験をクリアした新たな隊員達が入ってきた。
「「「「本日付けで四課に配属が決まりました! よろしくお願いします!」」」」
入ってきたのは、永戸以上に無愛想そうな茶髪の男に、全身メカのロボット…小さな犬の獣人に…ヒカル・ハインドウェイン………ん?
「ヒカルさん⁉︎」
どうして、襲撃事件で逮捕されて囚人になったはずの彼女がここにと神癒奈は驚く。
「ええ、あの時は、その、世話になったわ」
「俺も驚いた、ヒカルがまさか四課の試験を受けるだなんて」
カフェオレを飲みながら、永戸はヒカルの方を見る、すると、彼女が訳を話してきた。
「都市の市民としての最低限の生活を保障する代わりに、四課の隊員にならないかと勧誘を受けたの、貴方達の活躍を聞いてね、コレは、私なりの罪滅ぼし、ただ、それだけなんだから」
「嘘つけ、隙を見つけて俺を殺す気できたんだろ」
「そんなことはもうしない! 私は正式に四課の一員として勇者として戦うんだから!」
へっと笑う永戸に対して本気の顔で言うヒカル。だが、神癒奈から見て、永戸がちょっと嬉しそうに見えた。
(親友の妹さんですもんね、また、今度は味方として会えたら嬉しいでしょうに)
そう思ってるうちに、今度は小さな犬の獣人が自己紹介をした。
「三課より転任してきました! 本官はリックル・ランダッシュと申します! 先輩方! これからどうぞよろしくお願いします!」
わぁ、すごい真面目な子、と神癒奈は思った。だがとても不安に感じた、なぜなら彼の身長は神癒奈の身長の半分にすら届かないくらい小さな獣人だったからだ。
「ちっちゃくて可愛く見えるだろ? でも持ってる能力がかなり物騒だった」
「物騒?」
「はっ! 本官の持つ能力はウェポンマスター、知っているものであれば、あらゆる武器を取り出し、使いこなす能力であります!」
「構造さえ知ってれば戦車から核ミサイルまで出せるそうだ、な? 物騒だろ?」
わぁ、あらやだ物騒、と神癒奈は感じた。戦車や核まで出せるとなると、ある意味歩く戦略兵器だ。武器の供給にも困らなくなるだろうと神癒奈は思った。
続いてロボが前に出て自己紹介を始めた。
「ヴェルサス・カインズコールと言います、以後、よろしくお願いします」
「ええと……ヒト…なんです…か?」
「全身義体化された人だよ。見た目は無骨でかっこいいロボットだけど、換装やパーツ交換であらゆる状況に対応できるそうだ。あとぶっちゃけ硬い、俺の攻撃を受けて吹っ飛ばなかったのは彼だけだったよ」
成る程、エイルさんと同様にいろんな状況に強い人なんだ、と神癒奈は納得する。
そして最後に、無愛想そうな男が自己紹介をした。
「ジェイル・ベイオヴィント、ここに配属される前はフリーの傭兵でハンターをしていた、よろしく頼む」
「素性全く不明、多分裏路地の傭兵だったんだろうなとは思う。トラップの扱いがエイル並みに得意で、尚且つ生身の戦闘能力も高い。俺としては彼が1番強いなと思った」
マフラーと帽子で顔を隠す彼を見て、神癒奈はどんな人なんだろうと気になった。
と、コレで四人の自己紹介が終わったのだが、ここで永戸がもう一つと口を挟んできた。
「それとあともう一人、推薦の枠で来るそうだ」
「えっ? 試験はしなかったんですか?」
「あぁ、なんか、課長が太鼓判を押した奴らしい」
そう言っているうちに、廊下から歩く音が聞こえてきた。永戸が四人を引かせると、部屋に入ってきたのはユリウス課長と、若い女性だった。
「ふむ、コレが今回の試験を突破した新人達かな」
「ええ、厳しく選抜しました、即戦力になるくらいには頼れるメンツかと…で、そちらの方は?」
「あぁ、この子はな、私の孫だ」
「へぇ、孫…」
「成る程…孫ですか…」
……えっ? 今なんて言った? と室内の全員が凍りつく。
「メリッサ、挨拶なさい」
「はい! 本日付けで配属がきまりました〜、メリッサ・グリフ・レーゲンと申します〜、配属前は医者をやっていました〜」
「医者…となると、この課の初めての軍医ですか?」
「うむ、彼女はとても賢い子でね、戦いの知識は私が教えたが、医療の知識にも長けているのだよ」
四課で初めての軍医、コレは大きい存在だと永戸と神癒奈は思った。これまで、戦闘で傷ついた場合は回復アンプルで応急処置を施す場合が普通だった。それから、ちゃんとした治療が受けれるとなると、四課の継続戦闘能力に大きく差が出るだろうと二人は予想した。
「となると、四課の隊員は…」
「これで十四人です、マスター」
「1.5倍の戦力になったわけか、でかいな…」
「あぁ、そろそろこの狭いオフィスともおさらばだ、今のうちに荷物を移動する準備をしていたまえ」
ほっほっほと言いながらご機嫌にユリウスは椅子に座る。その直後、ドスの効いた目で入隊したメンバーを睨みつけた。
「さて、君たちに聞く、これから世界の脅威に対して戦う覚悟はあるかな?」
(いつもの圧迫面接始まったな、帰るか)
「帰るぞ、神癒奈、フィーネ」
「あっでも新人さん達は?」
「あとは課長に任せよう」
新人達が反応に困る中、永戸達はそそくさと四課のオフィスから去っていった、
新しいメンバーが来たんだ、明日からより楽しくなりそうだ、と永戸は微笑んだ。




