起動音
全能の力を得たある神がいた
その神は、全能の力を使い、邪悪なる存在から、あらゆる世界を救ったという。
その際に、新たな世界が芽生えた。
その神の力が作用したのか、それとも、世界が共鳴して子を成したのか、理由は分からないが、新たな世界が芽生え、新たな命がそこで誕生した。
他の世界に住むもの達は、それに興味を示した。様々な調査隊が組まれ、派遣され、新たな街や文化が生まれた。
だがしかし、その調査隊を拒む存在がいた。
新たに誕生した世界に共通するものの一つとして、謎の機械生命体が存在していたのだ。
それらの機械は領域を侵した者達を徹底的に排除し、壊滅させたと言う。
それらの残骸を回収した科学者達は頭を悩ませたという。
何故ならばその機械生命体は生物とも機械ともどちらとも言える構造で構成されていたからだ。
一見して機械の体だが、構造の殆どが人間などの生物と酷似していたのだ。食事や排泄といった行為はしないのだが、それ以外の部分はほぼ人間と同じシステムで組み上げられていた。
一体この機械生命体がなんのために、何を目的として存在しているのかは分からないが、しばらくするとその機械生命体が、別の世界へ侵攻してきた。
このことに危機を感じた各世界は異世界管理組織に救援を求めた。その結果、すぐに対策チームが生まれ、機械生命体の撃破と研究が始まった。
「こちら永戸……すげぇな…機械のくせしてすげぇ人間的な動きをしてるよ」
ある場所にて、ある一人の青年が調査を行っていた。
彼は調査チームに組まれた者で、手持ちの双眼鏡で、機械生命体の動きを観察していた。
『どうですか永戸さん? 何か変な動きとかは?』
「人間的すぎて逆に変だ、筋肉ムキムキの殺人アンドロイドの映画でも見てる気分だよ」
はははと硬い笑顔で男は機械生命体の動きを観察する。通信機には鈴の音色のような優しい声が聞こえてきていた。
『しかし変わってますよね、皮膚もなく、食事などの機能を持たないのにここまで人間臭いなんて」
「ロボット三原則が一瞬でぶった斬られるような連中だけどな」
絶望的にまずいレーションを口にしながら男は観察を続ける。
交代交代で観察を続けて三日くらいだ、メモ帳には書ける限りの行動を全て書いた。メシは食べないくせに狩りはする、皮膚もないくせにボディーソープで体を洗おうとするし、油臭い匂いしかしないくせに消臭スプレーを使おうとする。
機械生命体がいないうちにあらゆる物を置いて反応をどう取るかあらゆる実験をしてきた、服は着る、水は浴びる、本は読む、やることが全部人間的すぎる。
メモ帳を見た男はげっそりとしていた。ここまで人間っぽいと逆に怖いと。
『そういえば、今日で付き合って三週間ですね、えへへ…帰ってきたらご馳走作って待ってますね」
「やめろいちいちフラグを立てるな…」
そうは言いつつも男も嬉しげだった、首のドッグタグを見ると、彼女とお揃いの狐が形どられた指輪がつけられていた。
「っと……色ボケてる場合じゃないな、観察観察…」
そうして男は観察に戻ろうとすると、違う方向からガサガサと音が聞こえてきた。男はそちらの方に警戒を向けるが、現れたのは猟銃を持った男達だった。
「この世界には新種の生物がたくさんいるって噂らしいぜ」
「それを売れば大金持ちになれやすね!」
(不味い密猟団だ!)
男は密猟団がきたことに危機感を覚え、すぐに戦闘態勢を取る。
「ん? なんだアレは、アンドロイド…なのか? 何故そんなものがここに?」
「あいつ! こっちに武器を向けてやすよ! やばいんじゃ!」
密猟団に機械生命体が気づくと、素早いスピードで動き出し、攻撃を仕掛けてきた。
「ひ、ひぃいいいっ!」
密猟団がやられるかと思われたその時だった。
ガキン! と音がして、機械生命体のブレードと男の剣がぶつかり合った。
「な、なんだお前は⁉︎」
「何をしてる⁉︎ 早く逃げろ! 死にたいのか!」
そうして密猟団は逃げていくが、男だけがその場に残された。
「まったく、どうしてこんな面倒な任務になったんだろうな!」
赤黒い稲妻を走らせながら、男は機械生命体の首を刈り取る。その時、男はこの事態になる数週間前のことを思い出していた。
異世界大戦が終わって数年、世界は結局安寧の時を迎えることはなかった。
だが、この終わらない争いの世界にも変化は起きつつあった。
異世界に巻き起こる特殊犯罪や危険分子を排除する特別部隊が、異世界管理組織にて創立され、そして、その部隊の活躍で、世界の安寧はまもられていた。
その部隊の名は異世界特別調査隊四課。
別名"死神部隊"と呼ばれたもの達である。




