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ヒトとキツネの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
最終章 終わり、始まる世界
129/258

英雄

「あはははは! そら! 必死に逃げ回れ!」

「くっ!」


 アズウルがアーティファクトで光の斬撃や矢の雨などを降らせる中、永戸はたった一人駆け抜けていく。


「このっ!」

「届かせはしない!」


 永戸がイクセリオスを振るうが、それを、原初の聖剣、エクスカリバーで防がれた。返しにアズウルは、デュランダルから光を放ち、彼を吹き飛ばす。


「……くそっ!」


 永戸は再び走り出す。今度はエクスカリバーとかだけではない、アロンダイトにガラティーン、ダインスレイヴにクラウソラスと、あらゆる聖剣の砲撃が飛んできた。


「アーティファクトが邪魔だ! 攻撃に移る暇がない!」


 聖剣に聖槍、魔剣、妖刀、あらゆるアーティファクトから無双の攻撃が永戸一人に集中する。まるで一人で戦艦に立ち向かっているようなものに感じた。


「勝てるわけないよねぇ! こんなにたくさんの武器が襲ってきたら!」


 ビットとして飛んで来た剣や槍を弾き返すが、破壊に至らない為、切り払っても次から次へと飛んでくる。だが、その中でもチャンスを見つけると彼は攻撃に移った。


(距離の差はワイヤーで埋める!)


 左手につけられたワイヤーユニットを射出してジェット噴射で高速移動を行う、そして飛び上がると永戸は聖剣に光を宿した。


「光を宿せ! イクセリオス!」

「全てを防げ、アイギス」


 ゼロ距離で収束した聖剣の一撃を入れようとするが最強の盾とされたアイギスに塞がれてしまう。だが、この距離なら相手は無闇にビットや聖剣の砲撃などは使えないと永戸はアイギスの隙間からワイヤーを射出した。


「ぐっ⁉︎ 何⁉︎」

「捕まえ…たっ!」


 アズウルは逃げようとするが、突き刺さったワイヤーユニットは抜けず、永戸はワイヤーの巻き取りでアズウルを絶対逃さないよう接近する。


「これなら、どうだっ!」


 リヴァンジェンスⅡのブーストの加速に合わせ、イクセリオスと二つ重ねて同時に斬撃を行う。それもアイギスで塞がれるが、重い一撃を受けたせいかアイギスが遠くに弾き飛ばされた。


「そこだぁああああっ!」


 リヴァンジェンスⅡをアズウルに刺すと、ゼロ距離で内蔵された白銀弾を撃ち込んだ。


「あぁああっ! くそぉっ!」


 アズウルの体に先程のように白銀が突き刺さり、彼は空中から地面に落ちる。同時にアーティファクトの操作も不安定になった。


「来るなぁああああっ!」


 アズウルがエクスカリバーを振るい、光線を発射する。


「断ち切る!」


 反対に永戸はイクセリオスに収束した光を宿し、エクスカリバーの一撃を切り裂きながら進む。しかし、こちらは無名の聖剣で向こうは最高とされた聖剣、力の差は歴然で、イクセリオスに傷がつき、ヒビが入る


「うおおおおおっ!」


 エクスカリバーの一撃を抜け、永戸は再びアズウルに肉薄する。そして、彼に向けてイクセリオスを突き刺した。


「うぐぅううっ! たかが、無名の聖剣でぇ!」


 すると、アズウルの体から影が溢れ出し、イクセリオスの刀身を腐食した。

 イクセリオスの限界を感じ取った永戸は、力を解放する言葉を発する。


「光を放て! イクセリオス!」


 直後、イクセリオスから光が放たれ、アズウルは爆発で吹き飛ばされた。永戸の方も吹き飛ばされ、イクセリオスの刀身はバラバラに砕け散る。ワイヤーユニットも壊れ再び距離は離れてしまった。


「まだだ、まだ終わりじゃないぞ…!」


 するとアズウルは、破滅の枝、レーヴァテインと、救世主殺しの槍、ロンギヌスを手に取った。


「滅びの炎に焼かれろ!」

「あぁあああっ!」


 彼がレーヴァテインを振ると、暗闇に強烈な炎が走り、永戸はそれに焼かれる。だが、燃える中で彼は零を使うことで炎を受けたことを無かったことにして回復し、折れたイクセリオスに光を宿す。


「そんな折れた剣で、アーティファクトの一撃が防げるものか!」


 白銀から回復したアズウルが、再び聖剣や妖刀などを空中で構えると、砲撃を放つ。

 永戸はそれを避けながら駆け抜けていきリヴァンジェンスⅡの銃身をアズウルに向けた。


「させるかぁ!」

「うあっ!」


 アズウルがロンギヌスのやりをなげ、永戸の持っていたリヴァンジェンスⅡをバラバラに粉砕すると、そのまま彼の肩を貫く。


「…まだだ、これで終われない!」


 永戸はロンギヌスをひきぬくと、返すようにアズウルに向けて投げた。アズウルはそれをエクスカリバーで防ぐが、そのタイミングで永戸は前に走ってきた。


「切り裂けぇええっ!」

「なにっ⁉︎」


 折れたイクセリオスを切り上げ、永戸はアズウルを切り裂いた。そのいちげきで、アズウルも限界が来たのか、アーティファクトの制御ができなくなる。


「まだだと言っているだろおおっ!」


 だが、アズウルも切り返し、永戸を切りつける。二人はそのままよろけ、地に膝をつける


「しぶといじゃないか…永戸…ただの人間のくせして」

「ただの人間? いいや、今は俺が、人類の代表者だっ!」


 アズウルは無傷のエクスカリバーを、永戸はボロボロのイクセリオスを構え、二人はついに互いに実力だけの切り合いを始めた。

 光を宿した互いの刀身がぶつかり合い、バチバチと火花を立てる。


「人類の代表者だと? 笑わせる、人類は終わるんだよ! 僕の力で!」

「いや、終わらせない! 俺たちが、命を繋ぐんだ!」


 聖剣と聖剣のぶつかる輝きが、暗闇に響く。


「俺の仲間達が! 神癒奈が! この世界を救う! お前は…負けるんだ!」

「ぬかせ!」


 永戸とアズウル、互いに譲り合うことなく斬り続ける。互いに傷付いては回復し、聖剣をぶつけ合っては睨み合う。


「世界は滅ぶのだよ! 僕の意思で、全てが絶望に飲み込まれて!」

「滅ぼさせるものか、俺たちが、世界を守るんだ!」


互いに剣を腕は互角、永戸は聖剣こそ折れているが、今まで培ってきた技術を総動員してアズウルの持つエクスカリバーに太刀打ちする。


「折れた剣に、エクスカリバーが打ち負けるだと⁉︎」

「当然だ! 俺は、今までずっと、折れた剣を掲げて英雄として生きてきた!」


ボロボロになったイクセリオスで、アズウルに次々とダメージを与えていく。だが、同時にこちらもどんどんダメージが蓄積して行った。


「ふざけるなぁああああっ!」


エクスカリバーの光波が、飛び、それが永戸に命中する。


「何が代表者だ! キミがただ1人、ただ死にに来ただけじゃないか!」


 アズウルの一撃が永戸の体を貫く。


「がはっ! ……違う、俺は……1人じゃない!ー


 永戸の一撃で、アズウルの体が貫かれる。


「帰る、場所が……あるんだ! 約束を…したから!」


 剣を握り、体を貫いていたエクスカリバーを抜くと、永戸はアズウルを斬りつけた。


「帰る場所なんか、もうどこにも……ないんだよ!」


 アズウルは抜かれたエクスカリバーをかかげると、彼を斬りつけた。


「ぁ…く…っそ……⁉︎」


 そこで限界が来たのか、永戸は1人、立った状態で力が尽きてしまう。それを見たアズウルは、何度も、何度も永戸を斬った。だが彼は、それでも倒れずに立ったままだ。


「なんで、なんで倒れないんだよ! 痛いだろう? 苦しいだろう? ならさっさと倒れろよ! 諦めてしまえよ! そうすれば、楽に殺してやるのに!」

「まだ………諦め………られない」


 今にも倒れそうな永戸、だが彼はフラフラとしながらもそれでも立って、光を失った聖剣を握ると、ゆらりとしながらアズウルに斬りかかる。当然アズウルはそれを避け、彼の背中を斬った。ここで限界が来たのか、永戸はそのまま倒れてしまう。


「は…ははは、やっと限界が来たか、宿敵を倒せなかった屈辱はどうだ? ねぇ?」


 アズウルは勝利を確信し、永戸を蹴り飛ばす。力を失った永戸は地面をゴロゴロと転がり、その先で、動かなくなる。


「キミを殺したら、僕は力を取り戻し、キミの仲間たちを殺しにいく」


 仲間を殺すと言われた時、永戸の手はぎゅっと折れた聖剣を握りしめた。だが、もう立ち上がる力は、彼には残っていない。


「終わりだ! 英雄殺し!」


 永戸に向けて聖剣を突き立て、アズウルはトドメを刺そうとした、その時だった。

 暗闇に満ちた空間が移り変わり、景色が美しい星空と鏡のような水面を持つ地面に変わった。


「っ! 一体…何が!」


 永戸は、首を少し動かし、空を見た。見えたのはたくさんの星々と、一筋の流星だった。


「な…何故…何故、世界が、変わっている!」


 滅ぼしたはずの世界が元の姿に戻っていることに気づき、恐れるアズウル。

 そして、闇を切り裂くように空の上を飛んでいた流星、それがまっすぐにこちらに飛んでくると、永戸を包み込んだ。


 ーーー


 ー……さ…ー


 途切れ掛けの意識の中、誰かの声が聞こえる。彼は、それが誰の声だったかをかすんでいく中、思い出そうとする。


 ー永……ん!ー


 誰の、声だったっけ…。

 そう思っても、彼の意識は暗闇の中へと吸い込まれていく。もう、生きる力も、何も、残っていないから。


 ー諦めないで!ー


 今度は強く声が聞こえた。

 その瞬間、体が暖かな優しい感覚に包まれた。全身の痛みや傷が溶けるように癒やされていき、彼の意識は、暗闇から、ゆっくりと引き戻されていく。


 ー永戸さんっ!ー


 そうだ、この声は、大切な人の声だ。

 最後の戦いに赴く前に約束をしたんだ、彼女の為の人になると。

 失われていた体の力がふつふつと胸の奥から湧き上がってくるのがわかる。そうだ、まだ諦められない。


 ー立ち上がってください! 私の、たった1人の英雄!ー


 その声と共に、"彼"は、体にかかる重い重圧から解き放たれ、死の淵から立ち上がった。


 ーーー


「なんだ…何が起きてるんだ!」


 目の前で溢れる光に、アズウルは眩しく感じる。中で何が起こっているのか、アズウルには検討がつかなかった。

 その光が晴れた途端、突然、光の刃が飛んできた。


「ぐっ! この光刃は……!」


 アズウルは最悪の可能性を考えて一歩、また一歩と下がる。だが、次に起きた事は一瞬の出来事だった。

 光の膜が割れ、永戸が赤い稲妻を走らせながらアズウルを連続で切りつけた。


「ぐはぁっ⁉︎ 何故…ボロボロになるまでやったはずじゃ…!」

「目が覚めたぞ……あぁ!」


 彼が折れた聖剣、イクセリオスを掲げると、その剣の刃が再び形成され、輝きを放つ聖剣へと元に戻る。彼の体には神癒奈から魔力が繋がっており、更に、全能の神である彼女から力のパスが繋がれたことにより、零が使いたい放題になった。


「永戸……なぜだ! お前は…死にかけのはずじゃ!」

「まだ死ねないんだよ! 約束が…あるからな!」


 一瞬だけ神癒奈の事を思うと、永戸は全力の零の力でアズウルに光速の斬撃を叩き入れていく。

 さらにそれだけではない、落ちていたアーティファクトを拾っては、最大の力を振るい、次から次へと武器を変えて攻撃をしていった。


「ただの人間の分際でぇっ!」


浮遊したアーティファクトがビットとして永戸に襲いかかる。


「彼を、守って!」


だが同時に神癒奈もアーティファクトを操作し、ビットを弾き返した。


「この僕が、押されているだと⁉︎ ただの人間に、絶望である僕が⁉︎」


無理矢理にでも影を発生させ、アズウルは永戸にをそれで包み込もうとする。しかし永戸はイクセリオスを横に構えると叫んだ。


「光を宿せ! イクセリオス!」


零の効果で影を消し、イクセリオスの光波を飛ばし、アズウルの動きを止める。


「あり得るものか! 人が絶望に抗うなど!」


 アズウルが残された力でエクスカリバーを振るおうとしたその時だった。


「…遅いっ!!!」


 永戸が光速で接近し、剣の一回転でアズウルのエクスカリバーを持った手首を切り落とした。


「なっ……」


手首が切り落とされ、ついに何もできなくなったアズウルに対し、永戸が聖剣の光を最大限に込めて立つ。

 その時、永戸の背中が、誰かに押された気がした。


「いけぇえええええええっ!」

【行けっ、"俺たち"の英雄!】

「これでっ…終わりだぁあああっ!」


 聖剣の最大威力の光線がアズウルに命中し、全てを灰燼へと還していく。


「…あぁ……そうか……キミには……仲間が、たくさんいたんだ……」


 アズウルの視界に見えたのは、溢れんばかりの光と、永戸と神癒奈、そして……彼を見守る、大戦で散って行った沢山の英雄だった。


「……この終わり方も……悪くはないのかも…しれない」


 その言葉と共に、アズウルは倒され、その場には光を放つ聖剣を持った英雄と、世界を作り変えた神が残された。


「……やったな」

「はい、やりましたね」


 永戸は綺麗な星空を見てからフッと笑うと、神癒奈に目線を合わせる。対する神癒奈も、永戸が笑う姿を見ると拳を突き出した。


「俺たちが、世界を救ったんだ」


 剣から光が消えると、神癒奈が突き出した拳に、永戸は同じように拳を合わせた。

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